北ドイツで避暑するときは水着を忘れずに。
熱波のドイツ
2026年6月末、欧州は恐ろしい熱波に襲われていた。
フランスでは熱波で死者も出るほどで、隣国のドイツも当然この暑さを避けることはできず。38度と聞いても日本人感覚だと「まあ最近の夏ってそんなもんだよね」とあまりピンとこないが、ドイツには基本冷房がない。
冷房のない猛暑は地獄である。店に行っても空調はぬるいし本当にプールくらいしか逃げ場がない。
しかし私はラッキーだった。
なにせ一番暑くなると言われていたその週末に、北ドイツのキール(Kiel)に行く予定があったのだから。
キールはドイツ最北端の州、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の州都であり、ハンブルクより北である。
これまでさほど興味もなく行くことも無かったのだが、実はキールに友人ができて、この年末年始に初めて訪れた。
年末年始のキールは寒くて人もまばらで寂しい雰囲気だったが、「次は夏に訪ねに来て。全然違うから」という言葉を頼りに、この夏に2度めの訪問をすることになっていた。
ドイツ人にさえ「キールって何あるの?」と言われる都市であるが、まさか1年に2度訪ねにいくことになるとは…(聞かれるたびに、「海がある!」と答えている)
出発の前日に天気予報を見るとキールでさえ37度とか38度と表示されていたが、デュッセルドルフより2度ほど低いのでまだまし。少しでも涼しい避暑地を求め、キールへと旅立った。
デュッセルドルフからハンブルクまではICE(高速鉄道)があるが、予約の時点では意外と高かったこと、RE(鈍行)を乗り継いだ場合でも1時間ちょいくらいしか変わらないので、REを乗り継ぐことにした。
ドイツ鉄道はいつだって遅延があるのでICEすら信用できないし(30分〜1時間遅延は珍しくない)、REはDeutchland Ticket(月額定期券みたいなもの)があれば乗り放題なので実質無料。ならばREでいいよね?と思ったが、今思うと間違いだった。
オスナブリュックからブレーメンの道中、エアコンなし\(^o^)/
1時間ほどで着いたのが幸いだったが、天然の動くサウナに入れられていた気分だった。移動式サウナ、サウナ後の冷水プールなし。
サウナは最後の汗を洗い流すところが一番気持ちがいいのに、こんなのただ不快なだけ…!
なぜ私はこんな日にキールに向かっているのか…?
キールには何があるのか…?
市民プールじゃだめなのか…?
自問自答しながらの旅だった。
ちなみにNRW州のドイツ鉄道はその翌日と翌々日、あまりの暑さにREの運行を休止したらしい。運休前にたどり着けてよかった。
ICEはまだクーラーが効いている可能性が高いので、夏の長距離移動なら次からは課金だと心に誓った。
白い砂浜と青い海、Laboe
キールに到着しても意外と涼しくはない。
いや、しかしデュッセルドルフよりは涼しいはずだ、と暗示をかけながら友人宅へと移動する。夜8時か9時あたりに到着したが、夏のヨーロッパは日が長い。友人の提案でピザを頼み、海辺の砂浜で食べることになった。(とっても素敵!)
訪れたのはキールの郊外にあるラーボエ(Laboe)という海辺の小さな町。
年末年始に訪れたときは誰もいない砂浜と冷たい波が寂しい雰囲気を醸し出していた。

水は綺麗だけども曇り空を反射してどんより
このもの寂しい雰囲気が脳内にこびりついていたため、友人の「夏にもう一度来てほしい」という言葉を正直疑っていたのだが、日没の風景を見てその疑念は全く失礼なものだと理解した。


夏のLaboe、美しすぎる……
日没の時間帯ということもあり、さすがに気温はマイルドになっていて、時折吹く海風が心地良い。
白い砂浜は昼間の熱射を吸収しておりまだ温かく、裸足で歩くと指の隙間から細かい砂が湧き出て足全体を包みこんでいく。
海の温度はといえば、さすがは北の海。昼間の暑さでぬるいくらいかと思っていたが、非常に冷たい。この瞬間に昼間のサウナ列車の苦労が報われた。
北ドイツ最高。来てよかった。
日没の海も最高だが、昼間の海ももちろん最高。
海に入ると聞いていなかったので水着を忘れるという痛恨のミスが悔やまれる。代わりに足だけチャプチャプしたけども、めーちゃめちゃ気持ちよかった。
まだ本格的なバカンスシーズンではないものの、こんなに素晴らしい浜辺だというのに大して混んでいない(少し行きづらい場所だから?)。
昼間も海の水は冷たく、暑い日の海水浴にはピッタリの場所だった。
KielからLaboeまでのフェリーはDeutschland Ticket でも乗れるので船移動もオススメ。


ちなみに北ドイツではFischbrötchenという、パンに焼き魚や魚のフライ、酢漬け等を挟んだサンドイッチが有名なのだが、無防備な観光客を狙った、カモメによる魚サンド泥棒被害被害が続出している。
Laboeにも魚サンドの屋台があったのだが、そこに貼られたステッカーがユーモアたっぷりでとても面白かった。

下「10分ごとにカモメが魚サンドに恋する」
Kieler Wocheを楽しみ尽くす!
キールに来た目的は、実は海水浴ではない(だからこそ水着を持っていかなかった)。
Kieler Woche(キーラーヴォッヒェ)、略してKiWoに参加するためだった。
私も友人にKiWoの話を聞くまでこのお祭りのことを全く知らなかったのだが、友人曰く、北部ドイツ最大のお祭りで、ミュンヘンのオクトーバーフェストの次に規模がでかいらしい(あくまでもキール住み友人談。2番めにでかいという割にはデュッセルドルフ住み友人はこの祭りを知らなかった)。
私も行く前に少し調べてみたが、どうやらセーリングの世界大会が開かれたり、移動式遊園地も来たりするらしい。一週間に渡って開催されるため、Kieler "Woche"なのだ。
(ちなみに我々がいた週末は大会が行われておらず見ることはなかった)

奥に遊園地の施設が見える
KiWoはキールの街全体で行われる。
実際に訪れてみると、とてつもなく規模がでかい!!!
オクトーバーフェストで使用されるテント式のビアガーデンや野外コンサート会場もあり、全ドイツの祭をきゅっと集結させた感じ。
KiWoに行けばドイツが味わえる。



とにかくディスコ会場の数が多く、少し歩けば音楽にノッて踊る集団に遭遇する。
ドイツ人、フェスでとにかく酒飲んで踊りがち。
この身体全体で楽しみつくそうとする姿勢、短い夏を全力で楽しみたいという気概を感じる。
私一人ではディスコなんて興味がないが、ドイツ人が一緒なら話は別。
我々も例にもれず夕暮れとともにディスコ会場を渡り歩いた。
私はお酒を飲まないしディスコの楽しみ方がよくわからないので、こういう時はアウェイな気分で過ごすのだが、サイレントディスコは面白かった。
会場に入るときにヘッドフォンを渡され、各々がヘッドフォンから流れる2種類のクラブミュージックを好きなタイミングで切り替えながら、リズムに乗るというもの。
全く事情を知らずに外から見ると、急に同じ歌を口ずさみながら踊りだす不審な集団にしか見えない。
本当に面白いのか…?と半信半疑で参加してみるも、実際にその一団に加わってみるとこれがなかなか快適。
一人一個のヘッドフォンで聞くため音質も良いし、爆音でないため耳も痛くならない。少し休憩していても違和感ないし、不用意に話しかけられることもないので、結構気に入った。
外国の知らない曲がほとんどだったが、時折私でも知っているメジャーな曲も流れてくる。会場の盛り上がりが最高潮に達すると知らない人たちと腕を組みながらスキップしたり輪になって踊ったり。
酔っ払いに囲まれながら、音楽は言語を超えるんだなあとしみじみと思ったりした。
祭りのフィナーレは大輪の打ち上げ花火
KiWoを締めくくるのは最終日の打ち上げ花火。
夏の夜は長いので夜11時からの花火大会だが、開始時間にはまだ完全には暗くならず、キールの緯度の高さを思い知らされた。
正直こちとら日本では夏の花火大会と共に育ってきているし、デュッセルドルフでは毎年日本デーの打ち上げ花火を見ているので何も特別なことではあるまい!…と思っていたのだが、これがなかなか見応えがあり、面白かった。

目の前の海で打ち上げるためまず距離が近い。
会場のスピーカーから流れる音楽に合わせて花火が打ち上がり、途中レーザーやドローンの演出も加われる。なんというか、音楽フェスを見に来たようだった。
最後の曲がKiWoのオリジナルソング(途中KiWoと歌っていたのできっとそう)だったのも良かった。こういう祭りのためだけに作られた曲、上がるよね〜
花火大会のあとは全員一斉に帰宅するのはどこでも同じで、直後の道路は大混乱。
車道や信号もお構いなしに歩行者や自転車が縦横無尽に通っていく。
こういう無秩序なところを見ると、ドイツって結構適当な国だよなぁって思ったりする。
みんな事故に遭わず帰れただろうか。
花火大会の帰りから気づいていはいたが、猛暑の週末を過ぎれば北ドイツにはまた涼しい空気が満ちてくる。
翌日にはもう爽やかな気候となっており、窓を開ければ薄手の羽織があってもいいくらい。
確かに暑すぎる週末であったものの、キールを夏の装いで楽しむには良いタイミングだったのかもしれない。
今度はちゃんと水着を持って、またあのきれいな海を楽しみたいなと思った。
夏のキール、最高だぁ
