鎌鼬の夜、外道の戯れ、
【鎌鼬(カマイタチの夜)】
夜になると、我が城に風が来る。
不摂生と座りっぱなしだと
鎌鼬(カマイタチ)が来る夜。
だれも、その姿を見たことがない。
ただ、来た、
ということだけがわかる。
やつは、
いつも同じところに潜んでいる。
TOILET。
しん、と静かな夜ほど、危ない。
あ。いかん、
来る。来る、きっと来る
おしりが白く、そう幻よ
けれど、もう、止まらない。
……っ。脂汗が止まらない
いかん、あきまへん、嘆きと共に
私はいつまでここにいるんだろう
痛みと赤い惨劇の中で
そしてそこで気を失う
朝になると、村のどこかで、
私がつぶやく。
「カマイタチに、やられた」
だれも、その姿を見たことがない。
だれも、その理由を知らない。
ある日、ひとりが、ふと気づく。
「あれ。いつも、同じところだな」
やつの狙いは、ひとつだけ。
やつの名は、カマイタチ。
今夜も、風が来る。
……おしりかな。
【私の名はウグイ】
〜創作の川を泳ぐ〜
私の名はウグイ
川の底の石をつついて、流れてくるものは何でも食べる。虫でも、草でも、誰かが落とした弁当のかけらでも、
針だけでも釣れる貪欲なのだ。
釣り人が言う。
「ウグイか、また外道か」
外道でいい。邪道はどこへ行ったのか
創作の川はいつも濁っていて、いいものと悪いものが一緒に流れてくる。見極めてから食べようとすると、何も食べられない。
だから私はとりあえず食いつく。
たまに腹を壊す。変なものを飲み込んで、しばらく川底でじっとする。でも次の日にはまた泳いでいる。腹を壊して初めて、あれは毒だったとわかる。理屈じゃなくて、体で覚える。
ヤマメは美しい。斑点が光って、
選んだ餌しか食べない。釣り人も大事に扱う。
昔イクラに真似た餌やミミズでよく釣りをしたものだ。
でも私には私の川がある。
今日も何かが流れてきた
ウグイだけにパクる、返し針つきで人の心にぶっ刺さるみたいな
いつか巨大なのを釣り上げたい。
【サバイバルラッキースター】
野生に歯医者はいない。
歯が割れたら、
食えなくなる。
食えなくなったら、
弱る。
弱ったら、
退場だ。
シンプルで、
残酷で、
わりと公平なシステムである。
なのにヒトは、
リクライニングチェアに倒され
「ラッキーでしたよ〜、神経まで達してなかった」
と言われる。
ラッキー。
牙を抜かれた獣が
3割負担でラッキーをもらっている。
創ったのかも、
空調の効いた部屋で、
消毒のニオイを嗅ぎながら。
羊座だから、というわけじゃないけど
私はたぶん、群れる側の生き物だ。
一人では歯も守れない。
ニオイで危険も察知できない。
少しはわかる程度。
空を見ても、
天気予報アプリを開く。
便利だ。
野生を忘れたホモ・サピエンス
思い出す時のような気もする。
共感して、共鳴して、共振して。
誰かの「わかる」に救われながら、
誰かの痛みに「わかる」と返しながら、
それで生き延びてきた。
野生とは真逆の、
ぬるくて、
やわらかい、
サバイバルだけど——
これはこれで、
ちゃんとした生存戦略だと思う。
野生の獣は強い。
でも歯が割れたら一人で終わる。
私は弱い。
でも歯が割れても誰かが直してくれる。
どっちがラッキースターか。
なんて、もう聞かなくていい。
今日も、ラッキーだった。
3割負担で、星になった。
「次回は来週の水曜日に」
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