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「がんばろう」で、考えるのをやめた 🔥5

それは、前向きなはずの言葉だった。

けれど、その言葉は
呪いに形を変え
少しずつ、何かを削り取るようになった。

────

高校生。

青春と言われるには程遠く、
何もかもが上手くいっていないように見えた。

勉強はついていけない。

人といても、一人でいても
耐えようのない孤独を感じる。

家の中も重苦しい空気が漂う。

父は私を威嚇し、無視する。

母はため息をつく。

妹たちは可愛がられる。

人とどこか違う。
私は、普通の人みたいにうまくやれない。

私は、おかしい。

毎日体を引きずるように、生きていた。

────

そんなある日、ふと過去を思い出した。

弱くてダメな男の子が、
失敗する度につぶやく物語。

小学生の時、なにかの本に乗っていたエピソード。

「がんばろう、がんばろう。僕はくじけないぞ」

その本を持っているわけでも、
読み返した訳でもないけれど、
ふと、思い出した。

私も、そう言い続けていれば、
強くなれるのだろうか。

────

同じ頃、ドラマで印象的な台詞を耳にした。

「昔、人に“幸せを数えて生きなさい”と
言われたけれど、私はそれができませんでした」
そんな、女性の言葉だった。

嫌なものを見ないようにして、
幸せだけを数えられたら、
私でも幸せになれるのかな。

そうすればみんなは、私に
笑ってくれるようになるんだろうか。

────

私は、決めた。

「がんばろう、がんばろう。僕はくじけないぞ」
そう言いながら過ごしてみよう、と。

嫌なことは、できるだけ見ない。
良いことだけを見るようにする。

自分や出来事に対して
「なんで?」
と考えるのは、やめよう。

嫌われるのは、私が悪いんだから。
私が変わらないと。

私は立ち上がり、前を向いた。

────

それからは本気だった。

何かあるたびに、
できるだけ「がんばろう」と唱えた。

怒りや疑問が湧いても、
勝手に湧き上がってくる
「なんで」は、できるだけ見ない。

考えず、感じず、ただ前に進むんだ。

そうやって見てみると、
私の日常には、
恐ろしいほどに嫌なことが転がっていた。

けれど、その一つ一つに「嫌だ」と感じることを
やめたかった。

とにかく辛いことがある度に心の中で唱えた。

「がんばろう、がんばろう。僕はくじけないぞ」

「自分がなぜこんな目に遭うのか」
そういう問いを、すべて排除したかった。

いい所なんか、何も見えなかった。
努力したけどダメだった。

だから、なにも見ない。考えない。

─────

今振り返ると、それは前向きというより
倒れないように必死に踏ん張るという
訓練だったかもしれない。

これ以上絶望しないための方法を見つけたかった。

この頃から――
私は、私を消す生き方を模索し始めていた。

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🫧この形の私

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