吸血鬼と子どもたち 1313日
血塗られていく吸血鬼
子どもたちの両手は
べったり赤い血で染まっている
吸血鬼は必死で逃げていた
子どもなんぞ狙うんじゃなかったと
後悔しながらはあはあと
息を切らしながら走っていた
後ろからはさっきよりも数が増えた
子どもたちの姿
あどけない少女に声をかけたのが
運の尽きだった
まさか自分が求められるだなんて思わなかった
少女の後ろから現れた男の子が何か言いたげな顔
でこちらを見上げていた
あっちへいけと言ったが
自分にしがみつく少女の姿を
見て遊んでいるものとばかり思ったのだろう
男の子もしがみついてきた
しがみつかれていたら
また新たな子どもが現れて一人二人と増えてきた
だんだんと恐ろしくなりしがみつく少女と男の子
を振り解くと急いで走りだしたんだ
それがいけなかった
子どもたちの好奇心を刺激するには十分すぎた
子どもたちは楽しそうに
奇声をあげて一緒になって走り出し始めたんだ
追いかけてくる子どもたち
どんどん増えていく
少女も男の子も集団に混ざり
逃げる吸血鬼を追いかけていく
振り返るたびに一人二人三人
今や三十人以上
きゃーきゃーと楽しそうにはしゃぐ声が
いまや耳をつんざくほどの大音量
いつ追いつかれて背後からがぶりと自分に
覆い被さってくるのか分かったもんじゃない
怖いが振り向かずにはいられない
横も気をつけていないと路地裏からも
どんどん子どもたちが溢れては飛びついてくる
転がり込んできては自分を見上げてにんまり
笑みを浮かべてくる抱きついてこようとする
必死の形相で逃げる吸血鬼
あちらこちらを気にしながらキョロキョロと
目ん玉をぎょろつかせながら走っていたから
足元に落ちていた石ころに気づかず
けつまづいて転んでしまった
慌てて起き上がろうとした吸血鬼
の上にブワッと群がる子どもたち
とびつきしがみつき吸血鬼の顔や身体を
触りまくり叩きまくりべたべたべたべたべた
あっという間に真っ赤な手のひらであざだらけ
待ちに待った期待感が花が開く
赤い笑い声
吸血鬼の悲鳴にも似た声は子どもたちの笑い声に
かき消され聞こえない
びくびくと悶え胸が圧迫されて息ができない
薄れゆく意識で最後に見たのは
よだれの糸を引いた白い歯を
見せて笑う子どもたちの姿
ガブリと二の腕にかぶりつく少女の姿
視界はぐにゃりと歪んでぷつんと消えた
