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inagakijunya
【散文詩】祭り囃子は遠音に
祭提灯仄明かり、屯する祭半纏の若者達、居並ぶ屋台、食べ物の綯い交ぜの匂いのあわい。
宵も間近に息巻く発電機の唸りもうらぶれた商店街に風情を添える。
裏通り川沿い、まばらな人通り。
夕立ちの置き土産の晩涼を追い、姉妹が連れ立ち、そぞろ歩く幼い歩幅。
アイスクリームのリヤカー販売の女に呼び止められ、乳呑児をあずけられた。というより、押しつけられた。
我が子を預け、表通りの喧騒へと今や売りどきだと気炎も棚引くベルを鳴らして、小さなリヤカーを押し歩く。
化繊の絞り帯をサラサラ、薄情な音をなびかせて…
後ろ姿が金魚の尾びれのように揺らして姉は他人のふりして人混みへと去りゆく。
晩夏の残照が赤ん坊とひとつになった置いてきぼりの影法師を映す。
深い海の底でまどろみに漂うよう。重みと汗ばむ柔らかな乳の匂いの寝息に親密さを覚え、腕に抱きしめた。
せまる夕闇の波が惜しむ夏の日を暮色で染めてゆく。
乏しい街灯のもとで待ち草臥れ、蹲る幼子を抱きかかえた小さな背を幽かに照らし出す。
遠くハロゲンライトが祭りの夜空を照らし、お囃子は遠音に聴こえた。
