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攻略日記Vol.1 夫クエストと家族パーティー フリーランス5

かつての「毒の沼地」での戦い

今から振り返れば、夫婦ともに小学校の教員としてフルタイムで働いていたあの頃は、まさに「毒の沼地」を素足で歩き続けるような毎日だった。
そのころ、私のこの人生RPGは無理ゲー中の無理ゲーだった。
どこかの村で宿泊してHPを回復するなら商店で「安全靴」や「トラマナの靴」が欲しい・・・そんな日々だった。(ドラクエ世代がバレる( *´艸`))

夕方の職員室。鳴り止まない電話と、終わりの見えない会議。そして容赦なく迫る、保育園や学童のお迎え時間。
「今日はどっちが迎えに行くのか。」
それは、夫婦にとって一日のうちで最もスリリングで、最もギスギスする「突発クエスト」だった。

突然の保護者対応に追われ、慌てて夫に電話をかける。
「ごめん、どうしても抜けられへん。お迎え、お願いできる?」
返ってくるのは、
「こっちも大変やねんけど!」
という、刺すような言葉。お互いに
「自分の方が余裕がない」「自分の方が頑張っている」
というポイントを競い合い、電話越しに大変さを共有(という名のぶつけ合い)する日々。

結局、どちらかが会議を無理やり中退して飛び出すか、
あるいは保護者対応という「中ボス」に捕まって職務を続行するか。
ようやく帰宅しても、家の中に安らぎはない。
お互いの不機嫌を、重たい無言とともにリビングにぶつけ合う。
当時の我が家は、HP(体力)もMP(精神力)も常にゼロの、荒廃したダンジョンそのものだった。

「赤ペン1本」も置かないと決めた、あの日の絶望

そんな私たちが、ある時決めた暗黙のルールがあった。
「学校の話も、仕事も、一切家に持ち込まない」
このルールが徹底されすぎて、我が家からは赤ペン1本すら姿を消した。

なぜそこまで頑なになったのか。
それには、今思い出しても冷や汗が出る「あの日」の事件があったからだ。

私が育休明けで仕事に復帰したばかりの頃。
どうしても終わらなかった児童のテスト採点を、自宅に持ち帰って食卓で進めていた。
ほんの少し、目を離した隙・・・
まだレベル0(もしくは99)よちよち歩きの娘が、
私の手にあった赤ペンを奪い取り、
まだ真っ白な、誰かのテスト用紙に思いっきり「芸術」を爆発させた。

「……っ!!Σ(・□・;)」

声も出なかった。
明日返却しなければならない、大切なテスト。
学校へ行き、児童本人とその保護者に平謝りし、なんとか事なきを得た。
「お子さん小さいと大変ですよね。この子のテストに特別感出ましたわ。」
と優しい保護者の言葉。
私は本当に恵まれた教師生活だった・・・・が、あの時の心臓が止まるようなひやひや感は一生忘れられない。

「家は、戦場(学校)であってはならない。」
「親は家庭で教師をしてはいけない。」

その日から、私の家には赤ペンも、採点スタンプも、授業準備の資料も一切置かないことにした。
それは、教員としての私を守るためではなく、
母親としての私と、家族の聖域を守るための「勇者の決断」だった。

「伝説の勇者」としての覚醒:夫の病休という長期イベント

その後、私たちのパーティに最大の試練が訪れた。
夫が鬱で病休に入ったのだ。

あれほど激しかった「どっちがお迎えに行くか合戦」というギスギスした争いは消えたが、代わりに私を待っていたのは、全く別の難易度のクエスト。 夫を一人にしておけない不安。
幼い子供たちの送り迎え。
家事。
そして自分の仕事。
いわゆる「ワンオペ」という状態だ。

けれど、不思議なことに、この時期の私は驚くほど穏やかだった。
「ここで私が倒れたら、このパーティは全滅する」
「夫の命に関わることなら、これくらいの苦労はなんてことない」

そう覚悟を決めた瞬間、自分の中に眠っていた「伝説の勇者」が覚醒したのだと思う。
不思議なもので、覚悟を決めた勇者というのは、一人で重い荷物を背負っていても、なぜかイライラせずに歩き続けられるもの。
あの時の私は、間違いなく自分一人で世界を救おうとする孤高の勇者だった。

無職になった今、あえて「夫クエスト」をイージーモードでプレイする

そして2025年3月、私たちは夫婦揃って小学校を退職。
晴れて「夫婦無職」という、世間から見れば奇妙なパーティになった。

面白いことに、教員時代や病休中よりも、今のほうが夫の「イライラ」がダイレクトに飛んでくることがある。
お互いに無職になったことで、彼の中にあった「申し訳なさ」というリミッターが外れ、甘えや引け目がない分、感情が剥き出しになるのかもしれない(良いのか悪いのかは知らんけど)。

でも、今の私は以前の「必死な勇者」ではない。
絶賛、人生RPGを「イージーモード」でプレイ中なのだ。

夫が不機嫌そうに空気をピリつかせた瞬間、
私の脳内にはピコーン!と通知が鳴る。
「あ、今、夫クエスト発動したな。」

数年前、教員研修で受けた「アンガーマネジメント」では、怒りを鎮めるために6秒数えましょうと習った。
でも、今の私に6秒も必要ない。
だって、これは私が自分で「プレイする」と決めて選んだゲームだから。

目の前のイライラしている夫は、倒すべき「敵」ではない。
私の頭の中のプロジェクターは、彼を
「パーティに取り込むための、ちょっと面倒なツンデレキャラ」
として映し出している。
役職は吟遊詩人。
あんまりレベルも高くない(笑)

そう設定を変えた瞬間、私の指先は自然と「慈愛のコマンド」を選択。
「そんなにカリカリせんと、これでも食べて落ち着き。経験値もらえるで」 心の中でそう呟きながら、軽やかにクエストをこなす。

するとどうでしょう。(ビフォアーアフターの名曲♬)

あんなに尖っていた夫のトゲが、数時間後にはポロッと取れて、
また私の後ろを子どもたちと一緒にトボトボと(笑)歩いてくれるようになるのだ。

最強(?)のパーティ編成:勇者のレベルがすべてを救う

さて、ここで改めて、現在の我が家のパーティ編成を紹介しよう。

  • 勇者(私): パーティの主軸であり、実質的なリーダー。誰にも文句は言わせない。ときに魔法も使えるオールマイティプレーヤー。

  • 青魔導士(長女): 周りの空気や技をスッと吸収していくタイプ。MP消費と金遣いが荒い

  • 商人(息子): どこからかお宝(ネタ)を拾ってくる。ときに祖父母から謎の収入を得る。

  • 吟遊詩人(夫): 時に不安やイライラという名の「哀歌」を奏でるが、基本は真面目に笑いをかっさらう担当。perfumeあーちゃん推し。

世の中の夫婦は、戦士かモンク(夫)の後ろを賢者(妻)がついていくスタイルが多いのかもしれない。
でも、我が家は違う。
私は私のゲームを楽しむために、自ら剣を取り、先頭を歩く勇者となった。

このRPGの面白いところは、今のところ
「勇者(私)のレベルしか上がらない」
という仕様。

私が「人生はゲームだ」と悟り、目の前のトラブルを笑ってクリアするたびに、私のレベルだけがどんどん上がっていく。
吟遊詩人の夫や、自由な子供たちのレベルは一見変わっていないように見える。
でも、実はここには「隠し設定」があるのだ。

それは、
「勇者のレベルに引きずられ、パーティ全体の平均経験値が底上げされる」
というオートシステム。

私が機嫌よく、
レベルの高い視点で世界を捉えていれば、
パーティ全員が自然と「居心地の良いフィールド」に移動できる。
勇者のレベル上げについてきてさえいれば、
彼らは勝手に幸せなパラレルワールドへと運ばれていくわけだ。
これ、最強の攻略法ちゃうかな?

コマンド一つで、世界は自由自在

「昨日と今日」だけを見れば、夫婦無職の現実に変わりはないかもしれない。
でも、かつての「毒の沼地」にいた自分と比べれば、今の私は自由自在に魔法を使いこなし、どんなクエストも楽しんでいる自分に気づく。

「夫をどう見るか」「お金をどう捉えるか」
そんなコマンド一つで、目の前のスクリーンに映し出される世界は180度変わる。

もし今、あなたのパーティに「強敵」が現れているのなら、
一度コントローラーを置いて、設定画面を開いてみてください。
その敵は、もしかしたらあなたのレベルを上げるために現れた
「愛すべきツンデレな仲間」
かもしれませんよ。

私の人生RPGゲームは、まだ始まったばかり。
次はどんな隠しステージが現れるのか、
勇者はワクワクしながら明日へ進む( *´艸`)。


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