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憧れのしぶとい生き物 🔥1

結婚した時から、義父が私に言う言葉があった。

「お前は精神的に弱いな」

顔を合わせるたび、
冗談のように、当たり前のように
笑って言った。

─────

夫や義妹は、自分たちの家族のことを
「しぶとい生き物」と呼んでいた。

「ほんと、私たちってしぶとい生き物だわ」

義妹が笑って言う。

「繊細に育てられてないから仕方ないだろ」
夫も笑う。

「うちの家族がしぶとすぎるんだよね」

─────

それは、多分悪意のない言葉。

義妹が笑って言う。

「みのりちゃん、私たちがしぶとすぎるんだから。
合わせなくていいからね」

それは、私の繊細さを
認めてくれていたのかもしれない。

「あはは、確かにね」

一緒に笑いながらも、
私は違うことを考えていた。


いいなぁ、しぶとくて。

私も、
しぶとい生き物になりたい。

羨ましい。


「あなたもしぶといね」と、言われたかった。

─────

でも、私はしぶとくは、なかった。


夫や義妹は、
どこでもすぐ寝ることができる。

私は、静かで暗くないと眠れなかった。


ある日、義父の家に行った。

すると、突然、
義父がいつもの大きな声を出した。

「なんだと?お前!」

その声に、身がすくむ。

恐る恐るそちらを見ると、
義父が義妹を睨みつけていた。

え?
なに?
どうしたらいいの?


しかし、当の本人の義妹は、
不満そうな顔をしたものの、
その後は平然とテレビを見て大笑いしていた。

まるで、嫌なことなど存在しなかったように。

義父はブツブツなにか文句を言いながら、
部屋をあとにする。

私はその様子を呆然と眺めているだけだった。

心臓が早くなる。
涙が出そうになった。

私は慌ててトイレに駆け込んだ。

─────

扉を閉め、大きく息を吐く。

落ち着け、落ち着け。

あれは、私のことじゃない。

義父の大きな怒鳴り声が、
全身を突き刺すような感覚。

大丈夫、私にじゃない。

ポタリと涙が、流れる。

心臓のところに手を当てる。


「私たちはしぶとい生き物だからねー」
みんなの笑う顔が浮かんだ。

夫は、泣かない。
義妹も泣かない。

「なんで、そんなこと気にするの?」

「気にしなければいいじゃん」
夫の声が頭に響く。

気にしてしまう。
こんなことで、涙が出てしまう。

私は、弱い。

「あなたは1人だけ弱いもんね」

誰もそんなことは言っていない。

「私たちはしぶとい生き物だからね」

みんなの笑い話が、
私には違う意味で聞こえるようになっていた。

─────

その場にしゃがみ込む。

みんなと同じが良かった。
同じように、なりたかった。

私は、「しぶとい生き物」になりたかった。

──────────
🫧この形の私

▶  次の出来事へ(口だけが、先に笑う)

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