TOEIC、伸び悩んでいる人がやりがちな「勉強の順番」の間違い
TOEICの点数が伸びない人に共通しているものが、実はひとつだけある。単語量でも文法知識でもない。「解いた問題数」と「点数」が比例すると思い込んでいることだ。
多くの人は、参考書を1冊終えたら次の参考書、模試を1回解いたら次の模試、という順番で勉強を進める。量をこなせばいつか点数が追いついてくると信じているからだ。だけど実際には、同じ間違え方を繰り返したまま問題数だけが増えていくケースがとても多い。600点あたりで数ヶ月から半年ほど足踏みする人の大半が、これに当てはまる。
この壁にぶつかる人には共通点がある。最初の数ヶ月は「量をこなせば伸びる」と信じているタイプが多く、参考書を積み上げては満足してしまう。書店で新しい参考書を買うたびに前に進んでいる気になるが、模試の点数は動かない。むしろ本番の点数のほうが模試より低く出ることさえある。
点数が動き始めたのは、勉強のやり方そのものを変えてからだった。具体的に何を変えたかというと、「今週何冊終わらせるか」を目標にするのをやめて、「今週どのミスを減らすか」を目標にするようにした。この一見小さな違いが、実は勉強の設計全体を変えることになる。
なぜかというと、TOEICのスコアは英語力そのものというより「試験形式に合わせた情報処理の速さと正確さ」で決まる部分が大きいからだ。単語や文法の知識はもちろん土台として必要だけれど、その土台の上に「時間内にどう解くか」という技術が乗って初めてスコアになる。量をこなす勉強は前者(土台)には効くが、後者(技術)にはあまり効かない。多くの人が伸び悩むのは、土台を積み増すことに勉強時間の大半を使ってしまい、技術の部分を放置しているからだ。
このやり方は、テクニック集というよりも「何を、どの順番で、どれくらいの時間やるか」という設計の話に近い。だからこそ再現性がある。才能や地頭の良さに依存する話ではなく、順番とやり方の問題なので、忙しい社会人でもやり方さえ揃えれば同じように結果が出せる。
ここから先で、実際にやっていた勉強の順番と、パート別の時間配分、そして毎週の振り返り方法を具体的に書いていく。加えて、600点台で足踏みしやすい理由をスコア帯別に整理し、教材をどの順番で使うべきか、模試をどう活用するかという、いわば「勉強の設計図」全体を渡していきたい。ここまで読んで「自分にも心当たりがある」と感じた人には、特に役に立つ内容になっているはずだ。
なぜ量をこなしても伸びないのか、もう少し詳しく
無料パートで「量より順番」という話をした。ここではその理由をもう少し具体的に分解しておく。
TOEICは大きく分けてリスニング100問・リーディング100問、合計200問という構成だが、この200問はそれぞれ「求められている処理」が違う。Part1・2は瞬発力、Part3・4は情報の先読みと待ち構え、Part5・6は文法パターンの認識、Part7は時間内に必要な情報だけを拾う読み方。これらは似ているようで、鍛え方が全く別物だ。
参考書を1冊丸ごと解くというやり方は、この6つの異なる処理能力を同時に、しかも無差別に鍛えようとしていることになる。もちろんゼロよりはマシだが、効率としてはかなり悪い。自分がどのパートで、どういう理由で間違えているかを把握しないまま量をこなしても、得意なパートの正答率がさらに上がるだけで、苦手なパートは苦手なままということが起こりやすい。
だからこそ、勉強を始める前に「今の自分がどのパートで、どういうミスをしているか」を把握するステップが欠かせない。これが、これから説明する2週間スケジュールの最初の3日間でやることになる。
勉強の順番を決める考え方
点数が伸びない時期にありがちなのが、リスニングとリーディングを同じ比重で、同じやり方で勉強してしまうこと。パートごとに「間違える理由」が全く違うので、対策も分けたほうがいい。
Part 1・2:聞き取れているのに選択肢で迷う場合は、単語ではなく「音の変化」に原因があることが多い。特にPart2の応答問題では、質問文の最初の1〜2語(疑問詞や助動詞)を聞き逃すと、その後の音声をどれだけ聞き取れていても正解にたどり着けない
Part 3・4:設問を先読みできていないと、聞きながら情報を探す余裕がなくなる。先読みの精度が低い人ほど、音声が終わった後に「たぶんこれだったはず」で選んでしまう傾向がある
Part 5・6:語彙不足より先に、頻出パターンの見落としを疑う。品詞問題・時制問題・前置詞問題など、出題パターンが決まっているものが多いので、これを型として覚えているかどうかが正答率に直結する
Part 7:時間切れになる人は、精読の癖が抜けていないことが多い。設問を確認する前に文章から読み始めてしまうと、後から該当箇所を探すために読み返す時間が発生し、これが積み重なって時間切れにつながる
この4つのグループごとに、まず「自分がどこで、どんな理由でつまずいているか」を把握する。そのうえで、一番伸びしろの大きいところから順番に手をつけていくのが、遠回りをしない勉強の組み立て方になる。
2週間の勉強スケジュール例
平日30〜40分、休日1時間程度を想定したスケジュール。忙しい社会人でも回せる分量に絞ってある。表面的には「たった2週間」に見えるかもしれないが、この2週間の目的はスコアを一気に上げることではなく、「自分の弱点を正確に把握し、対策の型を作る」ことにある。この土台さえできれば、そのあとの数ヶ月の伸び方がまったく違ってくる。
1. 1〜3日目:模試1回分を解いて、パート別の正答率を記録する(点数ではなく正答率を見るのがポイント)。このとき、時間を計って本番同様の緊張感で解くことが大事。時間を気にせず解いてしまうと、本番で起きる「時間切れによる失点」を見逃してしまう
2. 4〜7日目:正答率が低かったパートを1つに絞って、そのパートだけを集中的にやる。複数のパートを同時に対策しようとすると、結局どれも中途半端になりやすいので、あえて1つに絞る
3. 8〜10日目:語彙は毎日15分だけ、新しい単語より「見たことはあるのに意味が出てこない単語」を優先する。単語帳を最初から通しでやり直すのではなく、模試の復習で出てきた単語を中心に拾っていくと、実際に必要な語彙から埋めていける
4. 11〜14日目:もう一度模試を解いて、最初との差分を比較する。ここで見るべきは総合点よりも、対策したパートの正答率がどれだけ変わったかという点
この2週間を1サイクルとして、次の2週間はまた「一番低いパート」を選び直して繰り返す。これを2〜3サイクル続けると、弱点が均され、全体の底上げが進んでいく実感が出てくるはずだ。
毎週の振り返りで見るべき3つの指標
パート別正答率の推移(点数の合計よりこちらを重視する)。総合点は運や体調の影響も受けるが、パート別の正答率は勉強の効果がより素直に反映される
間違えた問題を「知識不足」か「時間不足」かで分類する。知識不足なら覚え直せばいいが、時間不足の場合は覚え直すだけでは解決しない。時間配分や解く順番を見直す必要がある
同じミスを2週連続でしていないか。同じ理由で間違え続けているなら、対策のやり方自体を変える必要があるサイン
この3つを、模試や問題演習のたびにノートやスプレッドシートに記録しておくと、数ヶ月後に振り返ったときに自分の伸びが見えるようになる。モチベーションを保つ意味でも、この記録は地味に効いてくる。
【テンプレート】そのまま使える振り返りシート
記録用のフォーマットに悩む人が多いので、そのままコピーして使えるテンプレートを渡しておく。模試や問題演習のたびに、この4行を埋めるだけでいい。
日付:
今回対策したパート:
パート別正答率(前回→今回):
知識不足だった問題の数 / 時間不足だった問題の数:
同じミスを先週もしていたか(Yes/No):
このシートを2週間サイクルの終わりごとに見返すだけで、「なんとなく伸びている気がする」ではなく、どの指標がどう動いたかを数字で確認できる。特に「同じミスを先週もしていたか」の欄にYesが2週連続で並んだら、対策のやり方自体を変えるサインだと捉えてほしい。
教材を使う順番の考え方
参考書をどんな順番で使うかも、実はスコアの伸び方に影響する。おすすめの順番は次のとおり。
1. まず自分のレベルに合った公式問題集(または準拠した模試形式の問題集)を1〜2回分解いて、現状の正答率を把握する
2. 弱点だったパートの対策本を1冊選び、そのパートに絞って集中的に取り組む
3. 対策本が一通り終わったら、また模試形式の問題集に戻って、実際に正答率がどう変わったかを確認する
4. これを繰り返しながら、語彙帳は並行して毎日少しずつ進める
複数の対策本を同時並行でやると、どれも中途半端になりがちなので、基本は「今はこのパートに集中している期間」と決めて取り組むほうが効率がいい。
つまずきやすいポイントと対処
模試を解いても正答率が上がらないと感じたら、多くの場合は「解き直し」が足りていない。1回解いて終わりにせず、間違えた問題を1週間後にもう一度解き直すところまでをワンセットにすると、定着の仕方がかなり変わる。
もう一つよくあるのが、対策するパートを頻繁に変えてしまうこと。1週間集中してもすぐに結果が出ないからと、別のパートに目移りしてしまう人が多い。パート別の技術が身につくには、最低でも1〜2週間はかかることが多いので、途中で切り替えすぎず、決めた期間はそのパートに集中したほうがいい。
また、模試を解く頻度が多すぎるのも意外な落とし穴になる。模試は現状把握のためのツールであって、模試を解くこと自体が勉強にはなりにくい。模試1回に対して、その復習に模試を解く時間と同じかそれ以上の時間をかけるくらいのつもりでいるとバランスが取れる。
まとめ・次のアクション
まず今週やる模試を1回分決めて、パート別正答率を記録するところから始めてほしい。点数ではなく正答率で自分の課題を把握できると、次に何をやればいいかが自然と見えてくる。
そのうえで、この記事で紹介した2週間サイクルを最低でも1回、できれば2〜3回試してみてほしい。1回目のサイクルでは弱点の把握そのものに時間がかかるかもしれないが、2回目以降は自分の課題がどこにあるかがわかっているぶん、対策のスピードが上がっていくはずだ。
このシリーズでは、Part5・6の文法対策、Part3・4のリスニング先読み、Part7の時間配分について、それぞれさらに踏み込んだ内容を別の記事にまとめている。全体の設計図はこの記事で掴めるはずなので、自分が今どのパートを優先すべきかが見えたら、該当するパートの記事から読んでもらうといいと思う。
【参考リンク】
テストの形式と構成|TOEIC Listening & Reading Test|IIBC公式
https://www.iibc-global.org/toeic/test/lr/about/format.html
