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第193話 『葵つかさ 生きる。』写真展〜葵つかさとは④(終わり)

「本当に本当に、これまで葵つかさを支えてくださって、ありがとうございました。これからも、私らしく、不器用に生きていくので、みなさんも幸せに生きてください」
 終わりの挨拶を述べ、葵つかさの最初で最後の写真展『葵つかさ 生きる。』は終わった。「葵つかさとは」の謎解きも、そろそろ終着点を見つけよう。


元グラビアアイドル・三田羽衣(三田夫人)の証言

 憧れの女性でもあり、トップ女優でもあるけど、プライベートでも一番身近な人。親友みたいな感じ。恵比寿マスカッツ時代、一緒に闘ってきた戦友でもあった。
 出会いは恵比寿マスカッツ。もう10年くらい前。つかさは他の子とは全然しゃべんなくて、練習も終わったらすぐ帰る子だった。だから逆に気になってた。私もあまり人と関わらない性格だったから。つかさも私と似た性格なんだろうな、きっと気が合うだろうなって勝手に思ってた。
 仲良くなるようになったきっかけは、ダンスレッスンの日に、私が稲荷寿司を作って行ったの。私、料理が好きで、自分用にと、つかさにも渡してみようと思って。レッスンが終わると、つかさはいつも通り、すぐに楽屋を出て行っちゃって、急いで追いかけた。彼女が車に乗る時にギリギリ追いついて、「これ食べて」って、稲荷寿司を渡した。そしたらつかさは、「えー、嬉しい!」って。
 その時の彼女は、くしゃくしゃになって笑って、本当に嬉しそうだった。これがこの子の本当の顔なんだろうなって確信した。そこから連絡先を聞いて、連絡取り合うようになったし、ダンスレッスンとかも2人でするようになった。
 周囲からは「あの2人、くっついたな」って、好意的じゃない目を向けられてるのも感じ取ってた。でもそれは別にどうってことなくて、私はつかさと2人でいると、居心地が良かった。肩肘張らない自分でいられた気がする。
 正直、マスカッツはギスギスした空気が流れることもあったよ。特につかさに対して。彼女はダンスが嫌いなんだけど、人気女優だからいつもセンターなの。踊れない彼女に対して、他の女優さんとか、グラビアの子が「なんで踊れないのに前にいるの?」って思ってるのは感じてた。だからってつかさが、ダンスの練習をむちゃくちゃやるわけでもなかったしね。私はそんな周囲に流されないつかさが好きだった。
 葵つかさが今後どうなっていくか。戦友として、親友として1番思うのは、女性として幸せになってほしいなと思う。私は結婚して子供が産まれたから、そう思うのかもしれない。いつかは親も亡くなって、1人になっちゃう。その時に彼女を守ってくれる人がいれば良いなと思う。
 今後、葵つかさを超える人はいないんじゃないかな。女優としても、人としても。私は1番好き。

葵つかさと三田夫人

葵つかさを何度も撮ってきた写真家・笠井爾示の証言

 さっきの三田夫人の話を聞いてて思ったけど、マスカッツは大変だった思うよ。あの頃の葵つかさは、明らかに病んでたから。普段のブイの撮影もあって、さらにマスカッツで地上波バラエティとか出てたでしょ。
 つかさとの出会いは、厳密には覚えてないけど、すごく長い間知り合いなんだよ。エイトマン社長より先につかさと知り合ってるもん。
 つかさって、誤解されやすいタイプなんだよ。俺も最初は誤解してた。「こいつわがままな女だな」って、決めつけてた時期もあった。気まぐれだし、約束はすぐブッチするし、ドタキャンもよくあったもん。そういうのが度重なると、どうしても「すげーわがままだな」って印象になっちゃうじゃん。よく喧嘩もしてたよ。つかさに「ふざけんなよ」って平気で言ってた。
 でもだんだん単なるわがままじゃないことが分かってきた。彼女としては、本当に行きたいけど、行けないとか、素直になりたいんだけど、できない、みたいな葛藤があることに後々気づいた。
 誤解が解けたきっかけは、色々あるけど、ひとつはっきり覚えてることがあるな。さっきさ、葵つかさが恵比寿マスカッツの頃、すげー病んでたって言ったでしょ。その頃、つかさは「マスカッツ辞めたい」って、ずーっと言ってたんだよ。
 ある日、俺の事務所でつかさがいつもの通り「マスカッツ辞めたい」って言ってて、そこにエイトマン社長から電話がかかってきたんだよね。彼女は電話をとって、部屋を出て行った。
 数分後、つかさがワンワン泣いて部屋に戻ってきて。きっと社長とバチバチ言い合ったんだろうね。どうしたどうしたってなったけど、俺はそれを見て、嬉しかった。
 普通さ、上辺の付き合いの人に、泣いてるところ見せないじゃん。だから少しは信頼されてるんだなって思った。わがままな女だなって思ってたけど、すごく素直なだけなんだった思った瞬間だったかな。

エイトマン社長からも証言を聞き出す

「社長はどうなんですか? 葵つかさの引退で元気なさそうだけど」
 三田夫人がエイトマン社長に聞く。
「え。そら、元気ではないよね」
━━エイトマン社長は話し始める。
 でも、腑に落とした。葵つかさが辞めるから、多分エイトマンは残るんだと思う。何かを失わないと何かを得れないから。
 今年、国内外含めて、大きなうねりが起こってると思う。その時代のうねりの中で、大きなものが潰れていっている。変革の時代になっている。エイトマンも、潰れる側になっていたかもしれなかった。
 そんな時に、葵つかさの引退。彼女がその選択をするということは、エイトマンは残るんだなって確信した。大きな大切なものを手放したことで、エイトマンはさらに進む。
 でも彼女が「引退する」って言ってきた時、やっぱり引き留めようとした。最終的に僕は彼女に「寂しい」って言った。そしたら彼女はこう返してきた。
「分かってるよ。私が1番寂しいし、1番怖い。葵つかさを終わらせるなんて」
 ああ、そら彼女が一番怖いよなって、ハッとした。1番怖いのに、あえて飛び込んでいく。それなのに、こっちが「辞めないで」とか言うのは、失礼だなと思った。
 今回の写真展、彼女はずっと「さよなら」と言ってる。「またね」でも「忘れないでね」でもなく。その「さよなら」をちゃんと受け止めるのが、15年間、一緒にエイトマンを引っ張ってくれた、彼女への感謝の仕方だと思う。

「葵つかさとは」私なりの結論

 13日間の写真展で、たくさんの人に「葵つかさとは」と聞いてきた。聞けば聞くほど、よく分からなくなってくる。それでも私なりの答えを出してみると、【葵つかさ=エイトマン社長】だと思うのだ。社長の頭の中の演出を、ひとりの人間として体現できたのが彼女、「葵つかさ」なのだと思う。
 なぜそう結論づけたのかというと、彼女の死生観や、他者から「侍のよう」と思われる言動に、とても馴染みがあったからだ。
「死を覚悟した奴が一番強い」
「絶望の先にしか明るい未来はない」
「見下されても傷つく必要ない。どうせそいつは人前でアソコを出す度胸もないんやから」
「怒りはエネルギー。復讐心は3年まで。その先は感謝する」
「遠回りが1番の近道。だから遠回りが必要」
「人には役割がある。それに早く気付いた奴が勝つ」
 これらはエイトマン社長がよくいう言葉だが、葵つかさの中心にも、同じものが流れているのが、安易にイメージできる。つまり血を分けた存在。それを手放すのは、自分が裂ける心地がしたのではないだろうか。
 いつかの葵つかさは言った。
「エイトマン社長についていける人は、なかなかいない。熱量がすごいから。自分の熱で人を潰してしまうもん」
 その破壊的な熱を飲み込み、彼女は葵つかさを体現させた。怪物だ。それができたのも、彼女の中に、破壊的な熱に耐えられる熱量が備わっていたのだと思う。それは彼女の才能であり、生命力だ。「30歳になったら死ぬ」と言っていたが、葵つかさは「死」と全く逆の位置にいる人だと、私は思う。

 今回の写真展で、私は自信をもらった。藤かんなをやってきて3年。私って、結局はエイトマン社長に演出してもらってるだけだな、と思うこともなくはなかった。でもそう無駄に自信を無くすのは間違っていた。演出を体現できること、熱や想いが見る人に伝わっていること、そして生きた証が残ること。その偉大さを葵つかさに教えてもらった。
 ありがとうございました。

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