ベルギー、また勝てず。イランを崩せなかった理由
第1章 ボールを持っても、ゴールは遠かった
ベルギー0-0イラン。
ベルギーはボールを長く持ち、何度も相手陣内へ入りました。
クロスも上げた。
シュートも打った。
それでも、最後までゴールは生まれませんでした。
一方のイランも、前半にネットを揺らし、後半は数的優位を得ています。
勝てる可能性は、両チームにありました。
それでも結果は0-0。
試合の主役になったのは、攻撃の選手ではありません。
ベルギーのティボー・クルトワ。
イランのアリレザ・ベイランヴァンド。
両守護神が、相手へ傾きかけた流れを何度も止めました。
第2章 ベルギーのボール保持
ベルギーは、立ち上がりからボールを握りました。
イランは自陣へ下がり、中央を固めます。
ベルギーは左右へボールを動かし、サイドからクロスやカットバックを送り込みました。
カットバックとは、ゴールライン付近まで進み、後ろへ折り返すパスです。
ゴール前へ走り込む味方が合わせやすく、得点につながりやすい形です。
ただ、この日のベルギーは折り返した先に人数をそろえられませんでした。
ロメル・ルカクが中央で待つ。
その周囲に、もう一人、二人と入ってこない。
イランはルカクを複数人で囲み、クロスをはね返しました。
ベルギーはボールを持っていましたが、イランの守備を大きく動かせてはいませんでした。
第3章 ルカクの孤立
ルカクは、クラブと代表を通じて約1年ぶりの先発でした。
相手を背負える。
クロスに強い。
ゴール前で体を張れる。
ベルギーにとって、頼りになるセンターフォワードです。
しかし、前線で孤立する時間が長くなりました。
ルカクへ縦パスが入っても、近くに味方がいない。
ボールを収めても、次のパスを出す場所がない。
その間にイランの選手が戻ってきます。
センターフォワードへボールを届けるだけでは、攻撃は続きません。
受けた選手の周りへ、味方がどれだけ早く集まれるか。
ベルギーには、その一歩が足りませんでした。
第4章 ベイランヴァンドの壁
前半、ベルギーが最もゴールへ近づいたのは、ユーリ・ティーレマンスのシュートでした。
ニアサイドへ強く打ち込んだ一撃。
しかし、ベイランヴァンドが弾き出します。
ニアサイドは、シュートを打つ選手に近い側のゴールです。
GKは遠い側へのシュートも警戒するため、近い側へ強く打たれると反応が難しくなります。
それでもベイランヴァンドは、素早く腕を伸ばしました。
後半にもマクシム・デ・クイペルのシュートを二度阻止。
イランの守備が崩されかけても、最後にGKが立ちはだかりました。
シュートを止めるたびに、イランの選手たちはもう一度守備位置を整えられました。
第5章 イランのロングスロー
イランは、ボールを持つ時間こそ短かったものの、攻撃の狙いは明確でした。
武器になったのがロングスローです。
タッチラインから、ゴール前へ直接届くほど長いボールを投げる。
コーナーキックに近い形を作れるプレーです。
前半には、ロングスローの流れからホセイン・カナニが反転シュート。
クルトワが低い体勢で防ぎました。
後半にも同じ形から、メフディ・タレミが強烈なボレー。
これもクルトワが止めています。
イランは少ない攻撃回数でも、自分たちの得意な形へ持ち込みました。
第6章 取り消された先制点
25分、イランがネットを揺らします。
フリーキックから、エフサン・ハジサフィが壁の中にいたタレミへパス。
タレミはクルトワの脇を抜く低いシュートを決めました。
工夫されたセットプレーでした。
多くの選手が直接シュートやゴール前へのクロスを予想する場面で、短いパスを使った。
ベルギーの守備は一瞬、反応が遅れました。
しかし、VARの確認でオフサイド。
ゴールは認められません。
イランにとっては惜しい場面でしたが、ベルギーの守備が完全ではなかったことも示しています。
第7章 ベルギーの攻撃が単調に
後半もベルギーが押し込みました。
ただ、時間が進むほど攻撃は読みやすくなります。
サイドへ運ぶ。
クロスを入れる。
イランがはね返す。
こぼれ球を拾い、もう一度サイドへ。
同じ流れが増えました。
守備側は、同じ攻撃が続くほど対応しやすくなります。
中央で短いパスをつなぐ。
ルカクをおとりにして、2列目が背後へ走る。
一度後方へ戻し、逆側へ大きく展開する。
イランの守備を動かす変化が、もう少し欲しい試合でした。
ジェレミー・ドクのように、1対1で相手を外せる選手を欠いた影響も感じられました。
第8章 バックパスから退場
66分、ベルギーに大きな出来事が起きます。
ナタン・ンゴイのバックパスが乱れ、タレミに抜け出されました。
ゴールへ向かうタレミを、ンゴイが後ろから倒します。
判定は一発退場。
ベルギーは10人になりました。
バックパスは、安全に試合を進めるためのプレーです。
ただし、弱すぎたり、相手の位置を確認せずに出したりすると、一気に決定機を与えます。
この場面では、タレミがボールへ届けばGKとの1対1になる可能性が高かった。
ンゴイは止めるしかなくなり、ベルギーは残り時間を数的不利で戦うことになりました。
第9章 数的優位を生かせなかったイラン
一人多くなったイランには、勝ち越すチャンスがありました。
ただ、ベルギーを押し込み切れません。
数的優位になったからといって、自動的に得点できるわけではありません。
一人多い場所を作る。
ボールを素早く動かす。
守備側の選手を引き出し、空いた場所を使う。
こうした攻撃が必要です。
イランは自分たちからボールを持って攻める時間に慣れていないようにも見えました。
それまで守備とカウンターを中心に戦っていたため、急に立場が変わってもリズムを作れません。
ベルギーは10人になってから中央を締め、勝ち点1を守りました。
第10章 クルトワの存在
クルトワは、ベルギー代表としてワールドカップ通算17試合目。
エンツォ・シフォが持つ同国記録に並びました。
この試合でも、カナニの反転シュート、タレミのボレーを阻止。
ベルギーが苦しい時間を迎えるたびに、最後の壁になりました。
GKの好セーブは、得点と同じように試合を左右します。
ベルギーは得点できませんでした。
それでも敗れなかったのは、クルトワが危険なシュートを止めたからです。
一方のベイランヴァンドも無失点。
0-0という結果には、両GKの技術と集中力が詰まっていました。
第11章 勝ち点2で最終節へ
ベルギーとイランは、ともに2試合連続の引き分け。
勝ち点2で並びました。
首位は勝ち点4のエジプト。
ニュージーランドにも突破の可能性が残っています。
ベルギーの最終戦はニュージーランド。
イランはエジプトと対戦します。
どちらも、引き分けを狙うだけでは苦しくなります。
特にベルギーは、ボールを持つだけでなく、ゴール前の人数と攻撃の変化が必要です。
イランには、数的優位を得たときにも自分たちから崩せるかが問われます。
0-0は可能性を残す勝ち点1。
同時に、勝ち切れなかった重さも残しました。
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第12章 0-0にも理由がある
ゴールのない試合は、退屈に見えることがあります。
ただ、この一戦には0-0になった理由がありました。
ベルギーはボールを持った。
しかし、ルカクの周囲に人数をそろえられなかった。
クロスは多かった。
しかし、イランの守備を動かす変化が少なかった。
イランは少ない攻撃で決定機を作った。
しかし、クルトワを越えられなかった。
退場で数的優位も得た。
しかし、自分たちから攻める形を作れなかった。
そして両ゴールには、ベイランヴァンドとクルトワがいた。
得点が生まれなかったのは、何も起きなかったからではありません。
攻撃側の迷いと、守備側の集中。
両GKの反応。
そのすべてが重なった0-0でした。
観るだけのサッカーから、理解して語れるサッカーへ。
Leo Costa フットボール分析室
