データサイエンスのサイクルPPDAC【データサイエンス発展】
はじめに
データサイエンスの業務では「データを分析すること」が目的ではありません。
本来の目的は 問題を解決すること です。
しかし実務ではしばしば、
「とりあえずデータを見てみる」
「とりあえず機械学習を使う」
という流れになり、問題の本質と関係のない分析が行われることがあります。
このような状況を防ぐために、統計学やデータ分析の分野では
PPDACサイクルという考え方が用いられます。
PPDACとは、次の5つの段階で構成されるデータ分析の基本プロセスです。
Problem
Plan
Data
Analysis
Conclusion
この順番で進めることで、分析が目的化することを防ぎ、
「問題解決につながる分析」を行うことができます。
この記事では、それぞれの段階の意味と、実際のデータサイエンス業務でどのように使われるのかを解説します。
1. Problem(問題定義)
PPDACの最初のステップは Problem(問題定義) です。
ここでは、解決すべき課題を明確にします。
この段階ではまだデータを見る必要はありません。重要なのは、何を解決したいのかを言語化することです。
例えばECサイトで売上が落ちている場合を考えます。
「売上が落ちている」という状態だけでは分析の対象が曖昧であり、何を調べればよいのかが分かりません。
売上は一般的に次の要素で構成されています。
売上 =
訪問者数 × 購入率 × 客単価
したがって、売上が落ちている原因としては
訪問者数が減っている可能性
購入率が低下している可能性
客単価が下がっている可能性
などが考えられます。
この段階で行うべきことは、
「売上が落ちている」という曖昧な問題を、
「購入率低下の原因を特定する」
のように、分析可能な問題へと具体化することです。
2. Plan(分析計画)
問題が定義されたら、次に Plan(分析計画) を立てます。
ここでは、
どのデータを使うのか
どの指標を見るのか
どの分析方法を使うのか
を決めます。
例えば先ほどの例で、問題が「購入率低下の原因の特定」であった場合、次のような分析計画が考えられます。
まず購入率を計算する指標を定義します。
購入率 = 購入人数 ÷ 訪問人数
次に、この購入率をいくつかの観点から比較します。
流入チャネルごとの購入率
デバイスごとの購入率
ユーザー年齢ごとの購入率
地域ごとの購入率
このように「どの切り口で分析するのか」を事前に決めることで、
データ分析が無秩序に広がることを防ぐことができます。
3. Data(データ収集と整形)
分析計画が決まったら、次に必要なデータを集めます。
この段階が Data(データ収集) です。
実務では、この工程が最も時間を使うことが多く、
プロジェクト全体の70〜80%の作業時間を占めることも珍しくありません。
例えばECサイトの購入率を分析する場合、次のようなデータが必要になります。
ユーザーID
訪問日時
流入元
使用デバイス
購入有無
これらのデータは多くの場合、複数のシステムに分散して保存されています。
そのため実務では
SQLによるデータ抽出
データの結合
欠損値処理
集計テーブル作成
といった作業が必要になります。
データサイエンスの仕事は「分析」よりも、
データを分析可能な形に整える作業の方が多いと言われる理由はここにあります。
4. Analysis(分析)
データの準備ができたら、次に Analysis(分析) を行います。
ここでは実際に
統計分析
機械学習
データ可視化
などの手法を用いて、問題の原因を探ります。
例えば、流入チャネルごとの購入率を比較すると次のような結果が得られたとします。
広告流入の購入率は約2%
検索流入の購入率は約5%
SNS流入の購入率は約1%
この結果から、
SNS経由のユーザーの購入率が特に低い
という事実が分かります。
さらに詳細な分析として、
SNSユーザーの年齢層
SNSユーザーの閲覧商品
SNSユーザーの平均購入金額
などを分析することで、原因の仮説を作ることができます。
5. Conclusion(結論と意思決定)
最後の段階が Conclusion(結論) です。
分析結果を整理し、ビジネス上の意思決定につなげます。
先ほどの例で、SNSユーザーの購入率が低いことが分かったとします。
さらに分析を進めた結果、SNSユーザーの多くが若年層であり、現在の商品の価格帯が高いことが原因である可能性が見えてきたとします。
この場合、結論として考えられる施策は次のようになります。
SNS向けの低価格商品の導入
SNS限定クーポンの配布
若年層向けの広告クリエイティブの変更
重要なのは、分析結果をそのまま提示することではなく、
「次に何をするべきか」という意思決定につなげることです。
実務におけるPPDACの例(物流業務)
PPDACはあらゆるデータ分析に適用できます。
ここでは物流業務の例を考えてみます。
ある倉庫で出荷作業の時間が長くなっているとします。
まずProblemの段階では、「ピッキング作業時間を短縮する」という問題を定義します。
次にPlanの段階では、作業時間を工程別に分析することや、作業員ごとの生産性を比較すること、商品配置と作業時間の関係を調べることなどを分析計画として設定します。
Dataの段階では、作業ログや商品ロケーション情報、出荷データなどを収集し、分析用のデータセットを作成します。
Analysisの段階では、棚ごとの平均ピッキング時間を計算した結果、特定の棚で作業時間が極端に長いことが判明するかもしれません。
最後にConclusionの段階では、高頻度商品を作業しやすい棚に移動するなどの改善施策を実施します。
このようにPPDACは、
問題の整理から意思決定までを一つの流れとして整理するためのフレームワークです。
まとめ
PPDACはデータ分析のプロセスを整理した基本フレームワークであり、
Problem
Plan
Data
Analysis
Conclusion
の5つの段階から構成されています。
このフレームワークの最も重要なポイントは、
分析の前に問題定義を行うことです。
問題を明確にせずに分析を始めると、分析結果が意思決定につながらない可能性があります。
PPDACは、データ分析を単なる技術作業ではなく、
問題解決のプロセスとして進めるための基本的な考え方と言えるでしょう。
