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私と弟のミラクルミルクセーキ

先日、弟と昼食を食べに行った。
父の面会の後、母のお見舞いに向かう途中、
「何か食べていこう」という話になった。

久しぶりに帰省していた弟は、
「よく分からないから、何でもいい」と言う。
時間もお昼を少し過ぎていたので、
私がふと思いついたお店に入ることにした。

高校生の頃まで地元で過ごしていた弟は、
「この辺りに、中学生の頃に母と来た喫茶店があった気がする」と話し始めた。
その店で飲んだミルクセーキが、
とても印象に残っているのだという。

やがて目的のお店に着くと、
「雰囲気がすごく似ている」と弟。

私は何度か来たことのあるお店だったが、ミルクセーキは頼んだことがなく、半信半疑だった。

「もしここだったら、すごいよね」

そんなことを言いながら店に入り、
ランチセットとミルクセーキを注文した。
メニューには写真もなく、記憶と一致するかどうかは、運ばれてくるまで分からない。

店内の雰囲気は、たしかに“それっぽい”らしい。
中学生の頃、母と待ち合わせをして、
この場所でミルクセーキを飲んだという。
その時、私はいなかった。
弟と母、二人だけの思い出だ。

ボリュームたっぷりのランチを堪能し、
いよいよミルクセーキが運ばれてきた。
それを見た瞬間、弟は「これだ」と言った。

まさか、こんな偶然があるなんて。

弟は少し前に、
このミルクセーキの話を奥さんにしていたそうだ。
それが、数十年の時を経て、
思いもよらない形で再会することになるとは…

シャーベットのような、しゃりしゃりとした食感。
口の中で溶けて、優しい甘さが広がる。

弟と母の思い出の味を、私も味わうことができた。

そこは、私が何気なく選んだお店。
それは、弟の記憶に残っていたミルクセーキ。
そして、母の病院へ向かう途中というタイミング。

いくつもの偶然が重なって、小さな奇跡が起きた。

「こんなことって、あるんだね」

そう言いながら、いい年をした姉弟が、
少しだけはしゃいでいた。

父の病状の急変で帰省していた弟。
不安な状況の中で、私も弟も、
気持ちが塞ぎがちで、少し疲れていた。

そんな日に起きた、ほんのささやかな出来事。
でも、だからこそ、
少しだけ心が軽くなった気がした。

店主さんにこのエピソードを話すと、
とても喜んでくれた。
「先代の時から、ずっと変わらずに続けているんです」と話してくれた。

変わらずそこにあるお店と、変わらない味。
ほっとすると同時に、どこかうれしくもあった。

笑顔で見送ってくれた店主さん。
お腹も心も満たされて、
私と弟は母のもとへ向かった。

その日、私と弟はたくさん話をした。
父と母のこと。これからの不安や心配ごと。
そして、お互いの近況も。

久しぶりに、向かい合ってゆっくり話す時間だった。

こんな時間も、
いつか懐かしい思い出になるのかもしれない。
弟と母の思い出のミルクセーキが、
弟と私の新しい思い出をつくってくれた。

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