メッシ、W杯歴代最多18得点。王者アルゼンチンを突破へ
第1章 また、メッシが歴史を変えた
アルゼンチン2-0オーストリア。
決めたのは、リオネル・メッシ。
38分に先制点。
90+5分には勝利を決定づける2点目。
この2得点で、メッシはワールドカップ通算18ゴールに到達しました。
ミロスラフ・クローゼが持っていた16得点を抜き、単独の歴代最多得点者へ。
初戦のアルジェリア戦ではハットトリック。
第2戦でも2得点。
今大会だけで早くも5ゴールです。
38歳になっても、世界最高峰の舞台で得点を重ねる。
しかも、そのゴールがアルゼンチンをラウンド32へ導きました。
記録のための得点ではありません。
勝つために決めた2ゴールでした。
第2章 簡単な試合ではなかった
結果は2-0。
数字だけを見れば、アルゼンチンの完勝に見えます。
しかし、試合は最後まで簡単ではありませんでした。
オーストリアは前線から強く寄せ、アルゼンチンに自由なパス回しを許しません。
特にダビド・アラバは、ゴール前で何度も体を張りました。
メッシへボールが入れば、すぐに距離を詰める。
シュートコースへ足を出す。
中央で前を向かせない。
アルゼンチンはボールを持ちながらも、オーストリアの守備を簡単には崩せませんでした。
第3章 メッシがPK失敗
アルゼンチンには、先制の大きなチャンスがありました。
メッシがPKのキッカーを務めます。
多くの人が、ネットが揺れる瞬間を想像したはずです。
しかし、決まらない。
メッシは前半にPKを失敗しました。
エースが外す。
会場の空気が変わる。
オーストリアの選手たちは勢いづき、アルゼンチンには嫌な時間が流れ始めます。
PKは、ゴールから約11メートル。
相手はGKだけです。
決めて当然と思われやすい。
だからこそ、外したときの重圧は大きくなります。
それでも、メッシはプレーから消えませんでした。
第4章 失敗後もボールを求めた
PKを外した選手は、次のプレーで慎重になりがちです。
シュートを避ける。
安全なパスを選ぶ。
ボールを受ける回数まで減ってしまうこともあります。
メッシは違いました。
再び中盤へ下がり、ボールを受ける。
相手の間へ入り、攻撃のテンポを作る。
ゴール前へ近づけば、自分で仕留める準備を続ける。
一度の失敗で、試合から逃げなかった。
この姿勢が38分の先制点につながります。
第5章 アルマダのスルー
先制点には、メッシ以外の動きも詰まっていました。
ファクンド・メディナから、ペナルティーエリア方向へパスが入ります。
そのコースにいたのがティアゴ・アルマダ。
アルマダはボールへ触れませんでした。
あえてスルーします。
スルーとは、パスを受けられる位置にいながらボールを流すプレーです。
相手DFは、アルマダが受けると思って反応します。
ところがボールはその先へ。
待っていたのはメッシでした。
一つのダミーの動きで、オーストリアの守備にずれが生まれました。
第6章 歴史を変えた左足
エリア内でボールを受けたメッシ。
目の前には相手DF。
ゴールにはGK。
使える時間は長くありません。
それでも、慌てませんでした。
力いっぱい蹴るのではなく、ファーサイドへ流し込む。
ファーサイドとは、シュートを打つ選手から遠い側のゴールです。
GKの届かない場所へ、左足で正確に運びました。
1-0。
このゴールがワールドカップ通算17得点目。
クローゼを抜き、歴代最多記録を更新した瞬間です。
PKを失敗した同じ前半。
メッシは、自らの左足で失敗を塗り替えました。
第7章 オーストリアも食らいついた
先制されたオーストリアも、下を向きませんでした。
前線からのプレスを続け、ボールを奪えば素早く前へ出ます。
代表通算100試合目を迎えたマルセル・ザビッツァーは、フリーキックからゴールを狙いました。
ザビッツァーは強いキックを持ち、遠い位置からでも得点を狙える選手です。
アルゼンチンとしては、ゴール前で不用意なファウルを与えたくない。
1点差の時間が続くなか、試合には緊張感が残っていました。
オーストリアは最後まで、王者へ簡単な勝利を許しませんでした。
第8章 アルゼンチンの堅守
アルゼンチンが強かったのは、メッシが得点したからだけではありません。
先制後も守備の形を大きく崩しませんでした。
ボールを失えば、近くの選手がすぐに寄せる。
中央へのパスを切る。
相手がサイドへ運べば、最終ラインがゴール前を締める。
一人が守るのではなく、周囲が連動してスペースを埋めました。
攻撃ではメッシが違いを作る。
守備では全員が走る。
この両方がそろっているからこそ、アルゼンチンは王者として勝ち続けています。
第9章 届かなかった追加点
アルゼンチンにも、2点目を奪うチャンスがありました。
ニコ・ゴンサレスがゴールへ迫ります。
しかし、オーストリアの守備は最後のところで耐えました。
1-0のまま時間が進みます。
アルゼンチンにとっては、油断できない点差。
オーストリアにとっては、まだ同点へ戻せる点差です。
試合終了が近づくほど、一本のパス、一つのクリアが重くなります。
アルゼンチンは無理に攻め急がず、ボールを持ちながら相手の反撃回数を減らしました。
第10章 90+5分、再びメッシ
そして、アディショナルタイム。
最後に試合を決めたのもメッシでした。
90+5分。
アルゼンチンに2点目。
メッシはこの日2ゴール目を決め、W杯通算得点を18へ伸ばしました。
先制点で記録を更新し、終了間際のゴールでさらに数字を積み上げる。
これでアルゼンチンの勝利は決定的になりました。
オーストリアが最後まで残していた同点の可能性を、メッシの一撃が消しました。
エースが先制し、エースが締める。
王者らしい勝ち方でした。
第11章 6試合連続ゴール
メッシは、ワールドカップ6試合連続ゴールも達成しました。
この記録に到達したのは、長い大会史でもわずか3人。
1958年大会のジュスト・フォンテーヌ。
1970年大会のジャイルジーニョ。
そして、メッシです。
相手国も違う。
守り方も違う。
試合展開も違う。
そのなかで6試合続けて得点する。
一度の爆発ではなく、どの試合でもゴールを奪い続ける安定感が必要です。
メッシは今なお、ワールドカップの中心にいます。
第12章 マラドーナから40年
この試合が行われた6月22日には、特別な意味がありました。
1986年6月22日。
ディエゴ・マラドーナがイングランド戦で、サッカー史に残る2つのゴールを決めた日です。
「神の手」と呼ばれたゴール。
そして、何人もの相手を抜き去った伝説の5人抜き。
あれから、ちょうど40年。
同じアルゼンチンの背番号10が、ワールドカップの歴代最多得点記録を更新しました。
マラドーナが国を熱狂させた日。
40年後、メッシが新しい歴史を刻む。
偶然とは思えないような巡り合わせでした。
第13章 クローゼを超えた意味
クローゼの16得点は、長く破られない記録だと思われていました。
ドイツ代表として4大会に出場。
ゴール前での動きに優れ、確実に得点を重ねたストライカーです。
その記録を、メッシが超えました。
メッシは典型的なセンターフォワードではありません。
中盤へ下がる。
パスを出す。
ドリブルで運ぶ。
味方の得点も作る。
そのうえで、自ら18ゴールを決めています。
得点だけを狙ってきた選手ではないからこそ、この記録の重みはさらに増します。
第14章 王者がラウンド32へ
アルゼンチンは2連勝。
グループJからのラウンド32進出を決めました。
初戦ではメッシのハットトリック。
第2戦では2得点。
ただし、アルゼンチンの強さはメッシだけではありません。
アルマダのスルー。
メディナの縦パス。
アラバらの守備に耐えながら攻撃を続けた中盤。
無失点で終えた守備陣。
メッシを生かすために、周囲の選手が動き続けています。
その中心で、背番号10が結果を残す。
チームとしての完成度があるからこそ、メッシの左足が最大限に生きています。
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第15章 失敗のあとに歴史を作った
この試合で、メッシはPKを外しました。
それでも、終わらなかった。
ボールを求め続けた。
次のチャンスを待った。
38分に歴史を変える先制点。
90+5分には、通算18得点目。
失敗をしない選手が、偉大なのではありません。
失敗のあとに、もう一度ボールを受けられる選手。
次のシュートを打てる選手。
その一球を決められる選手が、歴史を作ります。
マラドーナの伝説から40年。
ダラスの夜に、メッシはワールドカップの頂点へ立ちました。
それでも大会は続きます。
18得点は、ゴールではなく新しいスタートなのかもしれません。
この男は、まだ記録を伸ばそうとしています。
観るだけのサッカーから、理解して語れるサッカーへ。
Leo Costa フットボール分析室
