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祝儀袋の重さ 🔥4

「お姉ちゃん、私結婚することになった」

それは、実家にいる妹からの知らせだった。

久しぶりにふたりで出かけ、ランチを食べる。

「おめでとう!」

やっと、あの家から逃げられるんだね。

心から嬉しかった。

─────

妹の結婚が決まっても
父は相変わらず理不尽な態度を取っていた。

顔合わせに来なかったり、
約束していた挨拶の日に姿を現さなかったり――。

大人として信じがたい振る舞いを、
平然としていたと聞いている。

そんな妹が、父からようやく離れられる。

「よかったね」
私は妹の手を握った。

─────

それからしばらくして、
義祖母から電話がかかってきた。

珍しいな。
なんだろう。

妹の結婚式のことだろうか、
迎えに来てほしいのだろうか。

何となく身構え、電話に出た。
電話に出るなり、義祖母は突然言った。

「お前、妹の祝儀はどう考えてるんだ」

「夫婦で出席するから、5〜6万円くらいかな」

すると義祖母は呆れたように言った。
「なんで妹が結婚するのに、
そんな金額で済ませようとしてるの。
最低でも10万円包むのが当たり前でしょう」


最低でも、10万円。


その時、私の頭の隅に封じ込めた記憶が蘇った。

私の結婚式のとき、父から言われたこと。

「妹からお金は貰うなよ」

私は、父に言われた通り、
妹2人から祝儀は受け取らなかった。

結婚式は、自分たちでお金を貯めて挙げた。

それで、妹の結婚式には10万円。

「なんで私が10万円も包まなきゃいけないの?」

妹は、相手の親に支えてもらって
結婚式を挙げる。

羨ましかった。

私には、そんな人はいなかった。

けれど、義祖母には何も言えず、
曖昧に返事をしてそのまま電話を切った。

─────

「また私だけが背負うのか」
「また、私だけが当たり前を求められるのか」

頭の中でせめぎ合い、私の心を焼き尽くす。


なんで。

なんでいつも。


机に押し付けた拳の上に、ひとしずくが落ちた。

視線の先で、1万円札が机の上に並んでいる。

私はその札の上に手を伸ばし、
握り潰そうとした。

だめだ。

折れたら、戻らない。

これは、結婚式のお金。
折れたお札は入れられない。

ため息をひとつ。


そのまま、黙って1万円札を10枚、
袋の中にねじ込んだ。

封筒に入れる手が震えているのがわかった。

私はそのまま、結婚式に向かった。
夫にも、誰にも何も言わなかった。


「おめでとう」

そう言ったけれど、昨日とは違っていた。


これは、妹のせいじゃない。

そう頭で言い聞かせる。

でも、振り上げてしまった拳を、
私は誰に向ければいいのだろう。

─────

祝いの席に参加するたび、思い出してしまう。

あの時、私は何を祝っていたのだろう、と。

──────────
🫧この形の私

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