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ミイラ取りはミイラになれ/ショートストーリー

吉岡は子供の頃から優しくて正義感の強い子だった。そうしてとても自然に警察官という職業に就いた。

警察という組織は厳しいところだった。
非常に厳格な階級組織であり、序列が絶対視される組織だ。
不条理と思われる理由で上司から叱責されることも多かった。
現場の判断より、紙の上の階級が優先される日々だった。
吉岡は必死になって警察という組織の理屈を身体に染み込ませた。

何年かが経った頃、吉岡はとある詐欺事件を担当することになった。その頃には吉岡も警察官として一人前になっていた。
吉岡は重要な任務を負った。詐欺グループ内部に紛れ込み内偵をする任務だ。

かくして潜入は成功した。

詐欺グループは、厳しいところだった。
犯罪グループなので当たり前と言えば当たり前だが、思った以上に組織化されていて、厳しい序列社会だった。上からの指示には逆らえない。逆らえば命が危ない。

ただ、吉岡は驚くほど簡単にそれに順応できた。上からの指示に忠実に応えるという作業はこれまでと何も変わらないからだ。

詐欺グループは月給制だった。完全にビジネス集団として組織化されているのだ。

吉岡にも初めての給与が支払われた。

警察官としての給与を大きく上回る金額だった。
たしかに吉岡は仕事ができた。

吉岡の心は震えていた。
これは動揺というより興奮に近かった。

——こんなに評価されるのは、初めてだった。

警察では、正しくあることは「義務」だった。だがここでは、結果を出すことは「栄光」だった。
初めて支払われた報酬を手に、吉岡は震えた。それは、彼がそれまでの人生で捧げてきた「正義」に一度も支払われることのなかった、高純度の評価だった。


かくして、警察の、詐欺グループに対する潜入作戦は失敗に終わった。

そして同時に、1人の警察官が死に、1人の優秀な「ミイラ」が誕生したのだ。



アマノ文筆クラブさんの企画に参加させていただきたく創作してみました。

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