【韓国の近現代文化遺産】 1.聖公会ソウル聖堂
聖公会ソウル聖堂は、徳寿宮(トクスグン)付近、英国大使館の隣にあるキリスト教会です。聖公会とは英国国教会のことで、16世紀の宗教改革の時に英国でローマ教会から分離した宗派の一つ。江華島(カンファド)を経由して1890年から済物浦(チェムルポ、現在の仁川)を中心に宣教活動を始め、ソウルではこの地が宣教の中心地となりました。
建物は1922年に着工し、1926年に竣工。設計者はイギリス人のアーサー・ディクスン(Arthur Dixon)ですが、当時は建築募金額の不足により、予定の約50%に縮小された「一の字型」で建立されたといいます。
建物は長い十字架型(ラテンクロスと言うのだそう)。ロマネスク様式を基調に、韓国の伝統様式のデザインもミックスされた、御影石と赤レンガの外壁が美しい建築です。ロマネスク様式は中世ヨーロッパの宗教建築様式で、厚い石壁に小さな窓、そして半円アーチが主な特徴。ちなみに、韓国国内でロマネスク様式の建築はこの建物が唯一の存在です。

一の字型から設計通りの十字型に増築されるまで70年もの月日が流れました。1993年に大韓聖公会管区が設立され、初代管長が「ソウル主教座聖堂」の完工をめざす建築運動を推進しますが、当時の文化財委員会の反対を受けてしまいます。
そんなある日、偶然ミサに来ていたあるイギリス人観光客がイギリスの田舎にある図書館で聖堂の設計図を見たと発言。本来の設計図が見つかったことで増築は現実のものとなり、ソウル市から許可を受けて1996年に完工したというエピソードがあります。

私が訪れたこの日、ミサが行われる聖堂に入ると、ユリ(と金魚草かな?)の甘い香りで満たされていました。ユリは純潔のシンボルで、キリスト教では聖母を象徴する花なのだそうです。
奥にはキリストのモザイクの祭壇聖画が黄金色に輝き、ステンドグラスを通した様々な色の光が聖堂内に差し込んでいて、まさに美しいの一言。このモザイク画は、イギリス人のジョージ・ジャックという人が11年もの月日をかけて完成させたとも言われています。



2階にはパイプオルガンが。音楽会も開かれるそうです。パイプオルガンの厳かな空気の流れる空間で演奏聞いていみたいですね。


鐘塔(鐘をつるした塔)へと続く階段。下は地下聖堂へと続いています。

韓国国内に残る近代建築について書かれた本に、『青春男女、100年前の世界を歩く』という一冊があります(私は著者チェ・イェソンさんの大ファンです)。
https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000001592931

その本によると、この聖公会聖堂の倉庫で、古い「婚配聖事帳(聖堂で結婚式を挙げた夫婦の婚姻を証明するための記録帳)」を著者の友人が見る機会があったそうです。すると、一番最初のページに記録されていた夫婦が「50代のヨーロッパ出身の男性」と「20代の日本人女性」の名前だったので、とても驚いたというエピソードが綴られています。
その記録物はもともと済物浦聖堂で使われていたもので、二人の名前は「トーマス」と「ユキ」。1899年3月に済物浦聖堂で式を挙げたという記録がはっきりと残っているそうです。ユキさんという女性は、一体どんな人生をこの朝鮮の地で過ごしたのでしょうか……うーん、とっても気になります!イェソンさんも一生懸命に調べたそうですが、結局わからずじまいだったとのこと。
地下の倉庫にいつでも入れるのかは(すみません、ノーチェックなのですが)、もし機会があれば、いつかその貴重な記録物をこの目で直に見てみたいと思います。

(2012.7.11)
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