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ウォーカブルな地区に住むことの理想と現実

case|事例

全米不動産協会(NAR)が50都市圏の計2,000人を対象とした調査レポートを公表した。レポートでは、アメリカ人の多くが身近に日常の生活を支える機能が揃うウォーカブルな地区への居住を望む一方で、実際に住宅を構えることを検討するといくつかの条件で理想と現実のギャップが生じることを示している。

調査結果によると、回答者の64%は徒歩圏内に公園や商業施設、レストランが立地する地区に住むためならより多くの金額を支払ってもよいと考えている。また、59%の回答者は、車の移動を余儀なくされる広い庭を持つ家よりも徒歩で移動できる地域にある庭の狭い家を選んでおり、より具体的なジレンマを提示した場合でも、ウォーカブルな地区に住みたいという意向が確認された。しかし、具体的な条件を考慮すると必ずしもウォーカブルな地区の特性とマッチしない現状も明らかになった。

住宅形態については、小さな戸建てを志向する層は63%で、タウンハウスやデュプレックスなどの連棟住宅は51%、賃貸マンションは44%、分譲マンションは40%と、アメリカ人の戸建て志向の高さが改めて確認された。

次に、居住環境について、住む場所を決める際に歩道や散歩ができる場所が非常に重要と回答した割合は57%で、前回の調査から7%増加しており、ウォーカブルな環境を好む割合は年々上昇傾向にある。一方で、住宅地を評価する際に治安が最も重視されており、70%が犯罪率の低さを評価する際に重視する項目の1位もしくは2位にあげている。ウォーカブルはその次に重視される項目ではあるが、割合は32%だった。両者はもちろん関連するので、犯罪率が低くなれば、ウォーカブルな環境も改善されるという面もある。交通安全上の懸念が徒歩での移動を妨げる障壁となっているという回答が39%あることからも、単に徒歩圏内に施設が立地しているかどうかだけでなく、現実にはインフラの改善なども必要となる。事実、2010年から2023年までの間に交通事故による歩行者の死亡者数は70%増加しており、交通安全上の課題は根強い。

移動手段の理想と現実との間にギャップがあることも明らかとなった。回答者の85%は歩くことが好きと回答しているが、移動の選択肢がないとの理由から自動車を利用している割合は62%だった。徒歩での移動を妨げる要因は、目的地までの距離が71%を占め、次いで天候や交通安全、歩道の不足などが挙げられた。ここで明らかになるのは、徒歩での移動を妨げる障壁は気持ちの問題ではなくデザインの問題であるということだ。施設の立地を徒歩圏に集積させることとあわせて、歩行環境をインフラ面からも改善することが求められる。

現在の住宅市場において、顧客のウォーカブルに対する選好を満たす物件は不足している。イラン危機に伴う石油価格の高騰でウォーカブルな地区への居住ニーズはますます高まる可能性もある。単に住宅不足の解消のために供給戸数を増やすだけでなく、顧客ニーズにあわせたウォーカブルな地区のデザインと住宅の供給が求められる

insight|知見

  • 「ウォーカブル」がバズワード化してしまったことで、イメージや定義がばらついていたり、理想と現実にギャップが発生したりというのは、日本も同様ではないかと思います。ウォーカブルという抽象概念を自分たちがまちづくりをするエリアやプロジェクトに具体的に落とし込んでみるという作業が必要なのかもしれませんね。

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