導火線 🔥2
その日、私は、彼氏の「基くん」と
ショッピングモールに遊びに来ていた。
二人であちこちを見て回り、映画を見て、
ゲームセンターで遊び、
楽しい時間を過ごしていた。
昼ご飯の時間になり、
「何を食べようか」
ふたりで大笑いしながら歩いていると、
前方から大きな声が聞こえてきた。
声の主は、進行方向に5メートルほど先にいた。
30代半ば、メガネをかけた細身の普通の男性。
その男性の前に、
小学校4~5年くらいの男の子がいて、
男性はその子に向かって大声で怒鳴っていた。
何を言っているのかはわからなかった。
ただ、怒鳴り方だけははっきりとわかる。
指導というより、
感情をぶつけるような怒鳴り方に聞こえた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
うわぁーん、うわぁーん
小さは子どものような、悲鳴のような泣き声。
ばちん。
その瞬間。
私の頭の中で導火線に、一気に火がついた。
言葉にできない溶岩のような感情が、
私の全身を駆け巡る。
頭の中に声が響く。
あんた、なにしてんの。
その感情のままに、
進行方向にいる男性を睨みつける。
怒りで握った拳が震える。
なぜここまで自分が怒っているの?
自分でも不思議だった。
けれど、その怒りは止められない。
─────
男の子は、泣き続けている。
私は睨み続けた。
そのとき、男性と、目が合った。
私は、目にさらに力を込める。
目を逸らしたら、負けた気がした。
食ってかかろうかと思うほど、
体の奥で激しい怒りが渦巻いていた。
─────
その時、ぐん、と手を引っ張られた。
「行くぞ」
基くんが、私の手を握って無理やり
反対側へ引っ張った。
彼の顔は険しく、周囲の状況に緊張していた。
それでも私は睨み続けながら、
引っ張られて歩いた。
公衆の面前で小学校高学年の子に罵声を浴びせ、
周囲の人々が見ているのに気にしないその光景。
そして、男の子の泣き方。
それは、私自身が子どもの頃、
父に怒鳴られた時の泣き方と
まったく同じだった。
許さない。
許さない。
私は、険しい表情で、その場を後にした。
なぜその男性が男の子を怒鳴っていたのか、
男の子は何をしたのか、まったくわからない。
その子が虐待されていたかどうかはわからない。
けれど、怒りの洪水はしばらく収まらず、
心の中で渦巻いた。
──────────
🫧この形の私

