第172話 『はだかの白鳥展』毎日ゲスト⑫〜【千原せいじさん】のええ話
2025年5月10日、15時、エンタメの権化のような、お笑い芸人の【千原せいじさん】がゲストに来てくれた。(以下敬称略)

千原せいじが『はだかの白鳥』を読んで
千原:皆さん本(はだかの白鳥)、読みましたか? 僕も読ませてもらったんですが、1人の女性の生き方として、男性が読んでも影響されるというか、感銘を受けるところがあったように思います。あと、会場に女性の方もおられますけど、女性も読んでみたら良いと思います。僕が思うに、女優さんとかは、女の部分よりおっさんの部分がでかいと思うね。周りに依存しないみたいなところがすごい強い。だから女の部分の多い人は、なかなか理解しにくいかなと思います。でもまあまあ、女性が読んだ感想を聞きたいなと思います。自分の進むべき道を自分で選んできた、という足跡が、この本には書いてあるんですよね。
藤:この展示会のテーマは「人生のドラマをエンタメに」なんです。せいじさんはお笑い芸人ですし、まさにたくさんのエンタメを生み出してきた人だだと、私は思っています。この場に本当にふさわしいゲストだなって。
千原:僕はエンタメというより、好き勝手生きてるだけです。人に楽しんでもらおうというサービス精神はほぼないです。「勝手に見といてー」て感じですね。
藤:せいじさんは本質を突いているエピソードが、たくさんあると思うんです。例えば、飛行機の中で赤ちゃんが泣いてて、他の乗客のおっちゃんが「赤ちゃん黙らせろやー」と怒ったと。そこにせいじさんが「お前も赤ん坊やった時あったやろ!」って怒り返した。
千原:それは、お母さんかわいそうやったんや。若くて華奢で、申し訳なさそうにしてるお母さんやったわ。これが厚かましい汚いおばはんやったら、そんな風に助けてなかったと思うで。それに怒ってきたおっさんも行儀悪かったからね。
ほんま! 今、汚いおっさん多いねん。みんな行儀のええ、綺麗なおっさんになろうぜ! 行儀悪いおっさんほど醜いものはないからな。って足を組みながら言ってる俺やねんけど(笑)
(会場笑い)

千原:僕は人を助けるとかそういうことをしたいんじゃなくて、自分がスッキリしたいだけ。寝る前、強いては死ぬ前に、「あの時あれ、言うといたら良かった」とか思うの嫌やん。だから、やりたいことはやりたい放題やるし、言いたいことは言いたい放題、全部言うようにしてんねん。
千原ジュニアの交通事故の話
藤:千原ジュニアさんが交通事故に遭った時の話、聞きたいです。
千原:30年くらい前の話です。ジュニアくんがオートバイで事故を起こして、救急車で運ばれた。その時、僕はキャバクラの女の子と飲んでたの。ちょうどここ(はだかの白鳥展)の近くの、松見坂らへんや。夜中の1時くらいに、マネージャーからもおかんからも、山ほど電話がかかってきた。ジュニアが交通事故起こしたって。マネージャーは「病院来い」、おかんは「病院行け」って言う。
でも俺、行ったって何にもできひんやん。医者ちゃうし。「行って何すんねん!」って言い返したけど、マネージャーは「とりあえず来い」って言う。いや、俺が今できることは、キャバ嬢を口説くことだけや。もうあと一歩やねん。キャバ嬢連れて、ちょっとずつ俺の家に近付いて来てるねん。もう通り挟んだ向こうが、俺のマンションやねん。そんな時に、なぁんにもできひんのに病院に行って、大損やないか、俺は!
ほんでまあ、電話がかかってくるいうことは、まだジュニアは生きてるということやからな。死んでたら電話かけてる場合ちゃうから。でも明け方の4時過ぎぐらいまでかかってくるわけ。そんだけ電話かかってきたら、キャバ嬢と上手いこと行くもんも行かへんわ。しゃあない、おもて、病院行ってん。ベロンベロンで。腹立つから、マネージャーに見せつけたろう思って、そのキャバ嬢も連れて。
で、病院で「弟さんの状態は、ご家族にしかお話しできません」って言われたの。医者はすぐそれ言うねん。そんなん、子供の頃からしょっちゅうあったわ。それで医者に部屋に通されて、ジュニアの状態を説明される。ただ俺はベロンベロンやから、医者は「まずお兄さん大丈夫ですか?」って聞いてきたけど、大丈夫なわけあるかい! お姉ちゃんともうちょっとやったのに、夜中に電話かけられまくって、腹立ってたわ。
で、頭蓋骨のレントゲンを見せてもらったの。ほんなら、きっれーいに割れてるねん。真ん中で。ピッシィーーって。でも、だから人間で助かるんだって。
藤:どういうことですか?
千原:人間の頭蓋骨って何枚かが組み合わさってできてるから、そのつなぎ目がパカッと割れてるだけやったら、逆にすぐ引っ付くねんて。「人間の体、すげーなー!」って、素直に感動したテンションで言うてました。
ほんで、集中治療室に入らされてん。ほんならな、部屋が手術に近い手前の方やってん。命短い人が、手前の方の部屋やって言うやん。中入って、ジュニアの顔見たら、パンッパンやったの。腫れてバスケットボールみたいになってた。それ見た瞬間「お前、パンパンやな!」って言うたわ。あいつもなんか言うとったけど、喋られへんし、何言うてるんか分からんかった。後でその時のこと聞いたら「覚えてへんわー」言うとった。それからたくさんの人に助けてもらって、彼は元気になった。
俺がこの時、何を学んだかって言うと、命が助かったってことは、俺たち、絶対売れるんやなぁと思ったこと。それをマネージャーに言うて、キャバ嬢と帰ろうとしたら、マネージャーは俺の背中に向かって、「お前だけ、死ねーーー!」って言うとったわ。
藤:その後、キャバ嬢とは上手くいったんですか?
千原:行くか、そんなもん!
(会場笑い)
アップデートするジジイになりたい
千原:僕は運命論者なんです。きっと皆さんもそれぞれ、自分の人生を振り返った時に、「あいつが俺の人生のキーになってるな」とかあると思う。何が言いたいかと言うと、みんな、誰とでも仲良くしなければいけないとか、みんなと円滑に過ごさなければならないって、ちょっと思いすぎやねん。考えすぎてもしゃあないで。
俺はよくケンカもすんねん。誰とでも仲良いなってよく言われるけど、全然仲良くない。特にジジイババアと喧嘩ばっかしやで。ただ、若い子とはあんまり喧嘩にならない。今、若い子の方が情報がたくさんあるし、全体を見れるから、上手いことやれる。やけど、じいさんばあさんは、ほんまにアップデートしてないから、衝突する。
藤:いつかせいじさんに「嫌いなものなんですか?」って聞いた時、「俺はジジイが嫌いなんや!」って言ってましたよね。
千原:ジジイ嫌い。ジジイって長い時間ジジイしてるだけで、エラそうにしてる。そんなもん、みんなジジイになるねん。でも良いジジイと、悪いジジイがあるからな。最近、悪いジジイが多すぎる。
藤:せいじさんは「だから俺はアップデートをしていくんや」って、おっしゃってました。それに対して「なるほどな」と思ったのが、昨年、私たちが恵比寿で開催した『4/8woman写真展』です。会場にせいじさんが来てくれました。「なんで来てくれたんですか?」って聞いたら、「女優さんの展示会って、来たことないから来てみた」っておっしゃってました。きっとその時、私のことも知らなかったですよね。
千原:全然知らなかった。
藤:どの女優が好きだからとかでもなくて、ただ新しいものを経験しようとして来てくれたんだと思いました。それがせいじさんのアップデートなんだなって。
千原:いっちょ噛みやねん。何でも1回やってみたいとか、触ってみたいとか、匂い嗅いでみたい。

藤:最近した何か新しいことはありますか?
千原:最近はね。コース料理を食べようとしてる。俺、バイク好きで、こないだのゴールデンウィーク中に、バイクで北海道に行ってたの。函館におった時、仲間と「飯食いに行くか」ってなって、函館で有名な『五島軒』って洋食屋さんに行こうとした。電話したら「ご予約のないお客様は、コース料理しかダメです」って言われてん。「なんやと!?」と。食いたいもんくいたいやん。コースなんか、食いたないものも出てくるやんけ。なんで高いお金払うといて、食いたないもの食わなあかんのじゃって、やめたの。
でも、どうしても『五島軒』が気になって、次の日の昼、そこのランチを食いに行った。ランチでシチュー食べたら、めっっっちゃ美味くて、他の料理もいっぱい食べたくなって、なんで俺、はじめからコースを食べなかったんやろうって、すっごく反省した。だからこれからはコースしか食べない! って決めてる。
20年売れることを待てるのは才能
千原:ただ、なんでもほどほどにです。皆さん、こうしなければならない、とか、こうあるべきだとか、決めてる人がいるけど、そんなのやめた方がええねん。面倒くさいから。お箸使って食べたい時もあったらさ、手に掴んで食いたい時もあるしさ。お風呂入りたい時もあるし、入りたくない時もあるしさ。自由にやった方が良いよ。
藤:そういう風に思うようになったのは、せいじさんがお坊さんになったからですか?
千原:違う違う。その前から。坊さんになってもあんまり変わらへんけど、坊さんに対するイメージがすごく悪くなった。
(会場笑い)
千原:ほんまやで。坊さんって、みんなええ奴ばっかりやと思ってたら、ほんまに行儀悪いお坊さん多い。この1ヶ月、坊さんと喧嘩ばっかりしよる。
藤:何で喧嘩するんですか?
千原:あのね、偉い人はちゃんとしてはるというか、すごいありがたい感じがするんやけど、中途半端な坊さんは行儀悪いな。
藤:どういう行儀の悪さなんですか?
千原:なんかね、自分より上の人を妬んだり、自分より若いやつが早く出世したりすると、それを妬んだりとか、なんかそういうのが多いな。一般の社会の会社員とかでもそうなんかな。
それで言うたらこないだ、ある芸人が面白いこと言ってた。彼は流しでギャグとか漫談をしてるねん。ある飲み屋さんでそいつが、同じ会社の8人が飲んでる席に、ギャグをしに行ったの。その8人は4人ずつ違うテーブルで飲んでたんやって。片方の4人グループは、会社の悪口ばっかり言ってたらしい。ほんでもう一方の4人は、悪口じゃなくて、自分らの仕事を話してる。悪口ばっかり言ってる方の奴らは、その芸人がオチを言う直前に「トイレ行きまぁーす」とか、しょうもない、さっぶいことするねんて。でも仕事の話をしてる連中は、ちゃんと聞いてくれるし、チップもちゃんとくれるんやって。やっぱり前向きな人、前向きに生きてる人たちっていうのは、周りも優しくできるねんな。
他にもね、その流しの芸人が、ある人のところでギャグとかをしてたら、なんとなくその人の空気に包まれて、一緒に飲むことになっんやって。その人、初対面のおっさんやったんやけど、一緒に飲んでるうちに芸人も気が抜けて、そのおっさんに「僕、もう20年芸人やってるけど、上手くいかないんですよね。才能もないしなー」って気弱なことを言ったんやって。そしたらそのおっさんは「何を言ってるんだ君は。20年、売れるのを待つことができるのは、十分才能があるんだよ。才能のない奴は売れることを20年待てないんだよ。君はそのことに気付いてないんだね」って言ったらしい。なんてええこと言うおっさんなんやと思ったら、その人は、まあまあの会社の社長やった。やっぱりそういう人って、全体を見てはるんやなーって思うよね。そういう歳の取り方したいですよね。
さっきも言うたけど、アップデートしていく。そのためには色んな情報を見なあかんし、色んなものを吸収していく人生が良いなと思うね。

藤:せいじさん、最後にまとめをお願いします。
千原:この本、読んでない方、特に女性の方に読んでもらいたいと思います。自分の立場に置き換えると言うより、書き手の気持ちになって読んでほしいなと思います。こうやって自分で好きな生き方を選ぶという人生を選んだ女性もおるということを知ってほしい。
得てして、AVというのは否定してしまいがちやけど、1回受け入れてみると、ちょっと視野が広がるかも分からへん。読んで損するわけじゃないし、ぜひぜひ読んでみてください。

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読んでくれて、ありがとうございます。