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人生の共犯者。─『シアタールーム』撮影記 #234

寝取られなのに、こんなに優しい作品あるんだ、と思った。

『背徳の寝取らせシアタールーム』は、個人的に好きな作品だ。寝取られモノには違いない。でもそこにあるのは、嫉妬や破滅ではなく、“夫婦の遊び” だった。

内容は、性欲の衰えを感じはじめていた旦那・一平ちゃんが、寝取らせ癖に目覚め、妻である私が、他の男に抱かれる姿を見て興奮するというもの。普通なら夫婦関係が壊れそうな設定なのに、この作品では、それが2人の愛情を深めるきっかけになっていく。

撮影中、何度も「この奥さん、かわいいな」と思った。私の演じる妻役は、性格がかわいいかった。一平ちゃんの変態的な願望に対して「無理!」と突き放すのではなく、「一平ちゃんがそんなに興奮するなら、仕方ないか・・・・・・」と、困ったように笑いながら付き合っていく。

でもそれは我慢ではない。妻自身も、その “遊び” を少しずつ面白がり始める。

撮影中、監督の溜池ゴローさんは何度も言っていた。

「こんな奥さん最高だよねぇ!」

カメラを持ちながらまるで観客みたい言う。
満面の笑みで。
自分の書いた台本なのに。

この日、ゴローさんに撮ってもらうのははじめてで、少し緊張していたが、すんなりと馴染めていった。なんか愛の塊みたいな人だったから。


食卓のシーンでは、こんなやり取りがあった。
「俺、元気なじいさんになるよ」
「一平ちゃん、おじいさんになったら可愛いおじいさんになりそう」
「え? イケジーじゃないの?」
「んー、イケジーじゃなくて、カワジー」

むずむずする会話。
「カワジー」なんて言わんやろ。

内心そう思いながら、微笑んだ。

しかしこの会話のシーンは、なぜかとても印象に残っている。きっと言っていてむずがゆくなる一方で、こういうことを言い合える夫婦って、いいなと思ったのだ。

たぶん夫婦って、家の中では、とてもくだらないことをしているんじゃないだろうか。第三者が見たら恥ずかしくなるような甘え方をして、変なあだ名で呼び合って、意味のない儀式を作って笑い合って。私は結婚したことがないし、誰かと同棲したこともないから、本当のところはわからないけれど。

夫婦というものが、そういうものだったらいいなと思う。そしてそこまで心を許せる関係を作れたら、今世はもうアガリでいいんじゃないだろうか。ちょっと大袈裟かな。


この作品を撮りながらずっと、「この夫婦は秘密の共犯者だな」と思っていた。バカなことを、一緒に本気で楽しめる人。誰しもそういう関係には惹かれるのではないだろうか。私もそういう関係には惹かれるし、過去付き合ってきた人は、そういう人たちだったと思う。

仕事で忙しいのに、USJ の年間パスポートを買って、仕事終わりに毎日のように通った。七夕の夜に、会社の先輩の家の玄関に、激しくデコった笹を飾るイタズラをした。翌日、怒られるかなと思っていたら、ガン無視をキメられて、彼と2人で一日中ソワソワした。付き合いが長くなり、しゃべることが減ってきたら、どちらかが笑うまで、お腹に油性マジックで文字を書き合った。「一番変なキスの仕方」を真剣に研究したこともあった。

全部、誰にも言えない2人だけの遊び。遊びとも思っていない。いつも真剣だったから。真剣に「オモロい」を追求していく。物理的な生産性なんてない。でも確実に心は豊かになっていた。

大人なのに、子どもみたいにはしゃげる人。損得とか、「普通はこう」を考えずに、「オモロそう」だけで動ける人。たぶん私は、そういう人と一緒にいたいと思っている。名前をつけるなら「人生の共犯者」。

昔から、定義のない「普通」ってやつに、少しだけ中指を立てられる人に憧れる癖があった。学校だったらギャルな子から目が離せなかったし、映画だったら『ゴットファーザー』が好きだ。その理由はきっと、自分がルールからはみ出られない性格だったからだと思う。そのくせ、ルールに従うのは窮屈だった。だから私がAV女優になったのは、一種、憧れを追い求めた結果なような気もしている。

ただきっと、一人でアウトローになりたいわけじゃない。誰かと一緒にアウトローをたのしみたいのだ。

だから一平ちゃんとかんなは、理想の夫婦に見えた。普通なら関係が壊れそうな性癖を、2人だけの遊びに変えていく。しかも「愛してる」を何度も口にしながら。

この「愛してる」がきっと重要な部分だ。

私はその言葉を、真剣に誰かに言ったことはない。でも言いたいし、言われたい気持ちはある。そういう人は私だけではないのではないだろうか。

この作品では「愛してる」が何度も飛び交う。それがとても良かった。やはり言葉の力は大きい。例えお芝居であっても「愛してる」と口にすれば、旦那役の一平ちゃんが愛おしく思える。逆に「愛してる」が耳に入ってきたら、嬉しいような、笑っちゃうような、なんでもできちゃう無敵な気分になるのだ。そう思うと、人生の共犯者であるこの夫婦にとって、「愛してる」は秘密の合言葉だったのかもしれない。


この作品、『背徳の寝取らせシアタールーム』は、寝取られものだ。でも私には、“人生の共犯者” みたいな夫婦の話に見えた。誰かと一緒に、くだらないことを本気で楽しめること。変態な部分も、弱い部分も、「しょうがないなあ」と笑い合えること。そういう関係は、世間から見たら少し変なのかもしれない。でも私は、そういう2人の方が、ずっと自由に見えた。

寝取られ作品なのに、思い出すのは、人を愛することの可愛さばかり。この作品を見た人が、自分にとっての「人生の共犯者」を思い出してくれたら、それだけで嬉しい。

作品は発売中。「藤かんな シアタールーム」で検索してみてほしい。


余談だけど。

撮影をしてくれた溜池ゴロー監督は、「傷つきやすい女性の為の恋愛相談室」というYouTubeをやっている。現場でこのチャンネルのことを教えてもらって、撮影終わりに見てみた。

するとどうだろう。別に恋愛で悩んでいるわけではないけれど、何本も何本も見てしまった。理由としては、まず1つに、ゴローさんの声がよかったのだと思う。現場でずっと見ていた、あのチャーミングな人柄が、そのまま声に出ていた。

そして理由の2つ目として、動画の内容も毎回すごくシンプルだからだ。きっとゴローさんの伝えたいことは、いつも同じ。
「女性のみなさん、自分を一番大切にしてください」
「誇りを持って、凛として生きてください」
するとちゃんと男性から、いや誰からも愛されるようになる。

恋愛テクニックというより、生き方の話をしている。私はゴローさんのチャンネルを見ながら「この人の思ってることは、現場でもブレてなかったな」と思った。

あの夫婦に流れていた愛は、監督自身の愛でもあったのだと思う。

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