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⚽ 1点が重かったアイスランド戦。この「重さ」は「慎重さ」だった

5月31日、国立競技場。W杯前、最後の国内テストマッチ。
アイスランド相手に1-0。

私はテレビの前で、後半40分まで「点、入らないな…」とビール片手に正直ソワソワしていた半面、内心引き分けも許容しそうになっていました。

FIFAランキングは日本が18位、アイスランドが75位。
単純に数字だけ見れば、もっと楽に勝てそうな試合です。

でも、試合終了後は、スコア以上に内容が詰まっていたと感じました。

そう感じた理由を解説します。


🎽 まず、吉田麻也のことを書かせてください

この日、いちばん胸が熱くなったのは試合開始の10分間でした。

W杯メンバーから外れていた吉田麻也が、鎌田大地の不参加を受けてアイスランド戦限定で電撃復帰。
キャプテンマークを巻いて先発し、約10分でピッチを後にしました。
実際には13分。
両チームの選手が花道をつくって送り出すという、親善試合では異例の光景でした。

本人は「引退ではなく、一つの区切り」と言っていましたが、長く日本代表を背負ってきた選手への、森保監督なりの花道だったと私は感じています。

この10分があったから、私はこの試合を「ただのテストマッチ」として観られなくなりました。
これは、W杯へ向かうチームの「区切り」の儀式だったんです。


🛡️ 「アイスランド、結構強いな」の正体

吉田が退いたあとも、なかなかゴールが割れませんでした。

序盤からゴール前には迫る。でも崩しきれない。
逆に44分には際どいシュートを打たれて、鈴木彩艶が好セーブでしのぐ場面もありました。
SNSでも「苦戦してない?」という声がたくさん上がっていました。

格下相手に手こずる。それには、ちゃんと理由がありました。

アイスランドは4-2-3-1から、守る時間帯にしっかりブロックを組んできました。
前線から無理に追わず、自陣にスペースを消した塊をつくる。
日本がボールを持っても、危険なエリアにはなかなか入れさせない。

つまり、相手は「日本にどう守れば嫌か」を準備してきていたわけです。

W杯本番、グループFで対戦するオランダ、チュニジア、スウェーデン。
彼らも当然、日本対策をしてきます。

この「重い試合」は、引いて守る相手をどうこじ開けるか、その予行演習そのものだったんです。


🎯 崩せない相手をこじ開けた、菅原→小川の一点

後半、森保監督は一気に4枚替え。
そして先発11人を最終的に全員入れ替えるという、テストマッチらしい総力戦に出ました。

そして40分過ぎ。

右サイドの菅原由勢が上げたクロスに、小川航基がDFとDFの間にスッと入り込んで頭で合わせる。シュートはポストに当たってゴールイン。

引いた相手を崩す時のいちばん大事な動きです。小川は何度もポジショニングを取り直し、それを実践していました。

固いブロックって、正面からは崩せません。
でも、マークの受け渡しがあいまいになる「間」が必ずどこかにある。
そこに一瞬でスッと入り込めるFWがいると、いいクロスが一本通っただけで点になる。

引いた相手を崩す鍵は、ボールではなく「人の動き」にある。

この一点は、それを教えてくれる一点でした。


🔥 「終わった選手」と言われた男、小川航基の話

決めた小川航基というFW、私はこの選手の歩んできた道がすごく好きなんです。

神奈川県出身、1997年生まれ。
桐光学園高で年代別代表の常連となり、将来を嘱望された逸材でした。
ところが2017年のU-20ワールドカップで大会中に大怪我。
高卒で入ったジュビロ磐田では、なかなか結果が出ませんでした。

当時はサポーターから「小川、全然使えない」「あいつの何がいいの?」と痛烈な批判を浴びていたそうです。
世間では「もう終わった選手」とまで言われていた時期もありました。

でも、本人いわく「腐ったことは一度もない」。

2021年、磐田がJ1に昇格するタイミングで、彼はあえてJ2の横浜FCを選びます。
「ゼロから結果を出して、もう一度実力で評価されたい」と。
そして2022年、J2で26得点を叩き出して得点王。
「やっぱりやれるんだ」と自分を取り戻したんです。

そこからオランダのNECナイメヘンへ。
移籍1年目はデビュー戦からいきなり得点、2試合連続ゴールと欧州にもすぐ順応。
年俸はジュビロ時代の10倍以上に伸びたとも言われています。

代表でも、復帰戦のミャンマー戦で2ゴール、最終予選の中国戦でもヘディングを沈めるなど、「狭いところで仕事をする」FWとして地位を固めてきました。

無名から、批判から、怪我から、何度でも立ち上がってきた選手。

その小川が、W杯前最後のテストマッチでチームを救う一点を頭で叩き込む。これ、ただのゴールじゃないなと私は感じています。


😤 森保監督が、審判に激高した意味

この試合、ある意味いちばん話題になったのが、終盤の森保監督の「激高」でした。

主審に向かって叫び、ピッチに近づこうとするのを第4審判が止めにかかる。親善試合でここまで熱くなるのは珍しい、とファンの間でも盛り上がっていました。

私はこの場面、すごくいいなと思って観ていました。

だって、これは「親善試合」じゃなく「W杯のリハーサル」として戦っている証拠だからです。

格下相手にラフなプレーが続けば、本番で主力が怪我をしかねない。
一つひとつの判定に本気で食ってかかる監督の姿は、「ここからはもう本番モードだ」というメッセージにも見えました。

熱い監督がいるチームは、ピッチの上も締まる。私はそう信じています。


🌎 おわりに:1-0の「重さ」を、楽しめる目を持って本番へ

通算成績は日本の4戦全勝。6連勝でW杯へ向かいます。

派手な大量得点ではありませんでした。
でも、吉田麻也への花道、引いた相手を最後にこじ開けた1点、守ってしのいだ集中力、そして監督の本気。
W杯前に観ておくべきものが、ちゃんと詰まった90分でした。

その「重さ」の正体は、本番を見据えた「慎重さ」だったんだと思います。

日本代表はこのあとメキシコ・モンテレイで暑熱対策の最終調整に入り、現地6月14日、ダラスでオランダ戦から本番が始まります。

引いてくる相手をどう崩すか。狭いところで誰が仕事をするか。
ベンチで誰が熱くなるか。

この試合で観た「見方」を持ってオランダ戦を観たら、きっと何倍も面白くなるはずです。

私は今から、ビールを冷やして待っています。


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