君に会うために/[透明な]シロクマ文芸部
透明な壁の向こうに彼女はいた。
僕が産まれたときからその壁はあった。
壁のこっち側のH地区、壁の向こうのA地区。
僕たちはジェスチャーや紙に字を書いて思いを伝え合った。
成人したとき向こうと会話ができるというアプリが使えるようになった。
それを使えば向こうの相手と電話ができるようになる。
初めて聞いた彼女の声は想像通りとてもかわいらしかった。
僕が壁を壊そうとしていると知った人が大きなバズーカを用意してくれた。
「これを使えば必ず破壊できる」
僕はそれを壁に向けて撃った。
だが、僕が思っていたのと違う光景がそこに広がる。
割れて砕ける壁ではなく、大きく入ったヒビと砂嵐。
「よくやってくれた」
僕にバズーカを渡した人が駆け寄ってくる。
「我々は警戒されていたから使うことができなかった。
AIの監視から俺たちは自由になったんだ」
彼はそう叫んだ。
「あの子は?」
僕は戸惑いながら聞いた。
彼は眼鏡をなおしながら言った。
「今、君がハカイしたじゃないか」
了
こちらの企画に
参加させていただきました。
小牧幸助さん
ありがとうございます。
見出しイラストはぽてさんに描いていただきました
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