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To your dark… 〜そして牛丼が運ばれてくる〜 /ショートストーリー

金髪の青年は、船のデッキでガイドブックを読みながら、日本で最初に食べるものを牛丼に決めた。

「ギュウドン、ナミモリ」
予習もバッチリだった。

下船した青年は早速、期待に胸を膨らませながら港近くの牛丼屋に向かった。

ちょうど、日本人らしき男性客3名と同時に青年も入店した。
予習はバッチリだったが、日本人が注文する様子を間近で見られるのは青年にとって安心感につながった。

最初の客は席に着くなり、いかにも慣れた様子で注文した。
「牛丼、並、ネギ多めで」

「…what?
ギュウドン、ナミ、
……naked all Mayday?」
青年は少し混乱した。
日本の文化はある程度勉強してきたつもりだった。八百万の神、食べ物を大切にする国民性。
しかし、メーデーにみんな裸になるという情報は無かった。しかも牛丼を注文する時の話だ…

何か宗教的なまじないの一種だろうか…?

そんな風に理解しながら2人目の注文に聞き耳を立てた。

「牛丼、大盛り、ネギ多めで」

…OK、OK。大盛りは知っている。ビッグサイズだ。
そしてやはり「naked all Mayday」
これはきっと東洋の謎の呪文だ。
食べ物、特に牛肉という“イノチヲイタダク”ということに対しての宗教的な詩なのだ。
注文する時にはそれを唱える必要があるのだ。

青年は日本という国に敬意を払いたかった。
たがらこそ、作法を間違えたくなかった。

そして3人目の注文だ。

「えーっと、牛丼、並盛り
To your dark… naked all Mayday…」

青年は目を見開きながらも、サッとメモを取った。

君の闇へ。メーデーには皆、裸になる。

正直、意味としては理解できなかったが、この前衛的な詩が能天気なもので無いことは分かる。
何せ“君の闇へ”だ。
おそらくは、これが正式な詩なのだろう。
前の2人は少し簡略化されたものを唱えたのだ、きっとそうだ。

そして青年の番がやって来た。
緊張しながらも神妙な面持ちで告げた。
「ギュウドン、ナミモリ
…To your dark… naked all Mayday…」

「は〜い!並、つゆだくネギ多め1つですね!少々お待ちくださ〜い」

よかった…
日本という神秘の国に受け入れられた…
青年は晴れ晴れとした気持ちで、ガイドブックで見たものより少しウェットな牛丼を味わった。



はらとけいさんの「せりふ三題噺」に懲りずに参加してみます。
今回は前回に比べれば正攻法でいけたかな、と思っています。深さはないですけどね 笑

あと、金髪青年の日本旅行がすごく良いものになってくれることを心から願っています。

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