【空き家を売る】建物状況調査あっせん『有・無』の真実 -媒介契約書を巡る実務と課題-|mediate
おはようございます。
アマプラオリジナル番組『ゴールデンコンビ シーズン2』で思わず飲み物を吹き出すほど笑った中川です。
普段とは違う人とコンビを組み、出されたお題に対して即興コントを行う番組です。力のない芸人は嫌がる、とても強度の高いお笑い番組です。
そこで力を見せるは、天才奇人、川北茂澄。
もうすさまじい、カメラの前では絶対に下りない、生き様芸人。今、勢いに乗りすぎていおり、粗品さん、高比良くるまさんと並ぶほど数字を持つ男です。
ビジネスの世界でも『最高の相方がいて』なんて話に憧れたりしますが、圧倒的な【個】がいればすべて無力だと思い知らされます。
大学院生だった6年前、私よりもお笑い好きの後輩が『真空ジェシカってコンビ来ると思いますよ』と言っていた時にはまだ無名に近い状態でした。しかし、そこから真空ジェシカは5年連続M1ファイナリストとなり、今年の優勝候補最右翼。
そのブレインである川北茂澄さん、貼っておきます。

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建物状況調査あっせんという「小さな一行」
不動産の売却において、売主と最初に向き合う書面の一つが媒介契約書です。その中に、数行程度の控えめなスペースで記載される項目があります。「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」という欄です。
建物の安全性や劣化状況を調査する建物状況調査(≠インスペクション)は、既存住宅の取引において、安心感と透明性を高めるための重要な仕組みです。
しかし、制度が整備されてから数年が経過した現在においても、実務の現場では「あっせん」の理解が十分に浸透しているとは言いがたく、「説明しておけば良い」「書面には『無』とだけ入れておけば良い」といった誤った運用も少なくありません。また、売主側の心理として「調査をすると悪いところが見つかり、値下げを迫られるのではないか」という不安から、あっせんを積極的に希望しないケースも見受けられます。
2018年の宅地建物取引業法(以下、宅建業法)改正により、媒介契約書・重要事項説明書・37条書面の三つの場面で建物状況調査に関する記載・説明が義務化されました。 さらに2024年4月には、宅建業法施行規則および「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が見直され、標準媒介契約約款において「あっせん『無』の場合は理由を記載する」ことが明文化されています。
一見すると小さな改正に見えますが、既存住宅流通を活性化し、売主・買主双方が安心して取引に臨むためのインフラを整えるうえで、この「あっせん」の運用は決定的な意味を持ちます。
本稿では、建物状況調査あっせんに関する制度の背景や法改正の経緯、「あっせん」の正しい定義、あっせん「無」の理由とその書き方、実務上よくあるQ&A、そして現場で感じる課題と今後の方向性について、できる限り立体的に整理していきます。
第1章 建物状況調査と媒介契約書の位置づけ
1-1 建物状況調査とは何か
建物状況調査とは、既存住宅の基礎、外壁などの部位ごとのひび割れや雨漏りなどの劣化・不具合の有無を、目視や計測により調査するものと定義されています。瑕疵がないことを保証する制度ではなく、あくまで調査時点における劣化事象等を把握し、住宅の品質に関する情報を提供することで、安心して取引できる環境を整備することを目的としています。
調査を実施するのは、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)であり、既存住宅状況調査方法基準に基づいて調査を行います。 建物の構造耐力上主要な部分(基礎、土台、柱、梁など)と、雨水の浸入を防止する部分(外壁、屋根など)が対象であり、原則として目視・非破壊検査です。
調査時間は、住宅の規模等によりますが概ね1〜3時間程度とされており、費用は標準的な検査内容の場合で6万円程度からが目安とされています。 実際の費用は構造・規模・オプションの有無によって変動しますが、一般的な木造戸建住宅で6〜10万円程度が一つの相場感として紹介されることも多い状況です。
有効期限については、重要事項説明の対象となる建物状況調査の結果として扱うためには、木造戸建てでは1年以内、鉄筋コンクリート造マンション等では2年以内のものとされており、2024年4月の見直しによりマンションについては2年に延長されています。
1-2 媒介契約書の中の「建物状況調査あっせん」欄
宅建業法第34条の2第1項では、売買・交換の媒介契約を締結する際に交付する「媒介契約書面」に記載すべき事項が規定されています。2018年の改正により、その一つとして「建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項」が追加されました。
標準媒介契約約款でも同趣旨の規定が置かれており、既存住宅を対象とする媒介契約の場合には、媒介契約書の中に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」を記載する欄が設けられています。実務では、チェックボックス形式で「有」または「無」を選択し、「無」の場合には2024年4月以降、その理由を具体的に記載することが求められるようになりました。
この一行は、単に形式的に埋めれば良いものではありません。既存住宅の売却において、売主・買主が「調査をする/しない」という重要な意思決定を行う出発点であり、後続の重要事項説明や37条書面における確認事項とも密接に連動しています。
1-3 建物状況調査と重要事項説明・37条書面との関係
2018年改正では、媒介契約書面だけでなく、取引の流れの中で三つの場面に建物状況調査が位置づけられました。国土交通省による解説では、次の三点が宅建業者に義務付けられたポイントとして整理されています。
❶媒介契約締結時
建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付すること。
❷重要事項説明時
建物状況調査の結果の概要、および建物の建築・維持保全に関する書類の保存状況を、買主等に対して重要事項として説明すること(宅建業法35条1項)
❸売買契約成立時(37条書面)
建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の状況について、当事者双方が確認した事項を37条書面に記載すること(同法37条1項)
媒介契約時のあっせんに関する合意が起点となり、その後の調査実施・結果説明・当事者確認へとつながっていく構造です。したがって、媒介契約書で「有」か「無」かを機械的にチェックするだけではなく、そこに至るまでの説明・提案の内容と、調査実施後のフォローまでを一連のプロセスとして設計することが、不動産会社にとって不可欠です。
第2章 2018年・2024年の宅建業法改正と運用の変化
2-1 2018年改正の背景と制度趣旨
2018年4月施行の宅建業法改正は、既存住宅の流通促進を目的とした一連の政策の一環として位置づけられます。高度経済成長期からバブル期にかけて日本の住宅政策は新築供給を重視してきましたが、その結果として空き家の増加や、既存住宅の流通の少なさが課題となりました。住生活基本計画でも、既存住宅市場の活性化が住宅政策の中心的課題の一つと位置づけられています。
こうした背景のもと、既存住宅の品質を可視化し、安心して取引できる環境を整えるために、建物状況調査の活用促進が図られました。2018年改正で導入された三つの義務(媒介契約書面への記載、重要事項説明、37条書面への記載)は、既存住宅の状態に関する情報を、取引の各段階で共有するための骨格といえます。
2-2 2024年改正のポイント 「あっせん無」に理由を求める意味
2024年1月の省令改正および「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改訂により、建物状況調査に関する運用にも手直しが行われました。特に注目されるのが、標準媒介契約約款の見直しです。国土交通省の解釈・運用の考え方では、標準媒介契約約款において、既存住宅を目的物件とする場合に「あっせん無」とする際には、その理由を記載することが整理されています。具体例としては、次のようなものが挙げられています。
• 売主が建物状況調査のあっせんを希望しないため
• 所有者から建物状況調査の実施について同意が得られないため
• 既に建物状況調査が実施されているため
また同解釈では、建物状況調査について依頼者が認識したうえで取引を行えるよう、宅建業者は建物状況調査に関して説明を行うことが望ましいとされています。
この「理由の記載義務」は、単に書面上の形式を整えるためのものではなく、実務上「一律にあっせん無としてしまう」「そもそも説明を十分に行っていない」といった運用慣行を改めるためのメッセージと解釈できます。住宅あんしん保証や専門家による解説記事でも、2024年4月の改正が、建物状況調査の活用促進に向けた第一歩であると評価されています。
2-3 実施状況と制度の定着度
国土交通省や民間調査のデータを見ると、インスペクション実施率は制度導入前と比べて着実に増加しています。例えば、戸建てにおける建物状況調査の実施率は、2016年の調査では売主側15.3%、買主側7.2%だったところ、2021年には売主44.6%、買主30.6%、全体で37.5%に達したと報告されています。
一方で、既存住宅状況調査技術者へのアンケートでは、2018年度時点で既存住宅状況調査の実施件数が既存住宅流通戸数の約4%にとどまり、調査実績がない事業者が約8割を占めるといった結果も示されています。
つまり、制度としての枠組みは整い、徐々に活用されつつあるものの、地域や事業者によって取り組み姿勢の差が大きく、建物状況調査が「当たり前の前提」として定着したとはまだ言い難い状況にあります。このギャップを埋めるうえで、媒介契約書におけるあっせんの運用が重要な鍵となります。
第3章 「あっせん」とは何か ― 説明と手配の境界線
3-1 「あっせん」の法的・実務的な定義
「あっせん」という言葉は、日常的には「紹介する」「間を取り持つ」といった意味で使われますが、宅建業法における建物状況調査のあっせんには、より具体的な内容が求められています。
全日本不動産協会の法律相談記事では、
「建物状況調査を実施する者のあっせん」とは、
売主または購入希望者と建物状況調査を実施する者との間で、建物状況調査の実施に向けた具体的なやり取り(例えば、調査費用の見積書を媒介依頼者に伝達することなど)が行われるように手配すること
を意味すると解説されています。
また、国土交通省の解釈・運用の考え方や建物状況調査に関するQ&Aでも、単なる情報提供では足りず、依頼者と調査実施者の間で具体的なやり取りが行われるよう手配することが求められるとされています。
すなわち、「あっせん」とは、次のような一連のプロセスを含む概念と整理できます。
• 建物状況調査制度の概要やメリット・デメリットを説明する
• 売主・買主の希望を確認し、「実施したい」という意思表示があれば、調査実施者候補の情報を提供する
• 売主等が調査実施者を選定した場合、費用見積もりの取得や日程調整等の具体的なやり取りが行われるよう手配する
• 調査の申込みと実施に至るまでの橋渡し役を果たす
単にパンフレットを渡す、インターネットサイトのURLを紹介するといったレベルでは、「あっせん有」とは評価されないことに注意が必要です。
3-2 あっせん義務の範囲 「必ずあっせんしなければならない」のか
建物状況調査の実施は、現時点では法的な義務ではありません。国土交通省Q&Aでも、既存住宅の売買において必ず建物状況調査を行わなければならないわけではないことが明示されています。
宅建業者に課されているのは、媒介契約に際して「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」を書面に記載し、依頼者に説明する義務です。あっせんそのものは、依頼者が希望しない場合には行う必要はありません。ただし、その場合でも、2024年改正後は「あっせん無」とする理由を媒介契約書面に記載することが求められます。
重要なのは、「あっせんの義務」と「説明の義務」を混同しないことです。説明は必須であり、そのうえで依頼者が希望するかどうかを確認し、希望があれば具体的な手配まで行うという構造です。
3-3 「説明をした=あっせんした」ではない
実務で特に注意が必要なのが、「建物状況調査について説明を行ったので、あっせんしたことにしている」という運用です。不動産会社向けの実務解説でも、情報提供や説明だけでは「あっせん」といえないことが繰り返し指摘されています。
説明はあくまで前提であり、依頼者が「実際に調査を行いたい」と希望した場合に、具体的な調査実施者とのやり取りを手配して初めて「あっせん有」と評価されます。媒介契約書において「有」にチェックを入れた以上は、具体的な手配の責任を負うことになるため、社内のフローや提携先の検査事業者との関係構築も重要です。
第4章 売主と買主の心理
4-1 売主側の気持ち:評価されることへの不安と「高く売れなくなる」イメージ
売主が建物状況調査の実施に二の足を踏む理由として、最も典型的なのが「悪いところが見つかって値引きの材料にされるのではないか」という不安です。また、「築年数が経っているので、調査をするとかえって印象が悪くなるのではないか」「費用を負担してまでやるメリットがあるのか」という疑問も挙げられます。
建物状況調査を実施しなかった理由に関する国土交通省のアンケートでも、「早く売りたかった」「費用負担を避けたかった」が上位に挙げられており、売主の心理的・経済的なハードルが存在することが示されています。
しかし、建物状況調査は、売主にとっても次のようなメリットを持ちます。
• 調査時点での建物の状態を客観的に示すことで、引渡し後に想定外の不具合が発覚した際のトラブルを抑制できる
• 契約不適合責任を負わない特約を設定していても、知りながら告げなかった事実については責任を免れないため、事前に状況を把握することがリスク管理につながる
• 状態に見合った価格設定や修繕の要否の判断がしやすくなる
「高く売れなくなる」という懸念は一面の真実を含みつつも、実際には「状態に応じた適正な価格と条件を設定できる」「トラブルを防ぐことで結果として取引コストを減らせる」という側面もあり、短期的な価格だけでなく、時間や安心感を含めた総合的なメリット・デメリットで評価する必要があります。
4-2 買主側の気持ち:見えない不安と、専門家への期待
買主にとって既存住宅の購入は、「中古であるがゆえの見えない不安」との闘いです。国土交通省のQ&Aでも、中古住宅取引においては「住宅の状況が分からない」ことが不安要因となる一方、建物状況調査を行うことで状況を把握したうえで安心して取引ができ、トラブルの発生を抑制できるとされています。
買主心理としては、次のようなものが挙げられます。
• 漏水や構造上の問題など、大きな欠陥が後から判明することを避けたい
• リフォームやリノベーションを前提に購入する場合でも、「どの程度の補修費がかかりそうか」の目安を持ちたい
• 売主の自己申告だけでなく、第三者の視点から建物の状態を確認したい
建物状況調査は、このような不安に対して一定の回答を与えるものですが、一方で、調査報告書は専門的な用語や簡潔なコメントで構成されるため、結果をどのように解釈するかについては、建物の専門家による補足説明も求められます。
第5章 あっせん「無」の理由と実情、そして二つの課題
5-1 あっせん「無」の代表的な理由と書き方
2024年4月以降、標準媒介契約約款に基づく契約では、既存住宅を目的物件としながら「あっせん無」とする場合、その理由を媒介契約書面に記載することが求められています。
前述のとおり、国土交通省の解釈・運用の考え方では、理由の例として次のようなものが挙げられています(以下、趣旨を要約)。
• 売主が建物状況調査のあっせんを希望していない
• 所有者から建物状況調査の実施について同意が得られていない
• 既に建物状況調査が実施されており、新たなあっせんを必要としない
実務上は、これらの理由をそのまま紙に写すのではなく、「売主から建物状況調査の実施を希望しない旨の申し出があったため」等、個別の事情を反映した表現とすることが望ましいと考えます。また、「忙しいので」「必要ないと思うので」といった曖昧な理由だけでなく、費用面の事情や、既に別途の調査を予定しているといった背景を丁寧に聞き取り、記録しておくことが、不動産会社にとってもリスク管理につながります。
5-2 実際にあっせんしているのか ― データと現場感覚
制度導入から数年が経過しても、すべての不動産会社が積極的にあっせんしているわけではありません。国土交通省のアンケート調査では、既存住宅状況調査技術者のうち調査実績のない事業者が約8割を占めること、インスペクション業者のあっせん件数を売買取扱件数で割った比率の平均値が1桁台にとどまることなどが示されています。
一方で、近年の調査では、戸建て売主の建物状況調査実施率が4割を超えるなど、一定の浸透も確認されています。 2024年4月の媒介契約約款改正以降、建物状況調査実施件数が前年比1.5倍に増加したという民間事業者の報告もあり、制度見直しを契機に実施率がさらに高まりつつあることもうかがえます。
このように、統計データからは「全体としては増加傾向だが、事業者間・地域間の差が大きい」という姿が浮かび上がります。筆者の実務感覚としても、建物状況調査のあっせんを積極的に行う会社と、形式的な説明にとどめる会社とでは、社内の体制や取り扱い件数に大きな差がみられます。
5-3 課題① 不動産会社の考え方・動きに過度に依存する制度設計
建物状況調査の実施有無やあっせんの運用は、現状では不動産会社の姿勢に大きく依存しています。制度上は売主・買主の選択に委ねられているものの、その選択の前提となる情報提供や提案の質は、宅建業者の説明力によって大きく左右されます。
建物状況調査のメリット・リスクをバランスよく説明し、実施した場合の取引フローや費用の見通しを具体的に提示できる会社では、売主・買主ともに前向きに検討しやすくなります。逆に、「やってもやらなくてもどちらでもよい」「費用も時間もかかるのでおすすめしない」といった姿勢が透けて見える説明であれば、売主・買主があえて調査を選択する動機は弱まります。
この意味で、建物状況調査制度は、法律としての枠組みは存在しつつも、実際の有効性が宅建業者の専門性と倫理観に大きく委ねられている制度であるといえます。これは、制度設計上の弱点であると同時に、専門家としての不動産会社の役割が問われる重要なポイントでもあります。
5-4 課題② 「建物状況調査をすると高く売れない」という誤認
もう一つの大きな課題が、「建物状況調査をすると高く売れなくなる」「悪いところが見つかるとマイナス材料になる」という認識です。
国土交通省の解説や不動産実務者のレポートでは、建物状況調査が成約までの期間をむしろ短縮させる効果があることや、引渡し後のトラブルを減らすことで結果的に取引コストを抑えられることが指摘されています。
建物状況調査の結果として劣化事象等が明らかになれば、確かに値下げ交渉や修繕交渉につながる可能性があります。しかし、その情報は調査の有無にかかわらず、いずれかのタイミングで顕在化する可能性が高いものです。むしろ、事前に把握しておくことで、売主側が計画的に修繕を行うか、価格への反映を前提とした交渉を行うか、選択肢を持ったうえで取引を進めることができます。
「高く売れるかどうか」を単年度の価格だけで評価するのではなく、売却までの期間、引渡し後のトラブル対応コスト、心理的負担なども含めたトータルコストで評価すれば、建物状況調査はむしろ売主にとって合理的な選択肢になり得ます。そのためにも、不動産会社は「調査をするとマイナス」という短絡的なイメージを補正する説明を行う必要があります。
第6章 より良い運用に向けた実務戦略と今後の方向性
6-1 不動産会社が取るべきスタンス
建物状況調査あっせんに関して、不動産会社が取るべきスタンスは明快です。制度の趣旨を正しく理解し、売主・買主の意思決定を支える専門家として、必要な情報を丁寧に提供し、希望があれば適切な調査実施者と円滑に橋渡しを行うことです。
具体的には、少なくとも次のような点を社内で共有し、体制を整えることが望ましいと考えます。
• 建物状況調査に関する国土交通省Q&Aやガイドラインを読み込み、自社の説明資料として整理すること
• 提携先の既存住宅状況調査技術者や検査事業者を複数確保し、費用、水準、報告書の内容などを理解しておくこと
• 売主・買主双方に対して、調査のメリット・リスク、費用・時間、既存住宅売買瑕疵保険との関係を、偏りなく説明できるようにすること
• 媒介契約書の「あっせん有・無」のチェックに先立ち、必ず制度の説明とヒアリングを行い、その記録を残すこと
6-2 売主・買主が押さえておきたいポイント
売主や家づくりを検討している方、既存住宅の購入を検討している方にとっても、建物状況調査あっせんに関する基本的なポイントを知っておくことは重要です。
売主にとっては、自身の物件の状態を客観的に確認し、将来のトラブルを避けるための手段として検討する価値があります。買主にとっては、大きな買い物に伴う不安を軽減し、将来の修繕計画や資金計画を立てるための重要な情報源となります。
調査費用は一般的な戸建てで数万円から十数万円程度であり、その対価として得られる情報量と安心感を考えると、決して過大なものではありません。
6-3 既存住宅市場の成熟に向けて
欧米諸国では、中古住宅取引においてインスペクションがほぼ前提となっている市場も多く存在します。 日本においても、建物状況調査の制度が導入されて数年が経ち、実施率の向上や法令・ガイドラインの改訂が積み重ねられています。
今後、建物状況調査が既存住宅取引のスタンダードとして定着していけば、築年数だけではなく実際の状態に応じた価格形成が進み、ストック型社会への転換にも寄与すると考えられます。その過程で、不動産会社や設計事務所、既存住宅状況調査技術者が連携し、建物の価値を適切に伝えるエコシステムを築いていくことが求められます。
いかがでしたでしょうか。
建物状況調査あっせんに関する一行は、媒介契約書の中では小さなスペースに過ぎません。しかし、その一行の背景には、既存住宅を大切に使い続ける社会を目指す政策の流れ、売主・買主それぞれの不安と期待、そして不動産会社・建築士・既存住宅状況調査技術者の専門性と責任が折り重なっています。
2018年改正によって制度の骨格が整い、2024年改正によって「あっせん無」の理由の記載が求められるようになりました。今後は、こうした法令やガイドラインの整備を活かしつつ、現場の運用をいかに高めていくかが問われます。
売主にとっては、自身の建物の状態と向き合う勇気を持つこと。買主にとっては、建物状況調査を「追加コスト」ではなく、「安心を買うための投資」と捉える視点を持つこと。そして不動産会社や設計事務所にとっては、単なる手続きとしてではなく、建物と暮らしの価値を正しく伝えるための重要なツールとして建物状況調査を位置づけることが求められます。
媒介契約書の「あっせん有・無」のチェック欄を前にしたとき、そこに込められた意味を正しく理解し、取引に関わるすべての人が納得して判断できるよう、専門家としての説明と提案を尽くすこと。それが、建物を愛し、不動産を愛する者としての責務であると考えます。
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