【CoCシナリオ公開】2~4人で回せるシナリオ『君の心臓はインクに溶けて ―閉ざされた編集部での新作会議』【TRPG】
おはようございます、早坂いのるです。
今回のテーマは「小説の新作会議」です。
コミカルかつスリリングなシナリオとなっています。
『君の心臓はインクに溶けて ―閉ざされた編集部での新作会議』
「素晴らしいプロットだ。……だが、足りない。読者の魂を『理解』させるには、インクに君たちの正気を混ぜ、頁(ページ)にその恐怖を刻み込む必要がある。さぁ、ペンを握れ。この物語が完結する時、世界は真の『エンディング』を迎えるんだ。」
■ シナリオ概要
システム: 新クトゥルフ神話TRPG(第7版)
形式: 現代日本・クローズド(2~4人向け)
推定時間: 2〜3時間(探索・ロールプレイ重視)
推奨技能: 〈図書館〉〈芸術/製作(執筆、描画、企画など)〉〈心理学〉〈対人関係技能〉
舞台: 大手出版社「暗黒社」の最上階にある、外界から遮断された「開かずの会議室」。
テーマ: 創作の苦しみ、言霊の暴走、虚構と現実の浸食。
■ あらすじ
探索者たちは、弱小レーベル「ファンタズマ文庫」の存続をかけた新作会議に集まった、編集者や作家たちだ。 会議が始まると同時に、会議室の扉は消失し、窓の外は見たこともない暗黒の宇宙へと変貌する。 彼らが手に取った資料の中には、かつて狂った魔導師が記したとされる「禁断のプロット」が混じっていた。 企画を練り上げるほどに、設定した「物語」が会議室内に実体化し、探索者を襲う。 果たして彼らは、この地獄のような会議を終わらせ、無事に「現実」という名の日常へ入稿できるのか。
■ ハンドアウト(HO)詳細
PC1:『未完成のミューズ』
「私の物語に、続きを。……君が完成させてくれるんだろう?」
役割: 今回の新作会議のメインヒロイン(またはヒーロー)のモデル。編集長が最も「執着」している最高傑作の素体。
初期異変: 肌が白磁のような「上質な紙」の質感に変わり、感情が高ぶると指先からインクが滲み出す。
特記(ボーナス): 〈POW〉+10。また、編集長や怪物の攻撃を一度だけ「設定上の加護」として無効化できる(ただし、その代償として大切な記憶を一つ失う)。
背景: 自分が何者なのか、過去の記憶が曖昧。ただ、この会議室を「懐かしい」と感じてしまう。
PC2:『美の設定鑑定士』
「その設定、破綻しているね。……世界を再構築するなら、もっと残酷な理論が必要だ。」
役割: 物語の矛盾を見抜き、世界を定義する者。プロットの根幹を握る「設定厨」の作家。
初期異変: 片目が「レンズ」のような機械的構造に変質し、視界に他人のステータスや「物語上の役割」がタグとして表示される。
特記(ボーナス): 〈鑑定〉および〈科学(数学または物理学)〉に+20%。〈目星〉にボーナス・ダイス。
背景: 常に「面白いか、否か」で物事を判断する。現実よりも設定資料集の中に住んでいるような人間。
PC3:『色彩の守護者』
「文字だけじゃ伝わらない。……この絶望を、世界を塗りつぶすほどの鮮やかさで描かせてくれ。」
役割: 視覚的イメージの創造主。言葉にできない恐怖を、色彩と形に変換するイラストレーター。
初期異変: 自身の血液が「鮮やかな原色の絵具」に変わっている。彼が触れた壁には、意図せずとも「予言的な絵」が浮かび上がる。
特記(ボーナス): 〈芸術(描画)〉+30%。彼が描いた武器や防具は、1シーンの間だけ実体化して使用できる。
背景: かつては純粋な芸術を愛していたが、商業誌の「売れるためのグロテスク」に魂を削り、色彩感覚が狂い始めている。
PC4:『調律の校閲者』
「一文字の誤字が、世界の均衡を崩す。……この違和感、何かが書き換えられている。」
役割: 隠されたバグや物語の歪みを察知する者。論理の番人。
初期異変: 空間が立てる「パチパチ」というタイプライターの音や、文字の羅列が空耳として聞こえる。
特記(ボーナス): 〈聞き耳〉+20%。神話生物の「特殊能力」の予兆を事前に察知できる。
背景: 過去に担当した作品が「現実」を浸食し、崩壊した事件を知っている。この会議の異常性を最も冷静に、かつ恐れている。
■ 共通の隠し設定:『執筆の代償』
このシナリオでは、技能を「プッシュ」して失敗したり、特定のイベントを経験するたびに、PCたちの身体はより**「物語の構成要素」**へと近づきます。
PC1は、自我を失い完全な「ヒロイン」という概念へ。
PC2は、感情を失い「設定資料」というデータへ。
PC3は、肉体を失い「一葉の挿絵」へ。
PC4は、存在を消され「行間の空白」へ。
この「人間性の消失」の恐怖が、シナリオ全体を貫く緊張感となります。
■ 五章構成:校了する運命、戦慄の校閲
第一章:空白の議事録
「――さぁ、始めようか。世界を書き換えるための、最高の会議を。」
■ 導入:暗黒社・第444特別会議室
探索者(PC)たちが意識を取り戻すと、そこは窓のない重厚な会議室です。中央には黒檀の巨大な円卓があり、PC1〜4の席にはそれぞれの名前が記されたネームプレートと、手付かずの豪華な茶菓子、そして**「真っ白な原稿用紙」**が置かれています。
異変の描写:
部屋には扉がありません。壁一面を埋め尽くすのは、背表紙にタイトルがない無数の「真っ黒な本」です。
天井のシャンデリアは、電球ではなく「青白い眼球」のような結晶が怪しく発光しています。
会議室の時計の針は、カチカチと音を立てながら「逆回転」しています。
■ イベント1:編集長の「開会宣言」
円卓の上座に、鬼頭編集長が座っています。彼は眼鏡の奥の瞳を隠したまま、低い声で告げます。
「揃ったな。諸君、今回の新作のテーマは『終末』だ。ただし、ありきたりなものではいけない。読者が、そしてこの世界が、心から震え上がるような……『本物の絶望』をプロットに落とし込んでもらう。」
NPC:九十九乱歩の介入 PCたちの隣で、派手なシャツを着た九十九がニヤニヤしながらスマホをいじっています。「いやー、今回のメンツなら、歴史に残る『神回』になりそうだね。僕も楽しみだよ」と、緊張感を削ぐような軽い口調で話しかけてきます。
■ 調査と判定
PCたちは、現状を把握するために以下の行動をとることができます。
1. 自身の身体の確認(SANチェック)
目覚めた直後、PCたちは自分の身体に起きている「前兆」に気づきます。
判定: 全員強制の**〈正気度(SAN)〉判定**。
成功: 0 / 失敗: 1D3。
描写:
PC1: 指先が驚くほど滑らかになり、触れた原稿用紙に意志とは無関係に黒い染みが広がる。
PC2: 片目の視界に「耐久力」「MP」といった不吉な数字がデジタルノイズのように浮かぶ。
PC3: 喉が焼け付くように熱く、咳き込むと鮮やかな「真っ赤な絵具」が手のひらに飛び散る。
PC4: 壁の奥から、無数のタイプライターが自分の名前を連打する音が聞こえてくる。
2. ホワイトボードの確認
〈目星〉判定:
成功: 予定表に「14:00 導入」「15:00 葛藤」「16:00 破滅」と書かれている。しかし、16:00の横には、探索者たちのフルネームが「死亡」という文字と共に並んでいることに気づく。
クリティカル: その文字が、今まさに書かれたばかりの「まだ乾いていないインク」であることに気づきます。
3. 周囲の書棚の調査
〈図書館〉判定:
成功: 棚にあるのは本ではなく、すべて「ボツになった人間」の履歴書や日記であることを知る。
失敗(プッシュロール提案): 無理に本を引き抜こうとすれば、本が「悲鳴」を上げ、PCの手を噛みちぎろうとします(1D2のダメージ)。
■ クライマックスへの予兆:不協和音
調査が進む中、会議室のスピーカーから、**栞(しおり)**のノイズ混じりの声が響きます。
「……書かないで。……言葉に……出さないで……それは、彼を呼ぶための……儀式……」
その直後、会議室の中央にある「真っ白な原稿用紙」から、黒い泥のようなインクが噴き出し、人の形を成そうと蠢き始めます。
第一章 終了 探索者たちは、ここが単なる会議室ではなく、自分たちの命と物語を天秤にかける「祭壇」であることを理解し始めます。
第二章:没案の墓場
「過去を捨てられない者に、新しい物語は書けない。……さぁ、その『不要な記憶』をインクに変えて差し出せ。」
■ 概要
第一章の終わりに現れた「インクの塊」は、編集長の一瞥とともに霧散します。鬼頭は「まだ資料が足りないようだ。諸君、隣の『資料室』から必要なインスピレーションを拾ってこい」と命じます。PCたちは、いつの間にか壁に現れた古びた扉を抜け、無限に続くかのような書庫へと足を踏み入れます。
■ 探索場所:無限書庫(資料室)
そこは天井が見えないほど高く、通路の両脇には膨大な量の「ボツ原稿」が山積みになっています。
1. 記憶の結晶化(7版要素:プッシュロールの代償)
PCたちが優れた設定や脱出のヒントを探そうとする際、**〈図書館〉や〈芸術/製作〉**の判定を行います。
判定に失敗し、さらに「プッシュ」を宣言する場合:
代償として、自身のバックストーリーにある**「大切な記憶(家族、友人、かつての夢など)」**が一つ、結晶となって口から吐き出されます。
喪失の描写: その記憶を失ったPCは、自分のプロフィールからその項目を抹消しなければなりません。
SANチェック: 1/1D4。
2. 「クティラの夢」と禁断のプロット
〈図書館〉成功: 大量のボツ原稿の中に、一冊だけ脈動する革装丁のノートを見つけます。
内容: 「ルルイエの守護者、クティラの再誕」について。この会議室全体が、彼女を現代に「ラノベのヒロイン」として受肉させるための巨大な召喚魔法陣であることが記されています。
〈鑑定〉(PC2にボーナス): このノートの筆致が、PC2の将来の筆跡、あるいはPC1がかつて書こうとして諦めた物語の文体と酷似していることに気づきます。
■ イベント2:栞(しおり)との接触
書棚の影から、顔の半分が紙片で隠れた女性、栞が現れます。彼女はPCたちに、指を口に当てるジェスチャーをして囁きます。
「あの方は、あなたたちを完成させるつもりよ。……でも、それは『個』としての死を意味するわ。このペンを受け取って。これは、書かれた運命をわずかに掠れさせる『白の修正液』よ。」
入手アイテム:『白の修正ペン』
クライマックスで使用可能。神話生物の設定や攻撃を一度だけ「書き換える(無効化する)」ことができる。
■ クリーチャーの影:這いよる文字
探索中、山積みの原稿用紙がひとりでに舞い上がり、PCたちの身体に貼り付こうと襲いかかってきます。
回避判定: 失敗すると、肌に「打ち切り」「無価値」「才能なし」といった残酷な文字が刻まれ、1D3の耐久力減少(精神的な抉りによる肉体劣化)。
■ 章の結末:プロットの確定
PCたちが情報を持ち帰り、再び会議室に戻ると、円卓の上にはいつの間にか**「決定稿」**と書かれた重厚なファイルが置かれています。 そこにはPCたちの身体的特徴をモデルにした、悍ましくも美しい「異形の新ヒロイン(クティラ)」のデザイン画が、PC3の筆致で描かれています。
第二章 終了 PCたちは、自分たちが「創る側」から「創られる側の素材」へ堕ちつつある恐怖を突きつけられます。
第三章:編集長の断罪
「甘い、甘すぎる。……そんな整合性の取れない『命』に、誰が共感するというのだ?」
■ 概要
資料室から戻った探索者たちを待っていたのは、冷徹な光を放つ鬼頭編集長の眼差しでした。円卓の中央には、第二章で確定した「決定稿」が鎮座しています。ここからは、探索者たちが書き上げようとしている物語(=自分たちの生存)が、編集長という名の「世界の理」に裁かれる、過酷な校閲が始まります。
■ イベント3:死のプレゼンテーション
編集長は、PCたち一人ひとりに新作の「設定」について鋭い問いを投げかけます。これは単なる会議ではなく、精神の核を削り合う戦闘です。
校閲の試練: 編集長はPCのハンドアウトに紐づいた「矛盾」を突いてきます。
PC2(設定)へ: 「この物語の結末には、救いがない。君の論理は、読者を絶望させるためだけの機械か?」
PC3(絵師)へ: 「色が濁っている。君が描いているのは理想か、それとも自身の死体か?」
判定: **〈対人関係技能(説得、言いくるめなど)〉または〈芸術/製作〉**の対抗判定。
成功: 編集長を一時的に黙らせる。
失敗: 編集長の放つ「ボツ(言霊)」が物理的な衝撃波となり、1D4のダメージを受ける。同時に、自らの身体の一部が「文字の羅列」に変わり、感覚が消失していく。
■ ギミック:侵食するクティラの影
会議室の温度が急激に下がり、床から海水のような黒い液体が染み出し始めます。
描写: 決定稿のイラストから、無数の触手のような「文字の鎖」が伸び、**PC1(未完成のミューズ)**の身体に絡みつきます。
〈心理学〉判定:
成功: 編集長がPC1を「人間」としてではなく、神を降ろすための「器」としてしか見ていないことに気づく。彼の眼鏡の奥に、人間らしい瞳など最初から存在しなかったことがわかる(SAN 1/1D4)。
■ 栞の助言と逆転の兆し
混乱の中、お茶を運んできた栞が、PCの耳元で囁きます。
「……物語を終わらせる権利は、作者にしかないわ。編集長に従う必要はない。プロットを『改竄』しなさい。」
アクション: 編集長の隙を見て、決定稿に**「物語の矛盾(デウス・エクス・マキナ)」**を書き込む。
判定: **〈聞き耳〉(PC4にボーナス)で編集長の足音を察知しつつ、〈芸術/製作(執筆や描画)〉**で原稿を書き換える。
成功時: 部屋を覆っていた暗黒がわずかに晴れ、窓の外に一瞬だけ「現実の街の灯り」が見える。
■ 章の結末:決裂
探索者たちの抵抗に気づいた編集長が、ついに立ち上がります。
「……よかろう。言葉で理解できないのであれば、その肉体に直接『完結』を刻み込んでやる。」
彼の背後から、無数の原稿用紙が翼のように広がり、会議室の壁が剥がれ落ちていきます。剥がれた壁の向こう側は、巨大な活字が浮遊する「虚無の海」へと繋がっています。
第三章 終了 もはや編集長は人間ではありません。彼は物語を完結させるためだけに存在する、冷酷な「終わりの執行者」へと変貌しました。
第四章:剥落する楽園
「締め切りは過ぎた。……ここからは、物語が勝手に歩き出す時間だ。」
■ 概要
編集長の咆哮とともに、会議室の「形」が完全に崩壊します。壁や天井は剥がれ落ち、そこには空も地面もなく、ただ無限に漂う**「活字の激流」と、巨大な「万華鏡のような幾何学模様」**が広がる異界が露出します。PCたちが立っている円卓だけが、唯一の足場として虚無に浮いています。
■ ギミック:文字の激流と結晶化の加速
この章では、PCたちの身体変質が最終段階に達します。
環境ルール:
ラウンド毎に全員**〈DEX〉**判定。失敗すると、流れてくる巨大な「ボツ原稿」が衝突し、1D3のダメージ。
身体の結晶化が進み、関節が「硝子」や「ペン軸」のように固まり始めます。すべての物理的行動にペナルティ・ダイスを1つ課します。
「幸運」の消費: 身体が動かなくなった際、**〈幸運〉**を消費することで、「たまたまそこに誰かの書き置き(足場)があった」「インクの雨がクッションになった」というラノベ的な展開を発生させ、窮地を脱することができます。
■ イベント4:九十九乱歩の正体
虚無の中を平然と歩きながら、九十九がPCたちの前に現れます。彼の姿は巨大な黒い影へと膨れ上がり、数多の貌(かお)が浮かんでは消えます。
「いいね、これこそ最高のクライマックスだ! PC1は神の器になり、他のみんなはそれを彩る挿絵や注釈になる。……ねぇ、最後に最高の『どんでん返し』を見せてよ。僕を退屈させないでくれ。」
〈心理学〉または〈クトゥルフ神話〉: 彼がこの惨劇を楽しんでいる「這い寄る混沌」の化身であると直感します(SAN 1D3/1D6)。
■ 逆転の鍵:NPCの形見
虚無に飲み込まれそうになった時、栞(しおり)が完全に「原稿の束」へと姿を変え、PCたちの手に収まります。
アイテム:『栞の遺稿(白紙の原稿)』 これまでの章で手に入れた『白の修正ペン』と組み合わせることで、「世界の理(プロット)」を書き換える唯一の武器となります。
PC4(校閲者)の活躍: 〈聞き耳〉により、空間の歪みから「この世界のバグ(弱点)」となる音を聴き取ります。「あそこだ! あの文字を消せば、この悪夢は止まる!」
■ クライマックスへの突入:深淵からの重版
虚無の底から、第二章で描かれたデザインそのままの姿をした**「クティラの受肉体(名状しがたいラノベヒロイン)」**が、巨大な触手を伸ばして円卓を粉砕しようと迫ります。
■ 章の結末:筆を執る勇気
PCたちは、迫りくる神話的恐怖を前に、最後の判定を迫られます。
「逃げ場はない。……書くか、消されるか。どちらかを選べ。」
第四章 終了 最終決戦の舞台は整いました。PCたちは自らの手で「自分たちのエンディング」を書き上げなければなりません。
第五章:泥にまみれた産声
「……これが、君たちが選んだ結末(エンド)か。醜く、不完全で……だが、なんと生々しい。」
■ 概要
粉砕される円卓、渦巻く活字、そして眼前に迫る「名状しがたいラノベヒロイン(クティラの受肉体)」。探索者たちは、虚無へと落下しながら、自らの命をペンに変えて最後の「改稿」に挑みます。
■ クライマックス:最終校閲戦闘
物理的な武器は通用しません。探索者たちが手にした**『栞の遺稿(白紙の原稿)』**に、自分たちの生存条件を書き込み、神話生物の「設定」を上書きする必要があります。
アクション:運命の最終執筆
判定: 各HOの推奨技能(〈芸術/製作〉〈対人関係技能〉〈聞き耳〉〈鑑定〉)のいずれかを選択。
難易度: ハード(成功率1/2)。
7版要素「プッシュロール」: 失敗した場合、最後のプッシュが可能です。ただし、失敗すれば即座に「物語の登場人物」として完全に取り込まれ、ロストとなります。
演出: 「彼女の触手は、ただの『リボン』に過ぎない!」「この絶望は、次の章への『伏線』だ!」と、恐怖を物語の要素として定義し直すことで、怪物を弱体化させていきます。
■ ヴィクトール(鬼頭編集長)との対峙
怪物の背後で、鬼頭編集長が狂気的な笑みを浮かべて問いかけます。
「永遠の傑作(標本)となり、この美しい虚構の中で生き続けるか? それとも、明日をも知れぬ、醜く泥にまみれた『現実』へと帰るか? ……選ぶがいい、作家諸君!」
■ 最終判定:〈芸術〉または〈DEX〉対抗
崩壊する世界から「現実の出口」を見つけ出し、飛び込めるかの判定です。身体の結晶化(変質)が進んでいるため、身体的な動きは困難を極めます。
■ 結末:分岐する3つのエンディング
Happy End:『不完全な傑作』
(条件:最終判定に成功し、プロットの書き換えを完遂する) 目が覚めると、そこは暗黒社のビルのエントランスだった。手元には、ボロボロになった一冊のノート。 身体の変質は止まったが、PC1の指先は紙のように白く、PC3の描く絵からは異界の熱量が消えない。だが、彼らは「いつか死ぬ人間」として歩き出す。彼らの新作は、以前よりもずっと、読む者の魂を激しく揺さぶるものになるだろう。
Normal End:『連載継続の呪い』
(条件:脱出には成功したが、プロットの書き換えが不完全だった) 現実に戻ることはできた。しかし、あの会議室での出来事が「最高に面白いラノベ」として勝手に世の中へ出版されてしまう。 作品は大ヒットし、富と名声を得るが、PCたちは一生「続編」を書かされる恐怖に怯えることになる。時折、自分の肌がインクのように溶ける錯覚に襲われながら。
Bad End:『永遠のギャラリー(絶版)』
(条件:最終判定に失敗、または全滅) 探索者たちの意識は、白磁の彫像、あるいは一葉の挿絵へと固定される。 鬼頭編集長は満足げにそれらを棚に並べ、灯りを消す。そこには苦痛も締切も、老いもない。ただ、二度と瞬きをすることさえ叶わない、永遠に「読まれない物語」が完成しただけだった。
■ クリア報酬
生還報酬: 1D10の正気度回復。
栞の解放: 1D6の正気度回復。
技能成長: 使用した〈芸術〉または〈製作〉技能に+10%のボーナス。
「お疲れ様。……さぁ、次の締め切り(運命)に向けて、筆を執ろうか。」
■ 主要NPC:深淵の編集部員たち
1. 鬼頭 豪将(きとう ごうしょう)
役割: 暗黒社の編集長 / 会議の絶対的支配者
外見: 仕立てのいい黒いスーツを着た、初老の男性。常に眼鏡が光を反射して目は見えない。手には「ボツ」と刻印された巨大な印鑑を持っている。
性格: 冷酷無情で、徹底した成果主義者。しかし、かつては誰よりも物語を愛していた。
ステータス(目安):
APP: 50 / POW: 90 / EDU: 95
特記: 彼の「ボツ」宣告は、対象の正気度を削り、物理的なダメージ(1D4)を与える「言霊」の力を持つ。
台詞: 「この程度のプロットで読者の魂を揺さぶれると思ったか? ……ボツだ。君の存在ごと書き直したまえ。」
2. 栞(しおり)
役割: 編集長秘書 / 先代のミューズ(NPC枠)
外見: 時代錯誤な和服にエプロン姿の女性。顔の半分が常に原稿用紙のような紙片で隠れている。
性格: 献身的だが、虚無的。第三章でPCたちに接触し、会議を終わらせるためのヒントをくれる。
正体: かつてこの会議室で「物語」に取り込まれ、人としての形を失いつつある過去の作家。
台詞: 「これ以上、言葉を紡がないで。……そのペンは、あなたの命を吸うための針なのよ。」
3. ニャルラトホテプ(人型の化身:九十九 乱歩)
役割: 通りすがりの「謎の超売れ筋作家」 / 混沌の扇動者
外見: 派手な柄シャツを着た、胡散臭い笑顔の青年。常にタブレットを持ち歩き、PCたちのパニックをニヤニヤしながら「取材」している。
性格: 陽気でフレンドリーだが、その言葉は常にPCたちの疑心暗鬼を煽る。
役割: 直接攻撃はしてこないが、PCが「プッシュロール」を宣言する際、「もっと過激な設定にしようよ」と甘い誘いをかける。
台詞: 「最高だね! その絶望、まさに今のラノベ界に足りないスパイスだよ。さぁ、続きを書いて。結末は僕が決めてあげるから。」
■ NPCとの関係性ギミック
編集長との「校閲戦闘」: 通常の戦闘ではなく、〈対人関係技能〉や〈芸術/製作〉を用いて、自分たちのプロットの正当性を主張する「議論」が展開されます。編集長のPOWに抗えないPCは、次第に自らの設定(存在理由)を失い、透明になっていきます。
栞の「遺稿」: 彼女から渡される「脱出の鍵」は、彼女が人間だった頃に書き残した、まだ汚れていない白紙の原稿です。これはクライマックスで、神話生物の設定を「書き換える」ための唯一の武器になります。
■ キーパー(KP)へのヒント
NPCを通じて、PCたちに**「書かなければ出られないが、書けば書くほど怪物が強くなる」**というジレンマを常に意識させてください。編集長は「恐怖」を、栞は「悲劇」を、九十九は「嘲笑」を象徴するように演じると、シナリオのコントラストが際立ちます。
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