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恋の指差呼称 /ショートストーリー

いつでも指差呼称を怠らない、
安全管理者、田中。

家を出る時から、彼はすでに安全管理者だ。
スマホ、よし!
鍵、よし!
財布、よし!
定期、よし!

職場ではもちろん、徹底する。
右、よし!
左、よし!
記名、よし!
安全装置、よし!

デートの時だって、ぬかりはない。
鼻毛、よし!
口臭、よし!
靴の汚れ、なし!
移動ルート、よし!

そしていよいよ、告白の瞬間を迎える。
夕暮れ、よし!
距離感、よし!
雰囲気、不明!
心拍数、異常値!

「そういうところが無理。確認不足」
フラれた。散々だった。

トボトボと帰る道すがら、
田中は自分の人生の安全確認を始めていた。
収入、並!
パートナー、なし!
将来の夢、視界不良!
精神の安定、未知数!
希望、不備あり!

どれだけ確認しても、ミスは発生する。
しかし田中は安全管理者だ。ミスは起こることを前提に、次の対策を立てる。

安全とは、確認の積み重ねで作るものだ。

そうか。
田中は安全管理メモを取り出し、新たな項目を追加した。
ーー告白のリスク対策メモーー
「僕の人生のダブルチェック役を務めてくれませんか?」


実直な田中の次なる恋が成就することを、私は影ながら祈っている。
ただし、その告白文自体に、事前のリスクアセスメント(危険性評価)が必要なことは言うまでもない。


こちらの企画に参加させていただきます。


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