「緊張しなくなったら営業を辞める」と言い続けた私が見ている新しい景色
先週、営業仲間のWさんと飲んでいた時の話です。
「お前さ、最近商談前に緊張する?」と聞かれて、
正直、答えに詰まりました。
私はずっと、商談前に緊張しなくなったら営業を辞める
と公言してきました。
契約しても嬉しくなくなったら、
その時点で引退するとも言い続けてきました。
緊張感こそがプロの証で、契約後の高揚感こそがこの仕事の燃料だと、
信じて疑っていなかったからです。
ところが一年ほど前から、飛び込みをやっても、新規商談に向かっても、
まったく緊張しなくなったんですよね。
「俺、もう情熱が枯れたのかも」と。
事実、契約が決まっても以前のようにガッツポーズが出ない。
むしろ「あ、決まりましたね」くらいの感覚で、
自分でも怖くなったほどです。
でも不思議なことに、受注率はどんどん上がっているんです。
今日の飛び込みも、心拍数が上がる感覚すらないまま、最高の結果。
私の信念、もしかして根本から間違っていたんじゃないか?
そう思い始めているところです。
若い頃、商談前は心臓がバクバクして、
契約が取れたら飛び上がって喜んでいた。
でも気づくと、その「揺れ」が年々小さくなっている。
ベテラン営業の方々と話していると、似たような告白をよく聞きます。
「最近、ワクワクしないんですよ」
「淡々と仕事してる自分が怖いです」と。
多くの方が、これを「燃え尽きの兆候」だと解釈されているようです。
ですが、ある研究では、
トップセールスほど「感情の振れ幅が小さい」傾向がある
と報告されています。
喜怒哀楽の起伏ではなく、安定した集中状態。
さらにハーバード大学の調査では、商談前の心拍数が低い営業職ほど、
相手の非言語サインを正確に読み取れるという結果も出ているんです。
緊張しないことは衰えではなく、進化のサインかもしれない、
ということです。
ここで一つ、辛口なことを言わせてください。
ベテラン営業の中には「緊張感を失ったら終わり」という
呪縛に縛られている人が、マジで多いです。私自身もそうでした。
でも、その思い込みって、若手時代に上司から刷り込まれた
価値観に過ぎなかったりするんですよね。
「緊張してるか?してないなら気合が足りん」
と昭和の根性論で叱責された世代ほど、この呪縛は深く根を張っています。
緊張は、未熟さの裏返しであることがほとんどです。
経験不足、準備不足、自信不足。
これらが解消されれば、緊張は自然と消えていきます。
それを「情熱」と取り違えていたら、ベテランほど苦しくなる一方です。
私も若い頃、緊張感を保つために、
わざと商談前に「絶対決めなきゃ」と自分を追い込んでいました。
結果、声が上ずって、相手の話を半分も聞けていなかった。
失注の山を築いた時期があります。
今振り返ると、あの緊張は努力ではなく、ただのノイズだったんですよね。
問題は、緊張がなくなった自分を「ダメになった」と勘違いして、
わざわざストレスを上塗りしてしまうこと。
まるで、すでに泳げる人が浮き輪を必死に握りしめているような
状態なんです。手放した方が、ずっと速く、しかも遠くまで泳げるのに、
自ら推進力を捨ててしまう。
これは本当にもったいない話です。
私が今、見ている景色は「達観した営業」の世界です。
これは、無感動でも無関心でもありません。
達観した営業とは、結果に執着しない代わりに、
目の前の相手に深く集中できる状態のことです。
受注しても淡々、失注しても淡々。
だからこそ、お客様の言葉を一言も聞き逃さない。
商談を「勝ち負け」ではなく「対話」として扱える。
これ、口で言うのは簡単ですが、
たどり着くまでには相当の場数が必要なんです。
ここに到達するための具体的なコツを、私なりにお伝えします。
商談前に「今日決まらなくてもいい」
と自分に言い聞かせること。
逆説的ですが、これで決定率が上がります。
マッキンゼーがB2B営業を分析したレポートでも、
結果へのプレッシャーを下げた営業職ほど、
長期的な顧客生涯価値が27%高いという結果が出ているんです。
これ、けっこう驚きませんか?
そして、喜びの置き場所を
「契約」から「関係構築」に移すこと。
契約は通過点で、本番はその後です。
これに気づいた瞬間、契約後に「やった!」と叫ばなくなります。
代わりに「さて、ここからどう貢献するか」と静かに次を見据える。
これが、達観の入り口だと思っています。
もう一つだけ。
商談中に自分の「呼吸」を意識する習慣をつけてみてください。
深く、ゆっくり吐く。
たったこれだけで、相手の言葉が驚くほどクリアに
入ってくるようになります。
私の同僚もこれを始めて、半年で受注率が1.4倍になりました。
達観は、引退の合図ではありません。
むしろ、ベテラン営業だからこそ到達できる、
新しいスタートラインなんです。
ぶっちゃけ、緊張しなくなった自分を歓迎していい。
それは、あなたが営業として一段階、上の階に登った証拠ですから。

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