『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【53】(2025/8/30)
驚くべきマーベルの山
本書『マーベル・コミックのすべて』において、著者ダグラス・ウォークは、2万7000冊以上のマーベル作品を読み通し、マーベル・コミックの全貌を突き止めようとする。特に1961年から始まるマーベル・コミックの黄金時代(スタン・リーとジャック・カービーが『ファンタスティック・フォー』を発表し、以降、スパイダーマン、Ⅹ-MEN、ハルク、アイアンマンなど人気キャラクターが次々と誕生する)から2017年の『マーベル・レガシー』に至るまでの作品を細部まで読み込み、マーベル・ユニバースをひとつの巨大なストーリーとしてとらえ直している。
大変幸運なことに、『マーベル・コミックのすべて』(作品社)の校了後、著者ダグラス・ウォークにオンラインでお話を聞かせてもらった。
今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、ダグラス・ウォークのインタビューを通じて、マーベル・コミックの魅力について考えてみたい。
▼『マーベル・コミックのすべて』公式プロモーション・ビデオ
https://youtube.com/shorts/fKcSpT4j458
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先月行ったオンライン・インタビューで、「……およそ2万7000冊ものマーベル・コミックをどのように読まれたのか、何がきっかけでこの壮大なプロジェクトに取り組まれたのか、簡単にお話しいただけますか?」というわたしの質問に、著者ダグラス・ウォークは答えている。
UESUGI: As already mentioned in Chapter 1, could you briefly share with readers who haven’t read the book yet the process and main motivation behind reading approximately 27,000 Marvel comics for this project?
上杉 『マーベル・コミックのすべて』第1章でも触れられていますが、本書をまだ読んでいない読者のために、本書執筆にあたっておよそ2万7000冊ものマーベル・コミックをどのように読まれたのか、何がきっかけでこの壮大なプロジェクトに取り組まれたのか、簡単にお話しいただけますか?
DOUGLAS WOLK: The idea came about when my son, who was then about 10 or 12 years old, decided that he wanted to read every Marvel comic book and I thought, "Okay, this will be a good way for us to bond for a couple weeks. He's only going to be interested in this for a couple weeks." Well, he stayed interested for longer than that and we started reading through a bunch of old comics together and I started thinking, "Wow, these really are one big story. I wonder what would happen if I looked at the whole story and what that whole big story would look like. I wonder if there's a book in this."
ダグラス・ウォーク 当時10歳か12歳だった息子スターリングが、マーベルのコミックを全部読みたい、と言い出しまして、本書執筆のアイデアが生まれました。わたしは「まあ、親子で2週間くらい楽しめればいいだろう。どうせこの子もそれくらいすればあきるから」くらいに考えていたんです。ところがスターリングは2週間を過ぎてもマーベル・コミックにずっと興味を持っていてくれて、わたしたちは一緒に昔のコミックをたくさん読んでみることにしました。そこではわたしは思いました。「わあ、マーベル・コミックは本当にひとつの大きな物語になっている。この物語の全体を見渡したら、はたして何が見えてくるだろうか? 本が書けるんじゃないかな」
さらに『マーベル・コミックのすべて』には収録されていない、この貴重な意見も聞き出すことができた。
上杉 18章「偉大なる破壊者」に、「ダーク・レイン」のようなシリーズに見られる権威主義への恐れについて書かれています。トランプ政権下でさまざまな制限が突きつけられる現在の状況を考えると、マーベル・コミックも同じように制約を受けたり、自己検閲を余儀なくされたりすると思われますか?
ウォーク いい質問です。ある意味恐ろしい現在の政治状況に直接反応しているコミックは、まだあまり出版されていないかもしれません。というのは、コミックはかなり前から企画、制作されますし、長期的なプロットが何年も前から動いていますし、中期的な計画も何か月も前から進行しています。
それでも、現在アメリカ版マーベル・コミックで連載中の『ワン・ワールド・アンダー・ドゥーム』(ひとつの世界、ドゥームのもとに)には、今の時代に対する反応がやや見て取れるように思います。『ワン・ワールド・アンダー・ドゥーム』はドクター・ドゥームが権力をつかみ、すべてを掌握して自分の思いどおりの世界を作ろうとする物語です。
どうなるかはまだわかりませんが、ドゥームが統一した世界は、現在のアメリカ合衆国よりもずっとユートピアに近いものとして描かれていますので、わたしなどは、ドクター・ドゥームが作った世界のほうが、今のアメリカよりもましじゃないか、と感じてしまいます。これはかなりまずいことですよね。
ダグラス・ウォーカーがマーベル・コミックに対する思いをたっぷり語ってくれたインタビュー、ぜひご覧いただきたい。
https://youtu.be/uiiCZK-aH7A
英語はこちらで読める。
https://ameblo.jp/getupenglish/entry-12923030428.html
ダグラス・ウォーク『マーベル・コミックのすべて』(上杉 隼人訳、作品社)
上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター、通訳、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書に「スター・ウォーズ」シリーズ、『アベンジャーズ エンドゲーム』『アベンジャーズインフィニティ・ウオー』(いずれも講談社)、プリティ・チバー『スパイダーマン ソーシャル・ジレンマ』『スパイダーマン バッド・コネクション』(Gakken)、『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)、『STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』(グラフィック社)、チャーリー&ステファニー・ウェッツェル『MARVEL 倒産から逆転 No.1 となった映画会社の知られざる秘密』(すばる舎)、フランク・ロイド・ライト『浮世絵のみかた』(作品社)、ヴィクトリア・ロイド= バーロウ『鳥の心臓の夏』(朝日新聞出版)ほか、日英翻訳をあわせて100 冊以上。スター・ウォーズ、マーベル、ディズニー関連の翻訳書多数。
