第201話 『#寧々密会写真展』〜京都競馬場でビラ配り、怒られたり笑われたり
京都競馬場で日本のおじさんを呼び込もう
2025年10月26日、『#寧々密会写真展』2日目、日曜日。大学生バイト3名と私は京都競馬場に向かった。
なぜ競馬場? 疑問に思っただろう。会場に来てくれる可能性がもっと高い、日本人男性を呼び込もうとなったからだ。
1日目は伏見稲荷大社でチラシを配った。京都といえば観光客。海外からの観光客に会場に来てもらう、というのが目的だ。しかし配ってみて分かった。観光客はチラシは受け取ってくれても、時間的に会場にくる余裕はない。みんな予定を決めた上で旅行に来るので、写真展まで足を運ぶ余裕はないのだ。
一方で、中年の日本人おじさんはリアルな興味を見せてくれた。
「え、今から行ったら本人に会えるんか!?」
ということで、吉高寧々本人のいる貴重な日曜日は、会場に来られる可能性のある日本人男性を狙おう。海宝寺から3駅先に、京都競馬場がある。じゃあそこでチラシを配ろう、となったのだ。
この日のバイトメンバーは1日目から引き続き、信田くん、堀内くん。そして新メンバーの女子大生3年・大川さん(仮名)だ。向かう電車の中で、堀内くんは競馬について色々教えてくれた。馬が走る時間や、観客の混み具合、馬券の買い方まで。どうやら競馬経験者らしい。
「この写真展のバイト代、全部、馬券に注ぎ込もうかな」
今から馬券買おうとしてる?
そのくらいウキウキしていた。

京阪・淀駅から京都競馬場までの歩道橋でチラシを配る。電車が着くたびに、200名くらいの人の波が押し寄せる。競馬場に向かう人たちは、みんな勇み立っていた。
「吉高寧々の写真展です」とチラシを渡しても、歩行速度は緩めない。そらそうだ。これから賭け事をしに行くのだから、写真展どころではない。しかしその中でも3割くらいは「吉高寧々!?」と足を止めくれた。知名度すごい!
AVを見下してくるおじさんとの闘い
ちょっとしたトラブルになりかけもした。バイトの信田くんが50代のおじさんに、チラシを渡している時だ。おじさんはピチピチのスキニーパンツを履いて、手にはヴィトンのハンドバックという出立ち。肌は黒め。ゴルフ焼けだろう。
「AV女優の写真展って、君はそれとどういう関係なんや」
おじさんがバイトの信田くんに絡みつく。
ヘラヘラと好ましくない絡み方だ。
私は少し近寄り、様子を見ることにした。
するとおじさんはすぐ私にも気付き、信田くんと私が同じ作務衣を着ていることから、関係者と判断したのだろう。
「この吉高寧々ってAV女優やろ。あんたたちはこれとどんな関係なんや」
チラシをピラピラさせながら、しつこく聞いてくる。
「吉高寧々の事務所の関係者です」
私が言う。
「ほんならお兄さんは、汁男でもしてるんか」
おじさんは信田くんを見てヘラつく。
「汁男でも」って・・・・・・
カメラの前でアソコを出す度胸もないくせに。
おじさんは年下の若者を、汁男優を、AVを、吉高寧々を見下した。瞬時にそう判断した。
「彼はなろうと思ったら、ベテラン男優にもなれる秀才です」
なんたって京都大学の学生やで。
私が言うと、おじさんは私を上から下まで見て言った。
「お姉さん、なんかエロいこと言うなぁ!」
そして去った。
別にエロいことは言っていない。ただ「エロい」と言わせてやったので、現役AV女優である私の色気勝ちだ。

AVを笑ってくる人と学生バイトも闘う
チラシを配っていて不思議に感じることもあった。
「AV女優の写真展です」
とチラシを渡すと、声をあげて笑う男性がいるのだ。その人たちの笑いには2種類あるように感じた。
1つは「本当はAVが好きなんだけど、チラシをもらうとAVが好きだとバレるので、恥ずかしい」の笑い。
もう1つは「AVなんかが真面目にチラシ配んなよ」の笑いだ。
私はAVのど真ん中の人間だし、そういう笑いを受けるのはまだ慣れている。しかしバイトの学生達はどう思っただろう。真面目にチラシを渡している彼らが、笑われているのを見ると腹が立つ。そしてその光景からは、中島みゆきの『ファイト!』が聞こえてきた。
「闘う君の歌を、闘わない奴が笑うだろう。ファイト!」
学生バイトたちは本当に闘ってくれた。チラシを見て笑う人たちがネガコン(ネガティブコントロール:陰性対照)となり、一層カッコ良く見えた。ありがとう。

AVってだけで見下してくる人がいる。それがチラシ1枚渡した瞬間に分かる。これこそ本当のリトマス試験紙だった。
1時間ほど配ったところで、全身緑の服を着たおじさんがやって来た。
「あなたたち、許可取ってチラシ配ってるんですか?」
競馬場関係者だった。
残念ながら、許可は取っていない。
「JRAの許可がないと、配ったらダメ。許可取って。許可!」
チラシ配りは強制終了になった。
でも許可を取ったら、また配れるのか。
近くのなか卯でお昼休憩を取りながら、JRA(日本中央競馬会)に電話した。
「写真展のチラシを配りたいんですけど。許可をもらうにはどうやって申請したら良いですか」
電話口の女性は
「チラシの内容を確認してから〜」
「個人様からの販促行為はちょっと〜」
「前もって申請していただかないと〜」
などとモジモジする。
「許可取ったら配れるって、JRAのおじさんから聞いたんです。今すぐ申請します。チラシのデータも送ります。申請の仕方と、許可が出るまでどのくらいかかるか教えてください」
少し早口で言ってしまったかもしれない。
「販促行為は一切許可できません!」
ピシャリと言われて電話は切れた。さっきまでのモジモジとは打って変わっての拒絶。もしかすると、なか卯の呑気な店内音楽が聞こえて、冷やかしと思われたのかも。それか競馬場にいた影響で、私も勇み立っていたのかもしれない。
とにかく競馬場は配れないことがはっきりした。残念。
その後、海宝寺に一番近い大手筋商店街で、カラオケ店やパチンコ店、飲食店などに、チラシを貼ってもらうようお願いした。
「どこでも貼っとってもろて良いですよ」
「レジの横、置いときましょか」
あっけに取られるほど、みんなフレンドリーだった。結果、50店舗くらいチラシを受け取ってくれた。

やはりチラシ配りは受け取ってもらうと嬉しい。商店街での手応えがあったので、明日からは京都中の飲食店に配れば良いんじゃないか。そういう空気感になった。祇園や宇治、いっそ大阪の京橋などにも足をのばして良いんじゃないかと。
しかし手を広げすぎると、効果が浅くなる。本来の目的は、会場に来てもらうこと。それに大学生バイトに参加してもらっている理由は、これからの未来を担う「大学生」に来てもらうためだ。
もっと狭く深く。明日からは「大学」を狙っていこうじゃないか。
ということで3日目。関西で一番偏差値の高い『京都大学』と、海宝寺に一番近い『京都教育大学』にチラシを配ることになった。それはまた次の話。

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