クロアチア、83分の決勝弾で2位通過 22歳スチッチが豪快ミドル
クロアチア2-1ガーナ。
引き分けでも、ラウンド32へ進める可能性は高かった。
無理に前へ出ず、勝点1を確保する。
そんな戦い方も選べた。
だが、クロアチアは守りに入らなかった。
試合開始からボールへ強く寄せ、前へ出る。
31分、22歳のペタル・スチッチが約30ヤードの位置から豪快なミドルシュートを突き刺した。
後半、ガーナに追いつかれても下を向かない。
83分。
ルカ・モドリッチのコーナーキックに、ニコラ・ヴラシッチが頭で合わせる。
ボールは左ポストの内側を叩き、ゴールへ吸い込まれた。
勝点1ではなく、勝点3。
3位通過ではなく、2位通過。
クロアチアが激闘を制し、すでに突破を決めていたガーナを順位表で追い抜いた。
ベテランの右足が放ったボールを、勝負強いアタッカーが仕留める。
そして、試合を最初に動かしたのは新世代の22歳だった。
クロアチアの過去、現在、未来が重なった90分だった。
第1章 引き分けでもよかった
試合前、クロアチアは勝点3。
引き分けでも、各グループ3位の成績上位枠に入り、ラウンド32へ進める状況だった。
一方のガーナは、すでにノックアウトステージ進出を確定させていた。
ただし、グループ順位は決まっていない。
勝てば首位通過の可能性もある。
クロアチアも勝てばガーナを追い抜ける。
両チームとも、次へ進む道は見えていた。
それでも、順位を一つでも上げるために勝利を狙った。
ワールドカップでは、何位で突破するかも重要になる。
次の対戦相手。
試合会場。
移動距離。
休養日。
順位が一つ変わるだけで、その後の道筋も変わる。
クロアチアは「突破できれば十分」ではなく、「より良い位置で突破する」ために前へ出た。
第2章 クロアチアが主導権
立ち上がりから、クロアチアのプレーには勢いがあった。
ボールを持つ。
相手が寄せてくれば、近くの味方へつなぐ。
ガーナが中央を閉じれば、サイドへ展開する。
守備では、ボールを失った瞬間に前から圧力をかけた。
ガーナに落ち着いて攻撃を始めさせない。
クロアチアの中盤は、試合の速度を自分たちで管理していた。
速く攻める場面。
一度ボールを後ろへ戻す場面。
相手を走らせる時間。
その使い分けができていた。
ガーナは前線のスピードを生かしたかったが、良い状態でボールを受けられない。
クロアチアがボールを握りながら、試合を相手陣内へ押し込んでいった。
第3章 17分、ヴラシッチがポスト直撃
最初の大きな決定機は17分だった。
ガーナの守備に一瞬の隙が生まれる。
ゴールから約20ヤードの位置で、ヴラシッチが前を向いた。
右足を振り抜く。
強烈なシュートはGKの手を越えたが、ポストの外側を直撃した。
あと数センチ。
クロアチアが先制していてもおかしくない場面だった。
ヴラシッチの良さは、ゴール前で迷わないことだ。
パスを受けてから何度もボールを触らない。
シュートコースが見えれば、すぐに振り抜く。
相手DFに寄せる時間を与えない。
この一撃はゴールにはならなかった。
だが、ヴラシッチが危険な位置へ入れていることを示した。
そして、その動きは83分の決勝点へつながっていく。
第4章 スチッチが均衡を破る
31分。
試合を動かしたのは、22歳のスチッチだった。
ゴールまでの距離は約30ヤード。
かなり遠い。
普通なら、近くの味方へパスを出す場面だ。
それでもスチッチは、ゴールを見た。
相手の守備がシュートコースを塞ごうとする。
その間を抜くように、右足を振り抜いた。
ボールは鋭く伸び、ゴール左のサイドネットへ突き刺さった。
1-0。
圧巻のミドルシュートだった。
遠い位置からのシュートは、ただ強く蹴れば入るわけではない。
相手のブロックを避ける高さ。
GKが届かないコース。
ボールを正確に捉える技術。
すべてが必要になる。
スチッチの一撃には、若さの勢いだけではない。
冷静な判断と確かな技術が詰まっていた。
第5章 22歳が刻んだ記録
22歳245日。
スチッチは、ワールドカップでゴールを決めたクロアチア代表選手として歴代2番目の若さとなった。
最年少は、2022年大会のモロッコ戦で得点したヨシュコ・グヴァルディオル。
20歳328日だった。
クロアチアと聞くと、モドリッチを中心とした経験豊富なチームを想像する人も多い。
実際、近年のワールドカップで結果を残してきたのは、黄金世代と呼ばれる選手たちだった。
だが、その中心選手たちは少しずつ年齢を重ねている。
いつかは世代交代が必要になる。
その中で、22歳のスチッチが最終戦の重圧を背負い、試合を動かした。
クロアチアの未来が、豪快な一撃として現れた瞬間だった。
第6章 ガーナは攻撃の糸口を探した
前半のガーナは、なかなか攻撃を形にできなかった。
クロアチアの中盤がパスコースを消す。
前線へボールが入っても、周囲の選手が近くにいない。
セカンドボールもクロアチアに回収される。
ガーナにとって脅威になっていたのは、アントワーヌ・セメンヨだった。
前半終了間際には、わずかに枠を外れるシュートを放つ。
速さと強さを生かし、一人でもゴールへ向かおうとした。
ただ、攻撃がセメンヨ個人へ偏れば、クロアチアも対応しやすい。
他の選手が連動し、パスコースを増やさなければ、人数をそろえた守備は崩せない。
ガーナは前半、攻撃の出口を見つけられないままハーフタイムへ入った。
第7章 後半にガーナが変化
後半に入ると、ガーナのプレーが変わった。
前線からの圧力が強くなる。
クロアチアがボールを持った瞬間、近くの選手が寄せる。
中盤も前へ押し上げ、相手に自由なパスを出させない。
前半はクロアチアが試合を管理していた。
後半は、ガーナがそのリズムを崩しにきた。
守備の強度が上がれば、奪う位置も高くなる。
高い位置でボールを奪えば、ゴールまでの距離は短い。
クロアチアの守備が整う前に攻撃できる。
ガーナは、ボール保持ではなくプレッシングから流れを引き寄せた。
試合の空気が変わり始めた。
第8章 73分、ガーナが同点
73分。
ガーナがフリーキックを獲得する。
クロアチアの守備ラインは、ゴール前へ送られるボールに備えていた。
その裏へ抜け出したのがデリック・ルカッセンだった。
マークが外れる。
ルカッセンはボールを受けると、インサイドキックで冷静に流し込んだ。
1-1。
インサイドキックとは、足の内側でボールを蹴るプレーだ。
強く振り抜くよりも、コースを狙いやすい。
GKの位置を見て、確実にゴールへ運んだ。
この得点で、グループ順位は再び動く。
引き分けならガーナがクロアチアより上に残る。
クロアチアも突破は見えている。
そのまま勝点1を受け入れる選択もできた。
だが、クロアチアはもう一度ゴールを狙った。
第9章 マークのずれが失点を生む
ガーナの同点ゴールは、クロアチアのマークのずれから生まれた。
セットプレーでは、ボールだけを見ていてはいけない。
相手選手がどこへ走るか。
誰がマークを受け渡すか。
最終ラインをどこに設定するか。
一つでも判断が遅れれば、相手はフリーになる。
ルカッセンは守備の背後へ走り、誰にも捕まらなかった。
反対に、クロアチアの決勝点もガーナのマークのずれから生まれる。
両チームが同じような形でゴールを奪った。
セットプレーでは、技術だけでなく集中力が勝敗を分ける。
最後まで相手を離さない。
ボールが蹴られる瞬間に、もう一度周囲を見る。
ほんの一秒の確認が、ゴールを防ぐ。
この試合では、その一秒が二度スコアを動かした。
第10章 モドリッチの右足
83分。
クロアチアがコーナーキックを獲得する。
キッカーはモドリッチ。
世界最高峰の中盤として、何度も大舞台を経験してきた男だ。
モドリッチが右足でボールを送る。
スピード。
高さ。
落下地点。
ゴール前の味方が合わせやすい軌道だった。
そこに入ったのがヴラシッチ。
ガーナの守備は、完全にマークを外していた。
フリーでヘディング。
ボールは左ポストの内側を叩き、そのままゴールへ吸い込まれた。
2-1。
ベテランのキックが、決勝点を生んだ。
流れの中から崩せない時間でも、クロアチアにはモドリッチの右足がある。
セットプレー一つで試合を決められる。
長い大会を勝ち抜くための、大きな武器だ。
第11章 ヴラシッチが決め切った
ヴラシッチは17分にポストを叩いていた。
決定機を逃した選手は、次のチャンスで迷うことがある。
また外すのではないか。
安全なプレーを選ぶべきではないか。
だが、ヴラシッチは迷わなかった。
83分のコーナーキック。
ボールの落下地点へ入り、力強く頭で叩いた。
ゴールを奪う選手に必要なのは、失敗を引きずらないことだ。
一度外しても、次のチャンスで同じようにゴールを狙う。
ストライカーや攻撃的な選手は、何度も決定機が来るとは限らない。
この試合でヴラシッチに訪れた大きな機会は二度。
一度目はポスト。
二度目を仕留めた。
それが勝点3と2位通過をもたらした。
第12章 クロアチアが2位へ
試合終了。
クロアチアは2勝1敗。
勝点6。
グループLを2位で通過した。
引き分けでも突破できる状況から、自分たちの手で勝利をつかんだ。
3位通過ではなく、2位通過。
順位表でガーナを追い抜いた。
クロアチアは、ワールドカップでの勝ち方を知っている。
2018年は準優勝。
2022年は3位。
毎試合、相手を圧倒するわけではない。
延長戦。
PK戦。
一点差の攻防。
苦しい時間を耐え、勝負どころで仕留める。
ガーナ戦でも、そのしぶとさが表れた。
追いつかれても崩れない。
終盤のセットプレーを得点へ変える。
大会を勝ち上がるチームの姿だった。
第13章 ガーナは3位通過
ガーナは敗れ、グループLを3位で終えた。
それでも、ノックアウトステージ進出は確定している。
勝点4。
グループステージ3試合で失点は2。
大きく崩れた試合はなかった。
ただ、首位通過の可能性があった最終戦で逆転負け。
ブランドン・トーマス=アサンテが語ったように、チームには悔しさが残る。
先制されたあとに追いついた。
後半はクロアチアを押し込んだ。
それでも、セットプレーのマークが一度外れ、勝点を失った。
ノックアウトステージでは、同じミスが大会終了につながる。
守備の集中。
セットプレーへの対応。
得点後の試合運び。
修正すべき部分は明確だ。
ガーナの大会も、まだ終わっていない。
第14章 世代交代と経験が融合
この試合を動かしたのは、22歳のスチッチだった。
決めたのは、31歳のヴラシッチ。
アシストしたのは、40歳を迎えるシーズンを戦うモドリッチ。
若手だけでもない。
ベテランだけでもない。
異なる世代が、それぞれの役割を果たした。
クロアチアの強さは、黄金世代の経験を捨てず、新しい選手を組み込んでいることにある。
モドリッチがすべてを背負う必要はない。
スチッチが中盤からゴールを奪う。
若い選手が走り、ベテランが試合を読む。
勝負どころでは、経験豊富な右足が正確なボールを届ける。
世代交代は、古い選手を一度に外すことではない。
受け継ぎながら、新しい力を加えていくことだ。
クロアチアは、その形をピッチで示した。
第15章 またクロアチアが勝ち上がるのか
クロアチアは、大会前に最も派手な優勝候補として挙げられる国ではない。
人口も、選手層も、欧州の大国とは違う。
それでも、ワールドカップでは何度も上位へ進んできた。
理由は、勝負の流れを読めるからだ。
前へ出る時間。
耐える時間。
セットプレーへ力を集中させる瞬間。
リードを守るための試合運び。
90分の中で、何が必要かを理解している。
ガーナ戦では、若いスチッチの一撃で先制。
追いつかれたあと、モドリッチとヴラシッチが試合を決めた。
新しい力と、変わらない勝負強さ。
クロアチアが、また不気味な位置からノックアウトステージへ入る。
この国を、決して過小評価してはいけない。
📘 日本代表をもっと楽しむために
今回のワールドカップで、日本代表をもっと楽しむための本も書きました。
テーマは、日本代表はなぜ強くなったのか。
森保ジャパンの26人メンバー選考、戦術分析、そして2026年ワールドカップでベスト8へ進むための勝ち筋を、できるだけ分かりやすくまとめています。
「なぜこの選手が選ばれたのか」
「なぜこの形で守るのか」
「どこでボールを奪おうとしているのか」
そこまで見えると、日本代表の試合はもっと面白くなります。
▼日本代表を応援するための本はこちら
📚 ワールドカップ関連本もあります
開催国。
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