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第173話 『はだかの白鳥展』毎日ゲスト⑬〜写真家【笠井爾示】×AV監督【梁井一】

 2025年5月10日、18時、毎日ゲストは、写真家の笠井爾示さんと、現役AV監督の梁井一さん。グラビア撮影の裏側や、『#寧々密会』の始まり、2人がエイトマンに対して思うことなどなど。(以下敬称略)


(左から)梁井一さん、笠井爾示さん

笠井、梁井も感じた『はだかの白鳥』の臨場感

:笠井爾示さんは日本写真協会賞という、日本でナンバーワンの賞を取った写真家です。エイトマンとは昨年、『#寧々密会』写真展を開きました。女優の吉高寧々さんを約2年半、密着して撮り続けたのが、笠井爾示さんです。
 そして隣が、柳井一さんです。柳井さんはAVメーカー『ハマジム』で現役のAV監督をしています。得意分野はハメ撮りだと聞いてますが、どうですか?
梁井:そうですね。ドキュメントとかもよく撮ります。
:ドキュメントといえば、はだかの白鳥展の入り口に流れてる映像と、花田さん、百田さん、箕輪さんの『はだかの白鳥』の書評動画も梁井さんが作ってくれました。

:あと、エイトウーマンのドキュメントも。

:さらに、私が去年の9月に参加した、京都の海宝寺でのイベント。あのドキュメント映像を作ってくれたのも梁井さんです。いつもとてもお世話になっています。

:お2人は、私の本を読んでくださったそうなんですが、感想を聞かせてください。
梁井:僕もAVの中の人間なんです。第1章とか第2章では、AVの話がメインじゃないですか。AV業界に入るドキドキとかワクワクみたいなのを、AVの中の人なのに、ちゃんと感じたんですよ。知ってる話なのにドキドキワクワクした。これって文章が上手ってことなんだろうなと思いました。
:当事者でありながらも臨場感を感じられたってことですかね?
梁井:そう。中の人だからそういうのは感じないだろうと思って読んだけど、そうじゃなかった。
笠井:あれ、本に出てくる人が、大体、実名じゃないですか。俺の知ってる人もたくさん出てる。だからよりいっそ、リアリティを持って読めたなと思ったのが1つ。
 あと、梁井さんが言ったように、すごいワクワクしながら読めたっていうのがもう1つ。炎上した時に1回謝ったじゃないですか。そのあと、またさらに炎上して。その時の自分の心の叫びが文章になっていて、あの辺はすごい臨場感があったし、ああいうのって経験した人じゃないと分からない。すごく胸に来るものがありました。
 そしてね、ラストがすごい良いんですよね。ちょっとフランス映画っぽい。もやもやしながら終わる感じ。ハリウッド映画みたいに分かりやすくハッピーエンドじゃなくて、もやーっとしたところがね、良かった。
:私ももやもやした気持ちのまま書きました。
笠井:あれが良かった。俺も読んでてもやもやしたもん。
梁井:あと、この1行が最高でしたね。「過去の自分が残ってた」。この1文の手前までは実際のAVでも撮ろうとするし、撮れるんですよ。僕はAVを『はだかの白鳥』みたいなアプローチで撮るんです。女優に対して、なんでAV出たのかとか、これまでどんな人生だったかの話を丹念に聞く。そうすると「過去の自分が残ってた」の手前までは、結構聞けるんです。すごいどん底までいった話とか、何でもできるような状態になってAV女優になった話とか、AVがバレた時の話とか。でも「過去の自分が残ってた」以降にみんな蓋するんですよ。ここに蓋して、みんなポジティブにやってる。だからここの1文がすごいなと思った。AV監督目線で。

「過去の自分が残ってた」

笠井爾示『#寧々密会』の始まり

:笠井さんと梁井さんは共通するものがあると思うんです。それが何か少し分かったんです。2人とも、寄り添う型の映像マンなんですよね。梁井さんは物理的に相手とゼロ距離で、笠井さんもハメ撮りみたいな感じの写真が多い。
笠井:僕の場合はハメてないんですけどね。でもそう誤解されるぐらいが面白いと思ってます。それが写真だと思ってる。ゼロ距離っぽいことができたら良いなと。
梁井:俺もそれができるようになりたいです。
:それだけゼロ距離なのにですか。
梁井:物理的なゼロ距離のコミュニケーションじゃなくて、距離があるけど、ゼロ距離みたいなことをしたいってすごい思ってる。エイトマンの仕事は、その意欲を刺激してくれるんですよね。
笠井:それはあるね。
:笠井さんは約2年半、吉高寧々ちゃんを撮っていて、どうでしたか。
笠井:僕は月1くらいの頻度で撮ってたんですけど、寧々ちゃんとはある程度ドライでいようと決めてたんです。密会だからこそ。その方が持続すると思って。例えば、撮影して、その後、毎回飲みに行ったりしてたら大変じゃないですか。お互いに。だから撮影は、撮って、解散、ってのをずっと続けてたんです。その方が続くんですよね。

笠井:去年の『#寧々密会』で、実際に寧々ちゃんが泣いてる写真があるんです。あれは現場で、色々相談されて、そこで寧々ちゃんがわーって泣き出した写真。俺は泣いてるの見たら「撮りたい」って思っちゃうから、「わー! 撮る撮る!」みたいな感じで撮ってた(笑)。そういう距離感はあったけど、壁じゃなくて、適度にドライな状態を保ってた。だからあそこまでできたんですよ。
梁井:撮影で築くコミュニケーションみたいなのがあるんですね。
笠井:そうですね。あとね、寧々密会は結果的に写真展になったけども、撮ってる2年半は何も決まってなくて、ただただ撮るって状態だった。
梁井:ゴールは?
笠井:決まってないです。
梁井:ふんわりとも決まってないんですか?
笠井:全くないです。
梁井:じゃあ、どう始まるんですか?
笠井:そうですよね。そもそも僕がエイトマンの色んな方を何度か撮ってたんです。
:例えば誰ですか?
笠井:小野夕子さんとか、美乃すずめさんとか、一色桃子さんとか、葵つかさとか。つかさは昔から仲良いんです。
:つかさって呼んでますもんね。
笠井:それである仕事で寧々ちゃんに会ったんです。その時に彼女から「私も撮ってください」って言われました。
:去年の『#寧々密会』の前に、寧々ちゃんをインタビューをしたんです。その話をしてくれました。笠井さんの『東京の恋人』って写真集を見て、「写真が呼吸してるように感じた。こんな風に私も撮ってもらいたいと思った」って言ってました。
笠井:すごい良いこと言ってくれますね。
梁井:確かに吐息っぽいのが聞こえてくるよね。

笠井:ただ寧々ちゃんが「私も撮ってください」って言った時は、僕も仕事で行ってるし「じゃあ、連絡先交換しようよ」っていうわけにいかなかったんです。だから「何か機会がありましたら」みたいなことを言って、別れた。
 それからしばらく経って、エイトマンの社長から「吉高寧々を撮ってください」って連絡があったんです。「2人っきりで撮ってください。撮ったものを毎回見せられる範囲で、SNSにアップしていきましょう」って。そのためにもハッシュタグをつけるってなって、俺と寧々ちゃんで色々考えて、『#寧々密会』に決まったんです。

梁井一は西田幸樹の現場で怒られた

梁井:僕はあの靴の写真が好きなんです。すごく色々思い出すんですよ。藤かんなのグラビア撮影の時、西田さんの現場を撮らせてもらったんです。現場にビデオカメラが入るって、まあまあ大変なんです。
:ピリつくんですか?
梁井:ピリつきます。殺気しか感じない。エイトウーマンの現場にも入らせてもらったけど、西田さんの聖域で、西田さんには僕は見えてないんです。だからきついんです。
 藤かんなの現場で、廃工場で踊って、撮影の最後、空現場に靴(トウシューズ)が無造作に置いてあったのね。それが良いなと思って撮ってたら、西田さんが「それ良いですね」って言ってくれた。初めてコミュニケーション取れた。そういう良い思い出があるんです。
:西田さん、覚えてますか?
西田:(会場の隅から)覚えてます。梁井さんが撮ってるのを見て、良いなと思って僕も撮ったんです。
梁井:やっぱりすごいなと思ったのが、俺は無造作に置いてある靴を撮ってたんだけど、西田さんはあれ、ちゃんと演出してるんですよ。靴を、もっと水が溜まってる場所に置き直して。すごいなと思った。
:梁井さんは3年目のエイトウーマンのグラビア撮影の時に、西田さんに怒られたんですよね。女優が焚き火を囲んでる撮影の時。ドキュメントを撮るためにカメラ回してた梁井さんが、西田さんの画角の中に入っちゃってて、あの温厚な西田さんが、怒ったって聞きました。
梁井:柱の影だから大丈夫かなと思ってたけど、入ってた。しかも何枚かシャッター切っちゃってたのよ。しばらく時間が経ってから、見切れてるって気付いちゃったんだよ。
笠井:それは怒られますね(笑)
:西田さん、その記憶ありますか?
西田:いや、あんまりないです(笑)

笠井爾示が葵つかさにガチギレしたら、エイトマンから電話が来た

:笠井さんとエイトマンの出会いを教えてください。
笠井:俺はもともと、つかさ(葵つかさ)と結構長いこと知り合いで、写真も撮ってたし、喧嘩もよくしてたんですよ。ある時、俺が彼女にガチギレしたことがあったんです。何でガチギレしたかっていうと、つかさが相談してきたことに対して、俺は真摯に「それはこうだよ」って言ったんだけど、やらなかったんですよね。だから俺は怒った。そのタイミングで俺の知り合いの、塩原洋くんが俺に「エイトマンの社長が電話で話したがってる」って言ってきた。
:塩原洋さんって、エイトマンのオフショット写真集を撮ってくれている写真家です。

笠井:俺、彼とはすごい仲良くて、彼もつかさと仲良い。そんな彼が「エイトマンの社長が電話で話したがってる」って言ってきたんです。俺がつかさにガチギレした後だから、震え上がるじゃないですか。
梁井:エイトマンと仕事の関わりは、もうすでにあったんですか?
笠井:全くないです。
梁井:エイトマン抜きで葵つかさと繋がりがあったんですね。
笠井:そう。全く抜きで。だからエイトマン社長が電話で話したいって言ってきたら、震え上がるじゃん。本当は嫌だったんだけど、逃げるわけにもいかないし、とにかく電話で話すことになったんですよ。そしたら社長から開口一番、「葵つかさのこと、色々と面倒を見てくれててありがとうございます」って言われたの。
:「ありがとう」の意味は何だったんですか?
笠井:要は、つかさの周りって、良いことしか言わない人ばっかりなんです。ちやほやされてた。願わくば、彼女と仲良くなれるかもしれないって人が多かった。そういう人ばっかりの中で、俺みたいに毎回喧嘩したり、怒ったりする人は、つかさの周りにいなかった。
 会ったこともない人に「ありがとうございます」って言える人って、すごいなと思った。だから今もこうして、一緒に何かをしたり、『#寧々密会』もできたんだと思う。

トム・クルーズとハイタッチした笠井爾示

梁井:エイトウーマンの時も思ったけど、エイトマンの熱にほだされるんですよね。一番の熱源は社長なんです。そしてその周りにいる西田さんとかの熱にも、ほだされる。
笠井:その感覚、分かりますね。
梁井:命をかけて仕事してる人って、そんなに見当たらないから、そういう人を見た時、面白いって思う。惹き込まれる。エイトマンの社長って、みんなに怒ってるよね。
笠井:正直言って、入り口は結構めんどくさいなって思うこともあるんですよ。
梁井:エイトマンの熱に触れてない時点では、多分そう感じちゃうんですよね。
笠井:しかも社長はさ「笠井さん、やる気なさそうやし」とか言うじゃん。いちいち。煽ってくるんだよ。そんなわけないじゃんって。
:笠井さんってね、トム・クルーズを撮ってるんですよ。
笠井:トム・クルーズ? ああ、今、日本に来てるらしいよね。僕ねあんまり言わないですけど、トム・クルーズを撮ったことあるんですよ。『CUT』って映画雑誌があるんです。トム・クルーズが『ラストサムライ』で来日した時に、彼を撮りました。トム・クルーズだけじゃなくて、役所広司さんとか、他の女優さんとか監督も、全員撮ったんですよ。
 撮影の時は、ホテルのワンフロアを丸々借りて、色んな雑誌社がたくさん集まって盛大でした。広い部屋でトム・クルーズを1対1で撮ったんだけど、撮影時間は5分くらいだったと思う。10分もなかった。
:トム・クルーズがたったの5分?
笠井:他の人はもっと短いですよ。1分とか30秒とか。流れ作業みたいだった。
梁井:いつもの笠井さんの距離感で撮るんですか?
笠井:そうです。いつもの感じで。

笠井さんの距離感。
前のめりだから撮られる側はとても近く感じる

笠井:ちょっと脱線するんですけど、その前に俺ね、同じ雑誌でイ・ビョンホンとチェ・ジウを撮ったんです。その時もすごい短い時間で撮らなくて、それなのに、セキュリティとかの関係者がたくさんいて、すっごい大変だったんです。だからトム・クルーズはもっと大変だろうなと思ってたんです。
 それなのに、撮影場所で待ってたら、ドアが開いて、トム・クルーズが1人で現れた。「じゃあ始めようぜ」って。かっこ良くないですか? セキュリティもマネージャーも誰もなく、1人でやってきた。写真撮って、彼も色々ポーズとってくれて、最後は2人でハイタッチしました。

ハメ撮り監督・梁井一の映像は泣ける

:梁井さんに聞きたいんですが、ハメ撮りのAV監督って、何歳くらいまで続けられるものなんですか?
梁井:今、僕は41なんですけど、調子そういうことを考える時期です。多分50歳でやってる人は稀ですね。
:体力的にハードだからですか。
梁井:モデルって19、20歳が一番多い。その人を相手をするから、年齢がどんどん離れていくんです。体力よりも、モデルとの乖離をどこまで踏ん張り続けられるかが問題な感じがする。だからセックスしない撮影を、最近すごく意識するようになってます。
笠井:そういうのも撮ってるんですか?
梁井:両方やってる感じですね。セックスしない撮影ってどういうものかと言うと、ドキュメントだったりメイキングの撮影だったりするんです。AVは自分がハメ撮りしてるのが1番面白いなと思う。だからAVで男優を入れて撮るのは、やり続けようとあんまり思ってない。
:梁井さんの作る動画は、哀愁や切なさが感じられると思うんです。笠井さんの写真にも似たものを感じます。負の要素というか。2人は何か意識してるんですか?
笠井・梁井:うーん、ないですね。
梁井:なんならカラッとやってるつもり。
:出来上がったものはカラッとしてないですよ(笑)。『はだかの白鳥展』に作ってくれた、私のバレエの動画。あれを初めて見た時、涙が止まらなかったです。自分の過去なので、当時のことを色々思い出すんです。あの時、母が辛そうだったとか、この時はバレエ教室で無視されてた時だとか。楽しいかったことより、辛かったことを思い出させる動画です。
梁井:1番最初に作った時は、はじめに30歳でAV出演を決意した時の、コンクールの動画を入れてたんだよね。でも「これは今の藤かんなにしか見えないんだよな」って言われて、確かにと思った。それで子供の時の映像を最初に持ってきて、すごい時空が広がったよね。

「俺の写真はみんなのもの」

:笠井さん、最後にまとめをお願いします。
笠井:俺!? まとめとか一番苦手なんだけど。
:今年、1番気になるのは、『#寧々密会』だと思うんです。寧々ちゃんに「もう寧々密会、終わるの?」って聞いたら、「笠井さんがやるって言ってくれるなら、私は絶対やりたい続けたい」って言ってくれてました。
笠井:寧々ちゃんは俺にもそう言ってくれてて、俺もそう思ってた。終わりはないと思ってるし、別に終わりを自分で決める必要はないし。それで実際、写真展が終わった後に、恵比寿の会場近くで撮ったんですよ。寧々ちゃんが「ここで撮りたい」って言ってくれて。彼女の中ではもうストーリーがあるみたい。僕はあくまで写真家として、その想いを表現したいと思う。言われたことをやって、作品にしていくことが仕事だと思ってる。
梁井:今、吉高寧々が、『寧々大賞』って映像企画を募集してるんです。僕、それに『#寧々密会』に絡めて企画を出そうと思ってたの———

梁井:でもやめます。
笠井・藤:え。なんでなんで。
梁井:今日の笠井さんの話を聞くと、『#寧々密会』ってすごく特別なものだと思えた。僕は『#寧々密会』みたいに数日間、期間をもらって、映像にしたかったんだけど、ちょっとやめたほうが良いなって思えた。これは笠井さんと寧々ちゃんの2人の関係性が成立してるから、良いのであって、上辺でやってもあんまり面白くなさそうだって思いました。
笠井:いやいや、分かんないですよ。
梁井:笠井さんの写真を、パッケージに使わせてもらって良いですか?
笠井:全然良いですよ。写真ってそういうことですから。偉そうなこと言うんじゃないけど、俺、自分が撮った写真、自分のものだと思ってないんですよ。
:誰のものなんですか?
笠井:みんなのものですよ。だって自分でイチから作り上げた創造物じゃないからね。寧々ちゃんって人が存在して、それを撮ったのが俺ってだけ。だから「これは俺の写真だ」って言うのっておかしいじゃないですか。
『#寧々密会』の時も、俺が撮って渡して、各々が好きな写真を勝手にSNSにあげるっていう感覚が、ものすごい写真的だったんですよ。エイトマンはエイトマンであげる。寧々ちゃんは寧々ちゃんであげる。もちろん俺が撮ったから、「撮影:笠井爾示」って書いてくれるのはありがたいんだけど、絶対にそうしろとも思ってないんです。
:今年は吉高寧々関連で、2人が大いに関わってきそうですね。今後もよろしくお願いします。

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