4πr²ぶん、きみに落ちる。
コバルト文庫小説に挑戦してみました★
妄想炸裂!
(もはや創作大賞のやつ推敲する気なんて消え失せている)
(なんや、「あらすじ」て。めんどくさー)
(いずれやるけどー)
☆彡☆彡☆彡
小3の音楽の時間。
後ろの席の男の子のしかめっ面が怖くて、最後まで一度も振り返れなかった。
リコーダー、いまでもトラウマ。
……は、ちょっと言い過ぎか。
とにかく、それが、シノモリの最初の記憶。
中1の「少年自然の家」。
1組の男子が、メグちゃんと写真を撮りたいって言ってきた。
メグちゃんは、「え~」って少しだけ困った顔をして、
「ユウちゃんも一緒ならいいよ」と言った。
は?
いや待って。なんで私。
それ、どう考えても“端っこ担当”のやつじゃん。あとでトリミングされる前提の。
しかも絶対、顔の大きさとか比べられるやつ。
無理。無理無理。
断固拒否した。
1組の男子に、ちょっとだけ恨まれた気がする。完全に逆恨みだけど。
それが、シノモリの2番目の記憶。
中3のクラス替えで、シノモリと同じクラスになった。
スクールカーストの下の方でひっそり生きてる私は、
ヤンキー筆頭の彼の視界に入らないよう、なるべく気配を消して生活していたのに。
ある日、やらかした。
美穂ちゃんに向かって投げたつもりのギャグが、
なぜかシノモリに直撃した。
終わった、と思った。
シノモリは一瞬ぽかんとして、
それから、腹を抱えて笑った。
あれ。
笑うと、こんな顔なんだ。
それが、3番目の記憶。
そして、いま。中3の夏。
シノモリの記憶は多すぎて、もう何番目かなんて、わからない。
「いちのー、2!」
「いちのー、ゼロ。はい、あがりー」
「くそっ」
美穂ちゃんと喋ってる後ろで、シノモリとおっくんが、ずっと指の数当てるやつをやっている。
「関谷、声でかいのよ。うるせえ。ちょっと黙ってて」
シノモリが言う。
おっくんがポケットから10円を出す。
休み時間、ふたりはいつも賭けゲームをしている。
ゴールは売店の焼きそばパン。
「うるさくないし。静かだし」
「じゃあさ、一日黙っていられる?」
「いられる」
「千円賭けよ。関谷が一日声出さずに過ごせたら、千円やるわ」
「授業中に当てられたら?」
「それはノーカンとします」
「オッケー」
翌日、私は本当に、一日中、ただの一度も声を発しなかった。
休み時間の女子とのお喋りも、筆談でやり切った。
そして、放課後。
(あ・た・し! しゃ・べ・っ・て・な・い!)
(せ・ん・え・ん!)
身振り手振りで訴える私に、シノモリは言い放った。
「おまえ、校歌歌ってたじゃん。俺の勝ち。はい千円」
「あれは、口パクでしたー!」
「はい、いま喋った。俺の勝ち」
「なにそれ!ずるい!」
そこから、シノモリを無視した。
シノモリも、露骨に不機嫌になって、こっちを無視してきた。
一週間。
「いちのー、4!」
「4て何よ。もう3しか残ってないじゃん」
私が笑う。
「あっ」
おっくんは、わざとらしく「しまった」顔をする。
女子と10円を賭けるとき、おっくんはナチュラルに優しい。
視界の端で、シノモリがこっちに向かってくるのが見えた。
気づかないふりを、する。
不機嫌そうに顔を歪ませたシノモリが近づいてきて、大きく振りかぶって、ぶん、と何かを投げつけてきた。
それは、私のおでこに当たって、跳ねて、机に落ちた。
くしゃくしゃに丸められた、千円札だった。
「おまえ、なんなの。黙ってても、うるさいんだけど」
ああ。さすが野球部エース。
コントロールがいい。
心臓がバクバクするのを隠しながら、「いらないし」と千円札を机の端に寄せる。
シノモリが、それを私の方に突き返す。
戻す。
また戻される。
「そういうことでしたら、ボクが」
行ったり来たりする千円札を、おっくんが掴んで、ポケットにしまうふりをしたので、ふたりで、めっちゃ笑った。
秋。
別に興味ないけどなんとなく、を装って。
シノモリの志望校を聞き出した。
「H高」
うそでしょ?
そんな、ばかな。
なんで私と一緒なの。
学力違い過ぎるんですけど。
「俺、野球推薦なの」
とシノモリは言った。
「H高の監督が俺んちきた。でも頼むから0点だけは勘弁してね、って頼み込まれた」
「それ、ヤバイじゃん」
笑う。
「俺がおまえを甲子園に連れてってやるよ」
「どこのタッちゃんだよ」
嬉しくて、笑った。
卒業前に、シノモリにサイン帳を渡した。
さらさらとその場で短い言葉を書いて、はい、と返された。
「愛してるよ、ゆう子。きみは僕の太陽だ」
ああ、こいつは、ほんとに。
「ゆう」くらい漢字で書いてよ。
高1。春。
11クラスもあるのに、シノモリと同じクラスになった。
何教かわかんないけど入信してもいいくらい神様に感謝した。
でも、同じクラスにメグちゃんもいた。
やっぱ神様信じるのやめよ、と思った。
ヤンキー臭がダダ洩れのシノモリは、クラスの中で少し浮いていた。
でも、バレー部の高瀬君とだけは、よく一緒にいた。
ちょっとおっくんに似た、やわらかい人。
クラスの女子に「誰がいい?」って聞かれたら、
「高瀬君」って答えるようにしていた。
メグちゃんには「はいはい」って言われた。
「シノモリが怒っちゃうよー?」って。
「シノモリは、メグちゃんのじゃん」
私がからかうように笑うと、
「いつの話してんのよ」
とメグちゃんは心底嫌そうに言った。
体力テストで、男子が100メートルを走るところだった。
「高瀬君めっちゃ速いらしいよ」
女子が騒ぐ。
「へー」
適当に相槌を打つ。
「あ、次、高瀬君とシノモリ君だ」
女子がわっと集まる。
見てろよ。
笛が鳴る。
ふたりが同時にスタートする。
ほら、見ろ。
シノモリがぐんぐん引き離す。
舐めんなよ。
短距離も長距離も、うちの中学でぶっちぎりだったんだから。
えー!シノモリ君すごくない!?
陸上部じゃん!
タイムが発表されて、女子が騒ぐ。
見たか。
ただのヤンキーじゃないんだってば。
知らない女子に呼び出された。
校則違反の、茶髪。リップ。美白。
美白は校則違反じゃないけど。
「シノモリ君とつきあってるの?」
「つきあってないです」と、なぜか敬語で答えてしまった。
「そっかあ、じゃあいいの。ごめんね」
彼女は、ばいばーい、と言って去っていった。
「いまの、女クラの子じゃん」
メグちゃんが言う。
「うん」
“女クラ”。
うちの学校は女子比率が圧倒的に多くて、1クラスだけ女子クラスがある。
そのクラスの女子は、休み時間になるとうちのクラスの男子をのぞきに来ては、声援を送る。ちょっと怖い。
怖いし、綺麗な人だったな。
高瀬君と、図書委員になった。
クラス全員に読ませる本を一冊、選ばなければならない。
この中から選ぶよう指示されたダンボールの山を、探る。
「小説なんて、誰も読まないでしょ」
「だね」
「これでよくね?」
高瀬君が選んだのは、若者の性を取り扱ったノンフィクションだった。
「薄いし」
「いいね。これなら男子もめっちゃ読むわ。チョイスのセンス」
よし、と高瀬君がダンボールを抱えて、立ち上がる。
「高瀬君って、身長何センチ?」
「181」
「うらやましい」
「高すぎても不便だよ。だって俺、時々関谷さん見えないし」
「やかましわw」
ふっ、と高瀬君が笑う。
「っていうか、マジメにバレーやろうと思ったら、181なんて小さいし」
「そっか」
「……ねえ、なんで高瀬君は彼女作らないの?」
なんでって、と高瀬君が口ごもる。
「そういう関谷さんは、なんでシノモリとつきあわないの?」
「はああ!?やめてよ!なんでシノモリなんかと!」
「あのさ」
高瀬君が言う。
「きみがシノモリ好きなの、たぶんクラス全員知ってるよ」
だ、誰にも言ったことないのに。
「ぼんやりしてたら、とられるよ」
高瀬君に言われて、女クラのあの子を思い出す。
持ち帰った本を、クラスの皆に配った。
期待通り、性とエロを混同させた男子がはしゃぐ。
「ってか、そういや関谷、高瀬がいいつってたよなー」
誰かが言う。
「高瀬、彼女いないじゃん」
「つきあっちゃえばー?」
雑なイジりが始まった。
私は、いい。
いや、よくないけど。
高瀬君が、めっちゃ迷惑そう。
申し訳ない。
「ちょっと、いいかげんに……」
言いかけたとき、背後から、首に腕を回される。
「これ、俺のだから」
シノモリだった。
それだけ言うと、彼はすぐに腕をほどいて、教室から出ていってしまった。
「おおー」
高瀬君が、口の端を上げて、廊下の方を見ていた。
顔を上げられない。
心臓が、おさまらない。
「“これ、俺のだから”」
「違う違う、“これ、俺のだからぁ”」
メグちゃんと高瀬君が、はしゃいでいる。
「もう、やめてくれ」
げんなりと、私が言う。
「なにかっこつけてんのー。嬉しかったくせにー」
と、メグちゃん。
「男を見せたよね、シノモリ」
と高瀬君。
「からの、逃亡」
メグちゃんが言って、ふたりが笑う。
ふざけただけだよ。
あいつは、私のことなんか好きじゃない。
わかるの。
だって、ずーーっと見てきたから。
わかってしまう。
「シノモリには、メグちゃんがいるじゃん」
「あんた、ほんとにいいかげんにしなよ」
メグちゃんが私を睨む。
メグちゃんには、わからないんだ。
シノモリが教室に戻ってきた。
目が合う。
「きも」
私が言うと、
「なにが?」
すっとぼける。
余裕ぶりやがって。
「誰が、誰のだよ」
こいつは。
全部、わかってて。
おもしろがってるだけ。
最悪。
――だって。
私は、メグちゃんみたいにかわいくない。
ちんちくりんだし、
眼鏡だし、
ブスだし、
顔もでかいし。
「じゃあさ」
シノモリが言う。
「おまえ、俺とつきあう?」
私は、知っているから。
「……どこに?」
私がかわいくないって。
シノモリが、ふっと笑った。
「きもいの、どっちだよ」
シノモリに避けられるようになった。
避けられるというか、昨日は、すれ違いざまに舌打ちされた。
あー、中学の、あれ以来かも。
“関谷まる一日無言チャレンジ”。
あのときは、シノモリから来てくれた。
もう二週間なんですけど。
なにやってんの?
はやく、千円札投げつけてよ。
二週間と、二日目の放課後。
シノモリは感情が読み取れない無表情で、エナメルバッグを肩に引っかけて教室を出て行く。
「昨日、シノモリ、矢野さんと一緒に帰ったらしいよ?」
メグちゃんが言う。
「矢野さん?」
「眼中にないってか。余裕っすね。女クラの、あの子だよ」
――シノモリ君とつきあってるの?
――そっかあ、じゃあいいの。
――ばいばーい
「このまま、つきあったりして。
シノモリの何がいいんだか。顔だけじゃん」
視界が、歪む。
「え、やだ、なんで」
「やだも何も。いまさら」
「やだ」
やだ。
やだやだやだ。
「え、ユウちゃん?」
メグちゃんが、どんな顔をしていたかわからない。
気がつけば、私は駆け出していた。
シノモリ。
シノモリ。
シノモリの、顔のパーツが好き。
声が好き。
背の高さが好き。
走るとこが好き。
笑った顔が好き。
――見えてる部分が、ぜんぶ好き。
見えてないところは、ひとつも見てなかったくせに。
階段を駆け下りる。
靴箱を抜ける。
「シノモリ!」
クラブハウスに向かう彼が、驚いたように振り返る。
私はもう、とっくに気づいていた。
ああ、やられた。
彼は昨日も部活だ。
帰宅は毎日23時。
矢野さんと一緒に帰ってるわけないじゃん。
「あのっ…」
息を切らしながら、うなだれる。
――なにやってんの、私。
「なに」
仏頂面の、シノモリ。
「つまり、その…」
顔を上げる。
「だから、もし」
ああ。走り過ぎて、心臓が破裂する。
「私らがつきあったら、どうなるかな」
シノモリは一瞬ぽかんとして、
それから、笑った。
「記念日ができるんじゃね?」
3番目の記憶のときみたいに、笑っていた。
もう何百番目かわからない彼との記憶が、更新される。
おしまい☆彡
すんごい雑に、関谷ユウコさんをハッピーエンドにしてやりました。
シリーズ化します!
[創作メモ]
テーマ:雑
タイトル:雑
構造:雑
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