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【アマノ文筆クラブ】エクレア食べたい

 西洋と日本のおとぎ話キャラによる国際交流会――という名のカオスな会合が、日本で開催されることになりました。
 ヨーロッパ代表は白雪姫、赤ずきん、シンデレラ。
 桃太郎、金太郎、浦島太郎が日本代表として接待役を務めます。

 西洋からのお客様は、三太郎が思わず見とれるほどの美しさでした。
 その中で、浦島太郎は密かに焦っていました。
 桃太郎や金太郎のような英雄ではなく、彼は単なる庶民。
 このままでは自分に女の子が回ってこない、焦りと欲望が入り混じった考えが胸を占めます。
 お姉さんぶる乙姫様には飽きが来ていたのです。出来れば女の子を独り占めにしたい――浦島は腹黒い考えを抱いていました。

「おい、相手は“お姫様”が混じってるんだぞ」

 桃太郎が肩をすくめると、金太郎も腕を組んでうなります。

「こっちもそれなりに格のある場所じゃないと失礼だろ」

「だったら竜宮城でしょう。セッティングは俺に任せてくれ。俺の女が切り盛りしているからな」

 浦島太郎が胸を張ります。

「おお、いいね!」桃太郎と金太郎は激しく同意しました。

 確かに、女子が来るなら華やかな場所が良いです。場末の居酒屋というわけにはまいりません。
 浦島太郎は「竜宮城なら俺が仕切れる!」と有頂天になりました。

 こうして一行は豪華絢爛な竜宮城へ向かい、乙姫様の歓迎で宴が始まりました。
 しかし――洋の東西で食文化は大きく隔たっています。

「えっと……お姫様たち、お酒も刺身もダメらしいぞ」

 桃太郎が耳打ちします。
 白雪姫たちは箸を持たずに、互いに目を合わせています。

「お紅茶とスイーツが欲しいですわ」

 白雪姫がそう言うと、赤ずきんとシンデレラも「そうそう」「それです」と頷きました。

「紅茶……まあ、お茶ならお任せください」

 乙姫様は気を取り直してすぐに抹茶を立ててくれます。
 舞のような流れる所作に、西洋チームは目を輝かせました。

「まあ、お茶なのに芸術みたいです!」
「香りが深いですわ!」
「これが“おもてなし”? すばらしいわ!」

 竜宮城の空気が一気に華やぎます。
 さて、問題はお茶菓子です。

「甘い物が欲しいんですよね?」

「はい。エクレアをいただきたいですわ」
「わたしも!エクレアくれや!」
「もちろん私もです!」

 三人娘は声をそろえてエクレアを所望しました。

 ――エクレア?

 桃太郎と金太郎は、ぽかんと口を開けます。

「すいません、それってどんな物ですか?絵を描いてもらえませんか?」

「しょうがないわね」

 白雪姫が紙にさらさらとエクレアの絵を描きます。
 それを見た桃太郎と金太郎は首をかしげました。

「なんだこれは?」
「さっぱり分からん」

 ここで、浦島太郎だけが妙に自信満々。
 女子の前で知識をひけらかす絶好のチャンスです。

「……ああ、これは間違いない。ナマコですね」

「ナマコ!?」

 桃太郎が裏返った声を上げると、浦島太郎はどや顔です。

「高級食材ですからね、ナマコは。さすが西洋のお姫様たちだ。お目が高い」

「いや、さすがにそれはなかろう。細長い稲荷ずしじゃないか?」

 桃太郎が反論しますが、浦島太郎は譲りません。

「では彼女たちに確認してみましょう。エクレアの色は?」

「チョコがかかってこげ茶ですわ」と赤ずきん。

「ほら見ろ、やっぱりナマコだよ」浦島太郎は確信しています。

 すると金太郎が、はっと思いついたように言いました。

「いや、スイーツだから、この絵はかりんとうじゃね?」

「確認しましょう。エクレアの大きさは?」浦島が促すと

「これくらいです」シンデレラが手で示します。

「ほらな、やっぱりナマコで決まりだ」

 浦島太郎は勝ち誇ったように宣言しました。

「ナマコはとても高価なんです。乾物にすれば中国に輸出されたりして、キロ数万円は下りません」

 女子の前で海産物のうんちくを披露し続ける浦島。

「ですが幸い、ここは海の底です」

 浦島太郎は得意げに指をさします。

「ナマコなんて取り放題ですよ。乙姫様に頼めばすぐですよ」

 乙姫様は「任せてください」と微笑み、海の兵たちに指示を出します。

 ――そして数分後。

 黒っぽい物体が山盛りになった大皿が運ばれてきます。

「はい、どうぞ。“エクレア”です」

 白雪姫たちは皿をじっと見つめます。

「なんだか……日本のエクレアは、少し違うのですね」
「全体が黒い……チョコじゃありませんわよね?」
「なんか、つぶつぶしてますわ」

 シンデレラが恐る恐る聞きます。

「えっと……この“エクレア”、中には白くて柔らかいクリームが入ってるんですよね?」

 浦島太郎は満面の笑みです。

「さすが通ですね。海鼠腸コノワタがお好きですか?」
「……カスタードクリームのことをこの国では「コノワタ」と言うんでしょうか?」

 赤ずきんが首をかしげます。
 浦島太郎は得意げに語り続けます。

「はい、コノワタは生だと柔らかく、鮮やかなオレンジや黄色なんです。
 ですが、塩辛にして食べるとトロリとした触感で最高ですよ」

 三人娘は互いに顔を見合わせました。

「話がよく分からないけど……いただきましょうか」
「はい」

 三人は豪快にかぶりつきます。
 最初に声を出したのは白雪姫でした。

「え、違います! これ、エクレアじゃありません!」
「でも……甘くておいしいわ」
「抹茶の苦みと合って、なんだかクセになります」

 浦島太郎は目を丸くして、乙姫様を振り返りました。

「いや、これはナマコじゃない……乙姫様、これは一体……」

 乙姫様は、軍配でスッコーンと彼の頭を叩きました。

「いてっ!」

「コノワタ!じゃなくて、このタコ!」乙姫様が浦島太郎をにらみつけます。

「ナマコの盛り合わせなんぞ出せるわけなかろう。
 そんなことをしたら欧州と日本のおとぎ話界隈でいくさが始まるわ」

 乙姫様は、西洋のお客様の方を見てニッコリほほ笑みました。

「これはエクレア風に形をアレンジした日本のお菓子、“おはぎ”です」

 白雪姫たちはあっという間に皿のおはぎを平らげます。

「おいしい! お代わりですわ!」

 乙姫様は今度はずんだ餅を出してくれました。

「西洋にはないスイーツですわね」
「まあ、この緑色、きれいです!」

 こうして竜宮城は“海底スイーツ聖地”となり、
 西洋と日本のおとぎ話たちは、甘さをきっかけに深い友情を結びましたとさ。
 ただ一人、浦島太郎だけは最後まで納得のいかない顔です。

「いや……俺は、エクレアはナマコのことだと思うんだがなあ……」

めでたしめでたし。


竜宮城大宴会の図

すいません、AIが大馬鹿野郎でこれ以上の画像は出来ませんでした。
赤ずきん、行方不明。桃太郎と金太郎は若返ってます。逆玉手箱?

こちらの企画に参加させていただきました。ありがとうございました。

 今回も、そのまま考えるとありきたりな物語になりそうで、文才のない私は、どうやってオリジナリティを出そうか頭をひねりました。エクレアとナマコはすぐ思いついたのですが、それをどうやって違和感ないお話にするかで苦労しました。
 浦島太郎、いい味出してると思いません?

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