“親のせい”かもしれないと思った日 🔥2
楽にならない。
それが、試行錯誤した私の正直な感想だった。
何かが変わったわけじゃないのに、
ふとした瞬間に、また落ちる。
せっかくここまで這い出したのに。
「また戻るんじゃないか」
それが一番怖かった。
前のように
何もできなくなる自分に、戻りたくなかった。
—— 自分でどうにかしないと。
私は、ヤマダさんや、ヤマダお母さんに
立つための力をもらった。
けれど、どんなに考えても
自分で立つための方法が分からない。
そもそも、立つって何。
普通って何。
途方にくれた。
────
このまま考えていても、たぶん答えは出ない。
でも、そのままにしていたら、
またあの状態に戻る気がした。
だったら、答えを探さないと。
私に何が起きているのか。
なぜ、こうなったのか。
分からないなら、調べろ。
課長の言葉が頭に響いた。
そうだ。
分からないなら、調べよう。
私は駅へ向かった。
────
いつもの本屋。
改札を通る前の片隅にあるそこは、
私のいつものルートだった。
私はあるコーナーの前に立った。
多分、ここ。
『自由に生きるために』
違う。
『優しい私の作り方』
それも欲しいけど、今は違う。
『子供の頃から言葉にならない苦しさを
抱えたあなたへ』
……これだ!!
ここに、私のおかしさの秘密が書いてあるはず。
私は迷わずその本を手に取り、レジへ向かった。
────
電車に乗ると、席に座る。
それは、小説ほど小さな本だった。
ここから、私の生まれ変わりが始まるかも。
苦しくない毎日。
やっと、答えが見つかる。
おかしい私を何とかする方法。
ページを開く。
────
『あなたは、こんなことで苦しんでいませんか?』
ページをめくる。
『人の顔色を異常に気にしてしまう』
『自分はダメだと責め続ける』
『嫌われるのが怖い』
─── 手が、止まった。
これ、
……私?
指先が微かに震える。
なぜここに
私のことが、そのまま書いてあるんだろう。
なにこれ、こわい。
ページをめくる。
────
読み進めていくうちに、
知らない言葉が出てきた。
機能不全家族。
愛着障害。
『父親の威嚇、酒乱』
『不機嫌、無視』
『誰にも助けられない子供』
私の家のことが書いてある……。
思わず口に手を当てる。
『このような家庭で育った人は、
大人になり様々な
苦しみに苛まれることがあります』
息が止まった。
電車の走る音、車内アナウンス。
それらの音が、
なにかに吸い込まれるように消えた。
私はしばらく、
開きかけのページを見つめたまま動けなかった。
それから、
ぱたん、と本を閉じた。
────
そんなこと、今まで考えたことがなかった。
私が今持っている苦しみ。
それが、過去にあったことと繋がっている。
過去に受けたことで、今私は苦しいの?
……親の、せいで?
その瞬間、涙が零れそうになる。
だめ、ダメ。
上をむく。
周りに人がいる。
今泣くのはまずい。
その感情は、
安心なのか。
恐怖なのか。
混乱なのか。
ただ、
心の奥の何かが、
大きく揺れていた。
────
駅に着き、足早に家に向かう。
急がないと。
早く。
こぼれそうになる涙を振り払うように、
鍵を開ける。
ガチャン
扉を開けるとそこは
暗い自分の部屋。
玄関の扉を閉めた瞬間、
張っていたものが切れた。
私は、
電気もつけないまま、
その場にしゃがみこんだ。
涙が止まらなかった。
私は、生まれつきおかしい人間。
私が悪い。
なんとかしないと。
ずっと、
そうやって生きてきた。
なのに。
“そうじゃない可能性”に、
初めて触れてしまった。
なんの感情なのかは、よく分からなかった。
ただ、悲しみとも苦しみとも
安堵ともつかない感情が渦巻いていた。
なんで。
なんで。
私の人生って……
それ以上、言葉は出てこなかった。
暗い、小さな玄関で
私は、
本を抱きしめたまま、
泣き続けた。
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🫧この形の私

あなたの心に、なにか残ると嬉しいです。
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