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土曜の午後、レゴキャンピングカーで。

土曜日。仕事を半日で終え、妹、姪と待ち合わせてイオンへ行く。

お昼はカジュアルなイタリアンに入った。
どれにしよっか、どれも美味しそう、と言いながらメニューを眺める。
「蒸し鶏と胡桃のジェノベーゼパスタ」が美味しそう。
「私、蒸し鶏とゴマ… 」と言いかけて、止まる。
   

 
     胡桃


これゴマじゃないよな。
なんだっけ…
一応頭に候補は浮かんだけれど、念のためスマホでLINE画面に「くるみ」と打ち込んで確認した。
先月「鶏白湯(とりぱいたん)」を「鶏白湯(とりさゆ)」と言ってしまったばかりなので、もうミスは許されない。
妹は、「牛ひれ肉のカットステーキ」の120g、180g、240gで悩んでいる。
注文を聞きにきた若い女性スタッフに「女性がちょうどいい量ってどれですかね」と聞くと、無言で首だけ右に傾けられた。
わからない、という合図らしい。
結局、妹はラザニアにした。
私の分のオーダーも伝えようとしてくれて、「蒸し鶏と」まで言って止まった。おまえもか。
横から私が「ジェノベーゼを」と付け加えた。

女性がご注文を繰り返してくれたけれど、マスク越しにくぐもった声は、私までは届かない。
私は右耳が聞こえない。
でも妹も姪も身を乗り出して彼女の声を聞き取ろうとしていたので、私のせいだけでもないらしい。
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」ぽいことを(聞こえないけど)小声で言われ、
「はい。たぶん」と妹も小声で答えていた。(博打)


姪は今月で9歳になる。
今日はその誕生日プレゼント探し。
「おばちゃんに買ってもらうものはもう決めてるの」
声を弾ませながら、おもちゃ売り場へ向かう。
レゴブロックが欲しいらしい。
いちいち値札を指で追いながら
「いち、じゅう、ひゃく、にせんえん。これにする!」
「あ、でも待って、いち、じゅう、ひゃく、せんきゅうひゃく。こっちもかわいい!」
とはしゃぐ。

おい待て。

「メイちゃん。値段を無視して、一番欲しいのはどれ?」と聞くと、
「えっ…」と一瞬ためらってから、「これ」と1万円のでっかい箱を指さした。
妹によれば、他の親戚の人へのリクエストは値札なんて気にせず、好きなものを選んだらしい。

そういや前に一緒にコンビニでお菓子を買おうとしたときも、
「ねえ、コンビニは高いよ?…ママに買ってもらお?」って言われた。

3人ではま寿司に行ったときも、私が財布を出そうとしたら止められて、「ここは、ママが」と言われた。

なんか私、小3女児に心配されてるっぽいんですけど
おまえのママこそ無職だかんな?

その後吟味を重ね、彼女はキャンピングカーのレゴを選んだ。
「こっちのマリオの方がかわいくない?」
「ロボットもかっこいい」
と、つい口を出してしまう。
ああこれが所謂ランドセル論争のやつか、とはっとする。
ピンクじゃなくたって、ブルーだって茶色だって、何だっていいのにね。

「メイちゃんはこれがいいの!マリオは嫌い!」

ブチギレられた。
自分の「好き」を物怖じせずに好きって言える子で頼もしい。
自分の「嫌い」を理解していることも強みだよ。
(おばちゃんはね、実は「好き」より「嫌い」を語る方が好きなんだ。)


家に帰ると、メイちゃんはさっそくレゴ製作にかかる。
YouTubeとスマホゲーム以外で、はじめて見せる集中力だった。
鬼気迫る顔でパーツを組み立てていく。

やることがないので、妹が図書館で借りてきたという漫画を読んだ。
不登校になった娘と母の戦いの記録だった。
重いテーマを、やわらかいイラストで描いている。

「みにくいアヒルの子って、本当は美しい白鳥じゃなくてアヒルになりたかったんだよね?私もみんなと同じアヒルがいい」

不意打ちの一言に、いきなり涙腺が崩壊した。
年を取ると涙腺がバカになる。


「最近インディードばっかり見てる」と妹が言う。
2年のブランクを経て、ついに再就職に動き出したらしい。
「パートで、午前中だけで、土日祝は休みがいい」
「いい働き方だね」
「でももう空想の中でけっこう働いて、疲れちゃった」
「うん?」
「こないだも、すんごい嫌なおばさんの客がいてさ。バトルよ。あーもうここは無理だわー、めんどくせー、辞めよー、って。接客は心身削られる」
「大変だったね、時給も出ないのに」
「ほんとだよ」
何の話だよ。


メイちゃんの気迫がすごい。
ちょっとゴンさんに見えてきた。
チート念能力ばりに、みるみるキャンピングカーが仕上がっていく。

ゴンさん

というか、レゴブロックかわいいな。
私も欲しい。
「大人でも好きな人は好きよね」と妹も言う。
「これ、レゴ好きにもキャンプ好きにも刺さるんじゃない?」と私。
「キャンプ好きは関係なくない?」
「でもキャンプ好きな人って、キャンプ好きな自分が好きじゃん?(偏見)」
「そっか、刺さるか。そういう人はキャンピングカーのレゴも欲しいね(偏見被せ)」
「私の部屋、半年後にはレゴだらけになってるかもしれない」と言うと
「それはないでしょ」と妹は笑った。

けれど彼女は知らない。
私の部屋が、すでにフィギュアであふれていることを。
(半年前からクレーンゲームに熱狂)

おととい増員されたばかりのゴジラとガメラとイケメン



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