【CoCシナリオ公開】3時間で回せる探索シナリオ『零時すぎの摩天楼、肉の雨は静かに』【TRPG】
おはようございます、早坂いのるです。
今回は、現代日本を舞台にした**「脱出不能な論理パズル×バイオホラー」**をテーマに構成しました。
『零時すぎの摩天楼、肉の雨は静かに』
「エレベーターの扉が開くたび、世界は少しずつ『正解』から遠ざかっていく。ねえ、君たちの体、さっきより少し……重くなっていない?」
■シナリオ概要
システム: 新クトゥルフ神話TRPG(第7版)
形式: 現代日本・クローズド(2~4人向け)
推定時間: 3~4時間
推奨技能: 〈目星〉〈聞き耳〉〈跳躍〉〈医学〉または〈応急手当〉
舞台: 深夜の閉鎖された超高層ビル(上下移動を伴う異空間)
テーマ: 閉鎖空間、変異する肉体、エレベーター・パズル
■あらすじ
深夜24時過ぎ。残業を終えた探索者たちが乗り込んだエレベーターは、1階に止まることなく下降を続ける。表示パネルに現れたのは、存在しないはずの「地下666階」。 扉が開くたび、見慣れたオフィスフロアは、脈動する肉壁と内臓のような配管が這い回る「生きた巨大な消化器官」へと変貌していく。探索者たちは、自分たちの肉体がこのビルの一部として溶け落ちる前に、異界の心臓部を破壊し、夜明けまでに生還しなければならない。
■ハンドアウト(HO)
PC1:『逃走する先導者』 ビル構造に精通している。〈ナビゲート〉にボーナス。
PC2:『観察する生存者』 異変をいち早く察知する。〈聞き耳〉にボーナス。
PC3:『分析する執刀医』 肉体の変異を遅らせる。〈医学〉にボーナス。
PC4:『抵抗する防衛者』 迫りくる肉塊を押し止める。〈近接戦闘〉にボーナス。
■五章構成:変異する階層と生存のプロトコル
第一章:沈下する日常
深夜24時05分。エレベーターが不自然に揺れ、照明が明滅する。
描写: 扉が開くと、そこは「さっきまでいたはずのフロア」だが、壁は赤黒く脈動し、湿った生暖かい風が吹き抜けている。
判定: 〈目星〉。非常階段の扉が「皮膚のような膜」で完全に癒着し、塞がれていることに気づく(SAN 0/1)。
第二章:共有される痛み
エレベーターを動かす制御盤は、血液をエネルギー源としている。
アクション: 各階にある「バイオ・キー(肉の塊)」を回収し、制御盤に埋め込む作業。この際、PCの誰かが「自分のHP(1点)」を直接捧げる必要がある。
結果: 成功すれば次の階へ。失敗すれば、その場にいた全員の指先が少しずつ溶け合い、〈DEX(器用さ)〉が一時的に5減少する。
第三章:エレベーター内の静かな侵食
階を移動するたび、エレベーター内の空気が粘り気を帯びていく。
ロールプレイ: 体が重くなり、鏡に映る仲間の顔が「見知らぬ異形」に溶けかかっているように見える錯覚。お互いの名前を呼び合い、自己の境界線を維持する。
判定: 〈精神分析〉。パニックに陥りそうな仲間を落ち着かせ、肉体の変貌を一時的に精神力で押し留める。
第四章:肉の奔流、最下層の鼓動
エレベーターが暴走し、最深部「ビルの胃袋」へ突っ込む。
ギミック: 1ラウンドごとに、PCたちの足元が「床(肉壁)」と同化し始める。
判定: 巨大な心臓部(ショゴスの一部)に対し、回避を行いながら攻撃を叩き込む〈CON〉あるいは〈近接戦闘〉。
第五章:再構築される世界
「核」を破壊した瞬間、ビル全体が崩壊(あるいは溶解)を始める。
真相: このビルはショゴスを核とした「捕食型異空間」だった。脱出するには、エレベーターを「地上」ではなく「屋上」へ、限界を超えて射出させなければならない。
クライマックス: 1D100の最終ロール(幸運)。ビルの窓を突き破り、夜空へ飛び出す一瞬の浮遊感の中で、二度と会えないかもしれない仲間の顔を脳裏に刻む。
■結末:分岐する3つのエンディング
Happy End:『明けない夜はない』 (屋上から隣のビルへ飛び移り生還。朝焼けの中で、自分たちの指が5本あることに安堵する。ビルの怪異は跡形もなく消え、翌朝のニュースでは「老朽化による部分的な損壊」と報じられる。)
Normal End:『混ざり合う境界線』 (生還するが、PCたちの指紋や網膜データが「他人のもの」と入れ替わっている。日常生活に支障はないが、鏡を見るたびに、自分ではない誰かの視線を感じるようになる。)
Bad End:『永遠の地下666階』 (脱出失敗。探索者たちはビルの建材として完全に取り込まれる。次に誰かが深夜のエレベーターに乗ったとき、ボタンを押しに来る「肉の手」は、かつての君たちのものだ。)
■ストーリーに関するあとがき
このシナリオは、現代社会の象徴である「無機質なオフィスビル」が、最も生理的に忌避される「有機的な生肉」へと変質していく恐怖を描いています。 探索者が直面するのは、単なる外敵ではなく「自分自身の肉体が世界に溶けていく」というアイデンティティの消失です。複数人プレイにおいては、HPを分け合ったり、互いの存在を確認し合うロールプレイが脱出への鍵となります。エレベーターという狭い密室で、極限状態の協力関係を楽しんでいただければ幸いです。
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