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褒められているのに、どうしてこんなに苦しかったんだろう 🔥3

「頑張ったね」

そう言われているのに、
どうしてこんなに苦しかったんだろう。

私はちゃんと評価されていた。
賞も取った。

それなのに、
心は少しも満たされなかった。

────

「字がキレイでないとね」

私は小学校1年生の頃から
書道を習っていた。

気づいたら習っていた。


教室に通う形式ではなく、
毎月決まった課題を書いて家で仕上げる。

それを提出すると級が上がっていく。
そんな仕組みだった。

「あんた、まだ書いてないの?」
「毎日5枚ずつ書くように行ったでしょ」
毎月のように母は、ため息をついた。

「今から書くよ、間に合わないんだから」
渋々座って筆をとる。

「筆が寝てる!もっと立てて。
1回力入れて払うの!」
書けば書いたで細かい指導が入る。

締め切り前には、毎回「早く、早く」と
急かされた。

あまりいい思い出ではなかった。
だけど、字を書くのは嫌いじゃなかった。

────

そんなある日、校内の書写コンクールがあった。
各学年から作品が出され、金賞・銀賞・銅賞が
選ばれる。

私は、習字を習ってるからね。

私は少し得意げに笑った。
そして、当然賞に入るものだと思って書いた。
目指したのは金賞だった。

結果は銀賞だった。
「なんだ、銀賞か」

銀賞だって、立派な賞だ。
みんながもらえる訳じゃない。
それは分かっていた。

「金賞、取りたかったな」
少しだけ、がっかりした。

────

それから1ヶ月後の参観日、
校内で作品展が開かれた。

母は、参観日に来ると言っていた。

私はずっとワクワクしていた。
一生懸命書いた字を、母に見てもらえる。

作品展当日。
授業が終わると、私は母のもとへ駆け寄った。

「ねえ、お母さん。私の字、見てくれた?」

母は言った。
「うーん、銀賞かぁ。
本当は金賞が欲しかったよね。
あそこの止めとか、払いをもっと力強く
書いていたら、あれは金だったんじゃないかな。
お母さん、ちょっと残念だったな。」

金か銀かよりも、「私が書いた字そのもの」を見てもらえると思っていた。
胸の中が少し、しぼんだ感じがした。

自分の書いた字が、急にちっぽけに思えた。

────

それから3ヶ月後、校内で写生コンクールがあった。

みんなで同じ風景を見て絵を描き、それを校内で審査するものだった。

この図画コンクールでは、
上位作品が市のコンクールに出品される仕組みだった。

当時の私は絵を描くことも好きだった。

水彩画は得意ではなかったけれど、丁寧に、影も一つひとつ意識して描いた。

結果は金賞だった。

掲示された私の絵の右上には、
きらびやかな金色のシールが貼られていた。

「わぁ、金だ!」
私の作品は、市のコンクールに出品されることになった。
自分でも「この絵、うまく描けた」と感じていた。

作品展の日、母と一緒にその絵を見に行った。

「お母さん、はやくはやく、こっち!」
母の方を振り返りながら小走りで会場へ向かう。

ふたりで絵の前に立つ。
「ちょっとうまく描けたと思うんだよね」
そう言おうとして口を開きかけたとき、
母が言った。

「…ああ、この絵はちょっと残念だよね。
この色使い、1色しか使ってないでしょ。
もっといろんな色を混ぜたら、
深みが出るんだけどな。
まあ、この程度だったら……そうだよね、銀だよね。」

市のコンクールの結果は、銀賞だった。

私は、開きかけた口をそのまま閉じた。
母は続けた。

「でも、この絵で銀賞取れたのはラッキーだね。
他の絵があんまりだったのかな。
まぁ、頑張ったじゃない。」

「頑張ったじゃない」
それは、褒めてくれたんだよね。

私は頭で、そう理解しようとした。

……そうだよね、お母さん。


私は母の後ろ姿に、心の中で問いかけた。
口には出せなかった。

作品展に行く前の、
あのワクワクした気持ちはすっかり消えていた。

しっかりと張っていた風船を割られ、
しぼんだ残骸が床に転がっている――。
そんな感覚だった。

母は褒めてくれたはずなのに。

賞をとったこと。
市のコンクールに選ばれたこと。
一生懸命書いたこと。
ここがいいなって、
自分で自分の作品を気に入ったこと。

全部嬉しかったはずなのに。

なんでかな、なんでこんなに泣きそうなのかな。


小学生の幼い頭で一生懸命考えたけれど、
答えは見つからなかった。

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🫧この形の私

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