歯医者で、私は活きのいい魚になった日🐟
皆さんは、歯医者さんのあの音……好きだろうか?
私は苦手なのである。
私は、顔の大きさの割に歯の本数が多いという、少し不思議な生態をしている。
歯医者さんに行くたび、なぜか言われる。
『あなたね、顔の大きさと歯の本数が合ってないんだよね』
……。
それは親に言ってくれ。
私が注文して生やしたわけではない。
これはもう、
生えたい歯vs小顔の戦い
なのである。
場所が足りないというのに、私の歯はなぜか元気いっぱい。
「まだ出られます!」
と言わんばかりに、しっかり存在を主張してくる。
その当時、親知らずは奥歯4本とも生えていた。
生え始めのもの。
歯茎の中で待機しているもの。
そして、堂々と姿を現しているもの。
ある日、奥歯が痛み出した。
これは無理だ。
そう思い、歯医者へ向かった。
診察の結果、親知らずが虫歯になっていた。
先生は言った。
『治療しても、親知らずは奥歯だからまた悪くなる可能性がある。抜いた方がいい』
こうして私は、親知らずとの戦いの日を迎えた。
麻酔をして、待つこと10分。
先生がやってきた。
しかし。
私の親知らずは、どうやら簡単には旅立ってくれないタイプだった。
先生が力を入れる。
……抜けない。
さらに力が入る。
……まだ抜けない。
その時、私の身体にも異変が起きた。
痛みはない。
麻酔が効いているから。
なのに。
身体が勝手に反応する。
頭の中では、
「じっとしろ!」
と必死に命令している。
でも身体は言うことを聞かない。
背中が反る。
身体が浮く。
足に力が入る。
私は思った。
(好きで海老反りしてるんじゃないんだよ!)
(勝手に浮く身体を、どうしろっていうんだ!)
先生から一言。
『浮かせないで!身体を!じっとして!』
……先生。
私もそうしたい。
本当にそうしたい。
しかし、身体が勝手に動くのである。
その時、私は初めて思った。
顔と身体、別々に動いてない?🤣
ついには、
歯医者さん1人。
歯科助手さん2人。
対する私、1人。
という謎の戦いになった。
足首まで押さえられる私。
大人になってから、まさか歯医者さんでこんな状況になるとは思わなかった。
そして、ついに。
親知らずは抜けた。
……と思ったら。
今度は先生が疲れきっていた。
ゼーゼー言いながら、水を飲んでいる。
先生が言った。
『いやぁ……強い歯だね』
いや、先生。
抜かれた私より、先生の方が疲れてませんか?🤣
さらに先生は言った。
『何で小顔なのに、そんな歯を生やす訳!?』
……。
先生。
私にも分かりません。
生やしたのは私ではありません。
歯の意思です。
帰りの車の中。
私はふと思った。
魚って、捌かれても活きがいいものがいる。
もしかして……。
今日の私は、
活きのいい魚だったのではないか。
そう思った。
ちなみに、その後も引っ越し先で何軒か歯医者さんに行った。
そして、毎回言われる。
『歯、しっかりしてますね』
……。
もう分かった。
私の中で一番頑固なのは、どうやら私ではない。
私の歯である🐟
