「正しさ」を語る父が、謝らなかった日
「気付ける人間でなければならない。
それが人としての全てだ。正しさだ」
それが、幼い頃から父に繰り返し
言われたセリフだった。
怒鳴る父が怖かった。
酒を飲みながら正しさについて語る父。
あれ?
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その年、私はいつもの親戚と潮干狩りに出かけていた。
砂浜には、敷物が並び、
あちこちで楽しそうにご飯を食べている人たちがいた。
父は「行ってくる」と言って席を立った。
少しして伯母に声をかけられた。
「みのりちゃん、お父さんにこれ持って行ってあげて」
私はそれを受け取ると、父の後を追った。
周囲にはたくさんの人がいて、敷物の間をすり抜けながら、父を探す。
少し離れたところで、父の姿を見つけた。
声をかけようとしたその瞬間、
信じられない光景が飛び込んできた。
父の足が、敷かれた敷物に引っかかった。
紙コップが倒れ、お菓子の袋が散乱する。
その敷物の上には、人が座っていた。
父はわざとやったのではない。
それは、私にもわかった。
けれど、私が驚いたのはその後だった。
父はちらっと見ただけで、
何も言わずに立ち去った。
若い女性たちが父を睨む。
「は?なにあのおじさん、謝れよ」
舌打ちとともに、そう言った。
恥ずかしかった。
私はその“失礼なおじさん”の娘だ。
そう思われたくなくて、距離を置き、
足早にそこを通り過ぎた。
人の物を蹴飛ばして謝らないこと。
小学生の私でも、それがどれほど無礼で失礼なことか、理解できた。
なのに、父は平然として振り返りもしない。
平然と前に進み続けた。
その後私は、父に合流し、頼まれたものを渡した。
そして、さっさと自分の敷物に戻った。
とにかく、父と知り合いだと思われたくなかった。
夜中まで延々と説教をする父。
「正しさとは何か」
「人とはどうあるべきか」
そんな父が、私の目の前で、"正しいとは到底思えないこと”を平然とやってのけた。
その瞬間、頭の片隅にはじめて疑問が浮かんだ。
――もしかして、お父さんって
正しくないんじゃないの?
この違和感は、時計の針が進むごとに、
じわじわと大きくなっていった。
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🫧この形の私

こういう話を、これからも書いていきます。
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