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余白をつくるという選択


歌の練習に集中するはずだった日が、
まったく違う流れへと切り替わった。

予定は崩れたのではなく、別の意志に導かれたようにも感じる。

向かった先は、クローゼットと暮らしの整理だった。

二つのクローゼットから服をすべて取り出し、大きな山をつくる。

そこに現れたのは「所有しているもの」というより、
「これまでの選択の記録」だった。

普段から小さく循環させているつもりでも、
残っているものには必ず意味がある。

だから今回は“捨てる”ではなく、
“残すものを選ぶ”作業になった。

絶対に残したいもの。

今の自分にしっくりくるもの。

手に取ったけれど、なぜか違和感があるもの。

ひとつひとつを手に取り、触れて向き合いながら、
「残す・手放す・保留」に仕分けていく。

クローゼットの中身をすべて外に出し、
空になった空間を掃除機と水拭きで整える。

それは物だけではなく、
空間の気配を整える時間でもあった。

途中で着物の整理に手をつけなかったのも、
結果的には自然な判断だった。

まだそこに触れる段階ではない。

そういう順番のようなものが、
作業を進める中で見えてくる。

大きな山から一枚ずつ取り出し、
向き合い、判断する。

迷いがあるものは一度保留へ。

だが、その保留の山は
時間を置いて再開したときには消えていた。

感覚の中では、
すでに答えが出ていたのだろう。

休憩を挟みながら約三時間。

最終的に残ったのは、
今の自分と一致するものだけだった。

これは単なる片付けではない。

選別というより、
更新に近い作業だった。

何を持つかを決めることは、
何を生きるかを決めることに近い。

余白をつくるというのは、
空っぽにすることではなく、
新しい流れが入る場所を用意することなのだと思う。

歌に向かうはずだった時間は、
結果的に「今の自分を整える」ために使われた。

そしてその整えの先に、
次の集中が入る余地が生まれている。



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