【CoCシナリオ公開】2~4人で回せる脱出シナリオ『おやすみ、灰色のメルヒェン』【TRPG】
おはようございます、早坂いのるです。
今回は、**「童話×精神世界×記憶の忘却」**をテーマにした、幻想的で残酷な脱出劇です。
『おやすみ、灰色のメルヒェン』
「ねえ、忘れないで。君がそのページを捲るたびに、君を形作っていた『昨日』が、一滴ずつこのインク瓶に吸い込まれていくんだよ。」
■シナリオ概要
システム: 新クトゥルフ神話TRPG(第7版)
形式: 現代日本(導入)・精神世界クローズド(2~4人向け)
推定時間: 3~4時間
推奨技能: 〈目星〉〈聞き耳〉〈芸術(何でも)〉〈鑑定〉〈心理学〉
舞台: 色彩が欠落した、巨大な「飛び出す絵本」の中の世界
テーマ: 記憶の対価、アイデンティティの消失、イデアス・ムンドゥス
■あらすじ
探索者たちは、古い古本屋で見つけた「表紙のない絵本」を開いた瞬間、意識を失う。 目を覚ますと、そこは空も地面も、そして自分たちの肌すらも「鉛筆描き」のような灰色の世界だった。 出口へ向かう道は、自分たちの過去のエピソードが描かれた「絵本のページ」となって続いている。しかし、次のページへ進むためには、自分を構成する大切な記憶を、世界の「色」として差し出さなければならない。 物語が「めでたしめでたし」で終わる前に、彼らは自分という存在を使い果たすことなく、現実へと「書き換えて」戻る必要がある。
■ハンドアウト(HO)
PC1:『色を塗る画家』 世界に一時的な色彩を与える。〈芸術〉にボーナス。
PC2:『物語を綴る作家』 歪んだ物語の矛盾を見抜く。〈図書館〉にボーナス。
PC3:『行間を読む心理士』 登場人物の「嘘」を看破する。〈心理学〉にボーナス。
PC4:『価値を知る目利き』 記憶の「重さ」を測定できる。〈鑑定〉にボーナス。
■五章構成:欠落するクロニクルと白の余白
第一章:プロローグの目覚め
周囲は書きかけのスケッチのような風景。自分たちの身体からは、指先から少しずつ色が抜け、白紙へと変わっていく。
描写: 遠くで「ページを捲る巨大な音」が響くたび、足元の地面が書き換わっていく。
判定: 〈目星〉。自分たちの持ち物が、ただの「文字情報のラベル」に変わっていることに気づく(SAN 1/1D3)。
第二章:思い出の対価
物語の門番(NPC:顔のない羊)が、通行料として「君たちの最も古い記憶」を要求する。
アクション: 〈心理学〉あるいは〈芸術〉。記憶を「物語」として語り聞かせることで、門を開く。
結果: 通過する際、PCの「バックストーリー」から一つ項目が抹消される。記憶を失った虚無感により、最大MPが1D6減少する。
第三章:鏡合わせの挿絵
絵本の中の鏡に、自分たちの「理想の姿」や「あり得たはずの幸せな結末」が映し出される。
ロールプレイ: 偽りの幸福に溺れ、絵本の中に留まろうとする誘惑との戦い。互いの「本当の弱さ」を指摘し合い、正気に引き戻す。
判定: 〈精神分析〉。甘い囁きを拒絶し、過酷な現実(自分自身)を再定義する。
第四章:インクの奔流
物語の終盤。世界を「白」に戻そうとする「消しゴムの怪物(ティンダロスの猟犬の変異種)」が襲い来くる。
ギミック: 1ラウンドごとに、PCの「最高値の技能」が1D10ポイントずつ削り取られる。
判定: 自分の存在が消える前に、世界の余白に「自分たちの生存」を書き込む〈POW(精神力)〉対抗。
第五章:最後の一行
出口となる「裏表紙」。そこへ辿り着くには、誰か一人がこの物語の「挿絵(犠牲)」として、永遠に絵本の中に残らなければならない。
真相: この世界は、誰かの「忘れ去られたかった記憶」が作り出した殻だった。
クライマックス: 1D100の最終ロール(幸運)。全員で手を繋ぎ、物語を「中途半端なまま」強制終了させることで、未完のまま現実へ弾き飛ばされる。
■結末:分岐する3つのエンディング
Happy End:『書きかけの明日』 (現実に戻る。失った記憶は戻らないが、空いた心の隙間には「新しい思い出」を書き込む自由がある。白紙になった手帳を手に、新しい生活が始まる。)
Normal End:『灰色の残像』 (生還するが、時折、自分の世界の色彩が「鉛筆描き」に見える発作が起きる。大切な人の名前を、ふとした瞬間に思い出せなくなる欠落感を抱えて生きていく。)
Bad End:『絶版(ロスト)』 (脱出失敗。探索者たちの物語は「ボツ原稿」としてシュレッダーにかけられる。現実世界では、彼らの存在そのものが「最初からいなかったこと」として歴史から抹消される。)
■ストーリーに関するあとがき
このシナリオは、目に見える恐怖ではなく「自分という個性が削られていく恐怖」に焦点を当てています。 TRPGにおいてプレイヤーが最も愛着を持つ「バックストーリー」や「技能値」をリソース(代償)として扱うことで、単なる数字以上の重みをダイスロールに持たせる狙いがあります。 メルヘンチックな舞台装置と、クトゥルフ神話特有の「理不尽な喪失」のコントラストを楽しんでいただければ幸いです。
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