見出し画像

日本のクラフトジンはなぜ高い?作る側・売る側から見た本当の理由

クラフトジン専門店「新宿蒸留」のオーナーバーテンダーとして、クラフトジンについて語るシリーズの初回記事です。

「クラフトジンって、
 なんでこんなに高いんですか?」

クラフトジンを飲み始めた人から、
よく聞かれる質問がある。
たしかにその感覚は自然だと思う。

スーパーに行けば、
有名なジンは2,000円前後で買える。
一方で、日本のクラフトジンは
500mlで5,000〜7,000円ほどするものも珍しくない。

初めて見る人からすると、
「同じジンなのに、なんでこんなに違うの?」
と思うだろう。

実際、私もバーを始める前はそう思っていた。

今日は、バーを運営しながら
酒類の企画・販売にも関わる立場として、
「なぜクラフトジンは高いのか」を
できるだけ分かりやすく説明してみたい。

結局、一番大きいのは
「本数が出ない」こと

クラフトジンが高い理由として、
ボタニカルや蒸留設備の話をすることは多い。
もちろんそれも事実だ。

ただ、商品企画や販売に
関わるようになって感じるのは、
もっと根本的な理由がある。

それは、
本数が出ないこと。
これに尽きる。

大手メーカーの商品であれば、
何万本、何十万本という単位で製造される。
設備も原料も物流も、
その規模に合わせて最適化されている。

一方で、クラフトジンはどうだろう。
初回生産が数百本から数千本という
商品も珍しくない。
大手メーカーと比べれば、
はるかに小さな規模で作られている。

つまり、同じように商品を作っても、
その費用を回収できる本数がまるで違うのだ。

商品は作る前から
お金がかかっている

ジンというと、どうしても
蒸留方法やボタニカルに目が向きがちだ。
しかし実際には、商品は蒸留する前から
多くのコストが発生している。

例えば、
・コンセプト設計
・レシピ開発
・試作
・ラベルデザイン
・ボトル選定
・写真撮影
・ECサイトの準備
・営業資料の作成

などだ。

仮に、こうした準備に
30万円かかったとする。

大手メーカーが10万本販売するなら、
1本あたり数円程度の負担で済む。

しかし500本しか作らない場合、
1本あたり600円になる。
この時点ではまだ蒸留もしていないし、
ボトルも買っていない。
もちろん酒税も払っていない。

ボトルもラベルも、
小ロットは高い

実はボトルやラベルも同じだ。
ガラス瓶メーカーや印刷会社は、
大量生産が得意である。

何万枚、何十万枚という
単位なら安く作れる。
しかし数百本分だけ発注すると、
どうしても単価は上がる。

これはクラフトジンに限らない。
パン屋でも、コーヒーでも、ワインでも同じだ。
小さく作るほど、一つひとつのコストは高くなる。

販売も小ロットから始まる

さらに難しいのは販売だ。
新しいクラフトジンが発売されたとして、
酒販店が最初から何十ケースも
仕入れることはほとんどない。

「じゃあまずは3本」
「とりあえず1ケース(12本)」
反応を見ながら
少しずつ広がっていく。

つまり製造側は、
「最初から大量に売れる」
ことを前提にできない。

結果として、

少量生産になる

単価が上がる

販売価格が高くなる

という構造になる。

高級品というより、小規模生産品

だから私は、クラフトジンを
「高級酒」と捉えるよりも、

「小規模生産品」と捉えた方が
実態に近いと思っている。

もちろん、中には
プレミアム路線の商品もある。
ただ、多くのクラフトジンは
「高く売りたいから高い」のではない。

小さな規模で作り、
小さな規模で販売する結果として、
その価格になっている。

5,000円のクラフトジンを
見ると高く感じるかもしれないし、
その感覚は間違っていない。

ただ、その背景には大量生産品とは
まったく異なる事情がある。

そう考えると、価格の見え方も
少し変わるのではないだろうか。

高いから面白いのではない

ここまで読むと、
「クラフトジンは大変だな」
という話に聞こえるかもしれない。

実際、大量生産の酒と比べれば効率は良くない。
小ロットだから高い。
流通も大変。
知名度もない。
商売として考えれば、決して楽な世界ではない。

それでも私は、この世界が面白いと思っている。

一本ごとに作り手の考え方が見える

バーをやっていると、
本当に色々なジンに出会う。

地域の柑橘を使ったもの。
お茶を使ったもの。
山椒を使ったもの。

時には、
鰹節や舞茸や大根のような
「なぜそれを入れたのだろう」と
思うものまである。

もちろん全てが
自分の好みとは限らない。
ただ、面白いのは、
その一本ごとに
作り手の考え方が見えることだ。

小規模生産だからこそ、
「この人は何を作りたかったのだろう」
が見えてくる。

バーはその違いを楽しめる場所でもある

だから私はバーが好きだ。
お客さんに
「今日はこんなのがありますよ」
と一本を紹介する。

すると、
同じジンでも
「美味しい」と言う人もいれば、
「これは苦手ですね」と言う人もいる。

その反応を見るのも面白い。
正解がない。
人によって感じ方が違う。

だから飽きない。

最後に

クラフトジンは確かに高い。
でも、その価格の裏側には、
大量生産では実現しにくい試行錯誤や個性がある。

私はバーを始めてから、
その面白さを知った。

そして今でも新しいジンを見ると、
「この人は何を作りたかったんだろう」
と考えてしまう。

地域を表現したかったのか。
香りを追求したかったのか。
誰かに届けたい景色があったのか。

同じジンというカテゴリでも、
そこには作り手ごとの考え方がある。
だから面白い。

価格だけを見ると
高く感じるかもしれない。
でも、その背景まで含めて飲んでみると、
クラフトジンは少し違って見えてくる。

「なぜこの人はこのジンを作ったのだろう」
そんな視点で飲んでみてほしい。

きっと今までとは違う楽しみ方が見えてくると思う。

ちなみに

私は新宿でクラフトジンのお店を2店舗運営している。
店に立っていると、
「これ美味しいですね」
「これは苦手かも」
そんな会話が毎日のように生まれる。

同じジンでも、人によって感じ方は違う。
だから面白い。

クラフトジンに正解はない。

【新宿御苑前】
 [Bar] クラフトジン&ウイスキーBar 新宿蒸留

【四谷三丁目・荒木町・曙橋】
 [居酒屋] ジンと小皿 蒸留屋


いいなと思ったら応援しよう!