♮01 あほう老士 南向きの土地に意見ス
我らあほう老士である。
意外にも”デキル”一級建築士でもある。
建築士会の住宅相談会というものに、
ときどき座らされる。
相談に来る人は真剣だ。
だが悩みの半分は、たいてい
家ではなく思い込み
でできている。
今日のご夫婦もそうだった。
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※※ この“あほう老士”コラボシリーズは
こちら の建築知識noteを読みやすいようにエッセイ風に書き換えています
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「この土地、南向きなんです」
主人はそう言って、
少し誇らしげに資料を広げた。
なるほど。
どうやら人は
南向きの土地を見つけると、
人生で一つ勝った気分になる
らしい。
「確かに南向きの土地は人気がありますな」
我はそう言いながら資料を見る。
南側に道路。
いわゆる“南向きの土地”だ。
「日当たりも良さそうですし」
奥方も嬉しそうにうなずく。
なるほど。
今日はどうやら
“正解の確認”に来られた
らしい。
人は、決断したあとに
誰かに背中を押してほしくなる生き物である。
だが本日は、住宅相談員という立場上、
「買った方がいいぞ」と言うわけにはいかない。
そこで我は、いつもの質問をする。
「ちなみに、周辺の状況は確認したかの?」
主人は少し考え込む。
「ええと……
南側に道路があるから、
いい土地ですよね?」
もちろん間違いではない。
南向きの土地が人気なのには理由がある。
南側が道路なら、
そこには建物が建たない。
つまり南側が開けやすい。
そのため一般的には
・リビングに日差しが入りやすい
・庭が明るい
・洗濯物が乾きやすい
といった利点がある。
だから不動産広告には
必ずと言っていいほど
誇らしげに
「南向き」
という言葉が書いてある。
どうやら日本人は、
南を向くだけで少し幸せになれるらしい。
しかし、
土地というものはそれほど単純でもない。
例えば。
南向きの土地でも、
道路の向こうがマンション用地なら
将来の日当たりは変わるかもしれない。
逆に。
北向きの土地でも
リビングと庭を南側に配置すれば
明るい家をつくることはできる。
家づくりでは
土地の向きだけが正解を決めるわけではない。
しばらく話していると、
奥方が少し安心したように言った。
「北向きの土地でも、
家は明るくできるんですね」
「条件と設計次第で、じゃがな」
我はそう答えた。
家づくりというのは不思議なもので、
土地だけを見ていると分からないことが多い。
だが、
「ここにリビングが来るかな」
「庭はどこだろう」
と想像しながら見ると、
急に土地の表情が変わる。
土地と建物は
本来、セットのものだからだ。
夫妻は資料をたたみながら顔を見合わせた。
「もう一度、土地を見てみようか」
そう言って、深く頭を下げて会場を出ていった。
外はよく晴れていた。
どうやら今日は、
南向きの午後らしい。
次回予告
次回は、土地選びで意外と見落とされがちなポイント
「道路の幅は何メートルありますか?」
というテーマで 別note(こちら)で解説します。
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実は道路の幅によって、
建てられる家の大きさが変わることもありますよ。
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