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どこがいいの? 🔥1

結婚する段取り。

それは、私にとって
“守らなければならないもの”だった。

誰にも教えてもらっていない。
でも、礼儀は通したかった。

手順を踏み、お金も自分たちで出す。

誰にも文句は言わせない。
しっかりしている所を見せたかった。

それが、当時の私の小さな目標だった。

─────

私の結婚が決まった頃から、
家の中はなんとなく
穏やかそうな空気に変わったように感じた。

私の家に行く日。

彼氏の基くんと玄関に立つ。

彼は、特別緊張している様子もなく、
いつも通りだった。

ふたりで玄関をくぐる。

基くんは、人に気に入られようと
無理をするタイプではなかった。

自然体で、気づけば「感じのいい人」という
評価に収まっている人だった。

父の長い植物の話。
若い頃の自慢話。

それらにも、「そうなんですね」と
笑顔で受け流せる。

「仕事でよくやってるから、
別に大したことないよ」

彼はそう言ったけれど、
私には、すごいことに思えた。

父は、彼をすっかり気に入ったようだった。

─────

「今日は私が昼ご飯を準備するから」
母にそう豪語した。

しかし、数時間後。
私は母に大きな顔をしたことを、
何度も後悔した。

洋食は父が食べない。
考えた末、台所には失敗作だけが増えていった。

最終的に食卓に並んだのは、”うどん“。

冷凍うどんに、刻んだネギとかまぼこ、生卵。
彩りだけは、必死に取り繕った。
いつもより100倍質素なメニューだった。

「これ?食べるの?これだけ?」
母は何度も見返した。

「なにか作ろうか?」
母が苦笑いで言ったけれど、
私は丁重に断った。

「大丈夫。これでいい」

私のタブー。
食事を、親に手伝ってもらうこと。

親に頼っちゃだめ。
そう思った。

「見栄を張って、
後でガッカリさせても悪いし。
私の事知ってるはずだし。
ありのままでいいよね」
そう自分に言い聞かせて、うどんを出した。

父はテーブルを見て苦笑いした。
「おいおい、これだけか?」

妹が出汁を一口。
「あ、お姉ちゃん。これ、味はおいしいよ」

妹の言葉に私は答えた。

「だしが市販だから。市販は間違いないから」


みんなでズルズルとうどんをすする。

妙に静かだった。

食後、妹は部屋に戻り、
私は基くんと父の部屋に行った。

ふたりで父の前に座る。

「お嬢さんと結婚させてください」
そんなことを言うのかなと思って黙っていた。

けれど、彼は何も言わない。

仕方なく、私が言った。
「結婚することになりました。
よろしくお願いします」

父は笑いながら、基くんの方に身を乗り出した。
「ちょっと聞きたいんだけど」

「はい」

「こいつのどこが良くて結婚するの?
なんで、こいつなの?」

親指で私を指しながら、そう言った。

失礼じゃない?

そう言いかけて、私は黙った。
彼は少し考えてから言った。

「面白い人ですよ。いい子です」

それで二人は笑って、この話は終わった。
私は首をかしげたまま、部屋を出た。

─────

その後台所で、彼は母に挨拶をした。
「結婚することになりました。
よろしくお願いします」

母は笑いながら言った。
「うん、あなたのことはよく知ってるから」

「でも、なんでこの子と結婚しようと思ったの?
どこが良かったの?」

母は笑いながら言った。
「この子と結婚したいと思ったのが、
正直ちょっと不思議で」

私は、がくりと肩を落とした。

─────

父と母は仲が良くない。

事前に打ち合わせたとも思えない。
それでも、別々の場所で、同じことを言った。

選んだ人が素敵だったから?
いや、違うな。

私は首を捻った。

子どもの頃からずっと私を見てきた両親の言葉は、
なぜか胸に残った。

彼は笑っていた。
「俺のこと、かなり気に入ったんじゃない?」
冗談めかした口調で、どこか満足そうだった。

私は、その言葉をどう受け取ればいいのか、
分からなかった。

それは、祝福というより、
静かな査定のような時間だった。

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🫧この形の私

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