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生きていられた時間 ── あの時間がなければ、私は壊れていた


「今日も、やる?」
「やろう」

それが、私たちのお決まりのフレーズだった。

あの時間があったから、
私はなんとか、生きていられた。

────

年末年始。

親戚の家に来ていた私たちは夕食が終わると、
たくさんある部屋のひとつに入った。

あなたたち用ね、とあてがわれた6畳の部屋。

中に入るとこたつがあり、ヒーターに電源をつけると部屋は暖かくなった。

オレンジ色のライト。
こたつ。
みかん。

けれど、私たちの目的はそれではなかった。


絵を、描くこと。


私たちは、鉛筆とノートさえあれば、
それだけで十分だった。

こたつに座ると、床に置いたカセットデッキで
音楽を流す。
古い、義祖母のカセットデッキ。


音楽が流れる。

カセットデッキで流す音楽は、
テレビから録音したゲームの曲。

親戚のお兄ちゃんから貰ったRPGのゲーム。

歌詞が入ってなくて、集中できる。
そんな気がしていた。

カセットテープには雑音もたくさん入っていたけれど、それでもその音が好きだった。


お互い、描きたいものを描く。

会話は特に必要なかった。

「手、痛いわ」
「ねぇ、これどうかな」
「いいじゃん」

そのくらいだった。

机に広げたノート。
目に映る、白いページ。
そこに黒い線を描いていく。

斜めも丸も、どこに描くのも、私の自由だ。
目を見開き、夢中で手を動かした。

────

家では、親がいない時間を選んで
描くことが多かった。

親戚の家は、まるで別世界だった。

妹と部屋にこもり、一晩中絵を描き続けた。
音楽に包まれ、気づけば朝になっていることもあった。

おばが「楽しい?」と笑いながら、
温かい煎茶とお菓子をそっと差し入れてくれた。

「冷めないうちに飲んでね」
笑顔でそう言いながら静かに部屋から出ていく。

誰からも邪魔されなかった。
こたつの温もり、ストーブの柔らかな熱。

筆の音。
静かな音楽。
それだけが、部屋の中を満たしていた。

“私、生きてる”

あの時のお茶の香りも、
お菓子の甘さも、
鉛筆を持つ手の痛みも。

────

普段、楽しいと感じることは
ほとんどなかった。

それでも。

あの頃の私は、この時間に支えられて
ギリギリ、生きていた。

──────────
🫧この形の私

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