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『憲法王国』|第1部 三つの約束|第1話 王冠をみんなに



もし憲法が、一つの王国だったら。

もし自由や平等が、人々と一緒に暮らしていたら。

『憲法王国』は、そんな想像から生まれた物語です。



『憲法王国』|第1部 三つの約束|第1話 王冠をみんなに


昔々。



世界のどこかに、不思議な国がありました。

その国の名前は――



憲法王国。



憲法王国には、お城があります。

広場があります。

学校があります。

市場があります。


たくさんの人が暮らしています。


けれど、ほかの国と少し違うことがありました。


それは――


王様がいないこと。


王国の中央広場には、石造りの台座があります。

その上には、きらきらと輝く王冠が置かれていました。

立派な金色の王冠です。


けれど誰もかぶっていません。

いつもそこに置かれたままです。


ある朝。



白いマントを羽織った少年が広場へやってきました。

名前はケン。

大きな本を抱えています。



その本の表紙には、

『みんなの約束』

と書かれていました。


ケンは毎朝、王冠を見に来るのが日課でした。


誰かがかぶっているかもしれない。

それを確認したくて、どうしても来ずにいられないのです。


「今日も誰もかぶってないなあ」

でも不思議と、がっかりはしませんでした。


後ろから元気な声が聞こえました。

「それでいいんだよ!」


振り向くと、金色の髪の少女が立っていました。



頭には小さな王冠。

名前はシュケン。


広場のみんなから、

『王冠の番人』

と呼ばれていました。


「なんで毎日ここにいるの?」

ケンが聞きました。


シュケンは、台座の王冠から目を離さずに答えました。

「王冠を誰かが独り占めしないように。」


「ねえ、シュケン。」

ケンは聞きました。

「どうしてこの王国には王様がいないの?」


シュケンはにっこり笑いました。

「本当にいないと思う?」


「え?」


「じゃあ、あのパン屋さんは?」

「パンを作ってる人だよ。」


「魚屋さんは?」

「魚を売ってる人。」


「学校の先生は?」

「子どもたちに勉強を教えてる。」


シュケンは広場をぐるりと見回しました。

「みんな、この国を作ってる人たちだよ。」


「うん。」


「だからね。」

シュケンはそう言うと、髪飾りの小さな王冠を外しました。


そして高く掲げます。


「この国の主人公は、一人じゃないんだ。」


その瞬間。

王冠が光りました。


まぶしい光は空へ昇り、

広場にいた人たちへ降り注ぎます。


パン屋さん。

魚屋さん。

先生。

子どもたち。

おじいさん。

おばあさん。


みんなの頭の上に、小さな光が宿りました。



ケンは目を丸くしました。

「みんなに王冠が?」


「そう。」

シュケンはうなずきました。


「この国の王冠は、一人だけのものじゃない。

みんなのものなんだよ。」



その時でした。

広場の向こうから大きな声が響きました。


「そんなの面倒だ!」

黒いマントの男が現れました。

名前はドクサイ。

いつも難しい顔をしています。


「みんなで決めるなんて時間の無駄だ!」

ドクサイは言いました。


「私が王になればいい!

私が全部決める!」


広場がざわつきます。


ドクサイは、決めるのが遅れて後悔した昔の出来事を、今も忘れられずにいました。

だから、いつも「早く決めなければ」と焦っているのです。


確かに、一人が決めた方が早いかもしれません。

話し合いもしなくていい。

意見が分かれることもない。


ドクサイは王冠へ向かって歩き出しました。

「これからは私の命令に従え!」


広場のみんなは思わず道をあけました。

ドクサイの足音だけが、

コツ、コツ、

と広場に響きます。




その時。

ケンが大切にしている『みんなの約束』が光りました。


ページがひとりでに開きます。


そこには大きな文字が書かれていました。


「この国を動かす力は、国民みんなが持っている。」


ケンは本を掲げました。


「待って!

王冠は一人のものじゃない!」


すると。

人々の頭の上にあった小さな光が集まり始めました。


一つ。

また一つ。

どんどん集まっていきます。


そして大きな光の輪になりました。


ドクサイは驚きました。

「な、何だこれは!」



シュケンは静かに言いました。

「みんなの力だよ。

一人で決めれば、早いかもしれない。

でも、この国のことを決める力は、みんなが持っているんだ。」


光の輪はやさしく広場を包みました。


ドクサイはまぶしさに目を閉じました。


「みんなで決めていたら、間に合わなくなるぞ!」

そう叫びながら、ドクサイは広場から走り去りました。




広場に静けさが戻ります。


ケンは空を見上げました。

そして少しだけ笑いました。

「分かった。

この国の王様は、誰か一人じゃないんだね。」


シュケンも うなずきました。

「そう。みんなが主人公。

この国を動かす力を、みんなが持っている。

それが、憲法王国の最初の約束なんだ。」



第1部 第1話 おわり


📔次回📔

『憲法王国』|第1部 三つの約束|第2話 主人公は誰?

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月凪(つきなぎ) ありがとうございます!