せびれのないクジラハナハナ 第五話 ゆっくりっていいね
青く澄んだ海の朝。
やさしい光が海の中まで差し込み、魚たちがきらきらと泳いでいました。

ハナハナは今日も、
「るるる〜♪ るるる〜♪」
と、楽しそうに歌を口ずさみながら、ゆっくり、ゆっくり海を泳いでいます。
すると、元気いっぱいのイルカたちが近づいてきました。

「ハナハナ、おはよう!」
「ぼくたちと競争しようよ!」
イルカたちは、海の中をぴゅーん!と走るように泳ぎます。
「すごいなあ。」
ハナハナは目を丸くしました。
「ぼくも速く泳げるようになりたい!」
「よーい、どん!」

イルカたちはあっという間に遠くまで泳いでいきます。
ハナハナも一生懸命、尾びれを動かしました。
ばしゃん!
ばしゃん!
「よいしょ…よいしょ…。」
でも、セミクジラのハナハナは、とても大きな体です。

どんなに頑張っても、イルカのようには泳げません。
やっと追いついたころには、
「はあ……はあ……。つかれちゃった。」

ハナハナは大きく息をつきました。
イルカたちは笑顔で言いました。
「やっぱりぼくたちは速いね!」
ハナハナは少しだけしょんぼりしました。
「ぼくは、ゆっくりしか泳げないんだ……。」
でも、しばらく空を見上げていると、心が少し落ち着いてきました。
「ぼくは、ぼくの速さでいいんだ。」
ハナハナはにっこり笑うと、また歌を口ずさみながら、ゆっくり、ゆっくり泳き始めました。
「るるる〜♪ るるる〜♪」
すると、そのときでした。

どこからか、小さく悲しそうな音が聞こえてきました。
「くすん……ぷるる……。」
ハナハナは歌うのをやめて、そっと耳をすませました。
ぷかぷかと流れてきた小さなクラゲが、細いロープに引っかかって動けなくなっていました。
クラゲは泣きそうな顔で、小さく体をゆらしています。
そのすぐ近くでは、小さな魚の子どもたちが困っていました。
「どうしよう。」
「助けて。」
ハナハナはすぐに近づきました。

ゆっくり泳いでいたので、小さな声にも気付くことができたのです。
「だいじょうぶ?」
ハナハナは大きな体をそっと近づけ、ロープを押して動かしました。
クラゲは、ふわり。
魚たちも、すいすい。
「ありがとう!」
「助かったよ!」
みんなは笑顔になりました。
少し遅れてイルカたちも戻ってきました。

「わあ!ハナハナ、助けていたんだね!」
「ぼくたち、速く泳ぐことばかり考えていて、気付かなかったよ。」
ハナハナは、にっこり笑いました。
「ぼくも、速く泳げたらいいなって思ってた。」
「でも、ゆっくりだから見つけられることもあるんだね。」
イルカたちもうなずきました。
「うん。速さもいいけど、周りを見ることはもっと大切なんだね。」

夕日が海をオレンジ色に染め始めました。
ハナハナは今日も、ゆっくり、ゆっくり泳ぎます。
そのやさしい速さで、海の小さな仲間たちを見守りながら。

🌸 今日のおはなしから
速く進むことよりも、まわりを思いやる心のほうが大切なことがあります。
ゆっくりだからこそ見えるもの、気づけることもあるのですね。 🌊💙
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心が少し軽くなったり、前を向けたと感じていただけたら、とても嬉しいです🍀
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