メッシがW杯初のハットトリック。20年かけて歴代最多16得点に並んだ夜
また、メッシが歴史を動かしました。
結果は、
アルゼンチン 3-0 アルジェリア
得点者は、すべてリオネル・メッシ。
前半17分。
後半60分。
そして76分。
ワールドカップ初戦でハットトリックを達成し、アルゼンチンを白星へ導きました。
さらに、ワールドカップ通算得点は16。
ミロスラフ・クローゼが持つ大会歴代最多記録に並びました。
2006年ドイツ大会でワールドカップデビューを飾ってから、20年。
少年のような表情で世界の舞台へ登場した選手が、今では歴代最多得点者の一人です。
数字だけでも信じられません。
ただ、この試合を見て改めて感じたのは、メッシは過去の栄光だけで立っているのではないということです。
走る距離を選ぶ。
ボールを受ける場所を選ぶ。
シュートを打つ瞬間を選ぶ。
年齢を重ねても、ゴールへ近づく方法を更新し続けています。
序盤から両チームに生まれた幻のゴール
試合開始から、両チームは積極的でした。
前半5分。
ラウタロ・マルティネスのポストプレーから、メッシがネットを揺らします。
アルゼンチンが先制したかと思われましたが、判定はオフサイド。
ゴールは認められません。
その3分後には、アルジェリアのファレス・シャイビもゴール。
しかし、こちらもオフサイドとなりました。
開始10分もたたないうちに、両チームが一度ずつネットを揺らす。
それでもスコアは0-0。
ワールドカップの緊張感と、半自動オフサイド時代の厳密さが表れた序盤でした。
肉眼ではゴールに見えても、わずかな位置の違いによって判定が変わる。
現代のワールドカップでは、歓喜の直後に映像判定を待つ時間も、試合の一部になっています。
メッシの1点目は、デ・パウルの縦パスから始まった
前半17分。
本物の先制点が生まれます。
起点となったのは、ロドリゴ・デ・パウルでした。
自陣のハーフライン付近から、前方へ鋭い縦パス。
メッシは相手選手の間でボールを受け、そのままゴール方向へ進みます。
ペナルティーアーク付近から左足を振り抜く。
ボールはゴールへ突き刺さりました。
アルゼンチンが1-0。
メッシのミドルシュートは見事です。
しかし、その前のデ・パウルのパスにも大きな意味があります。
横ではなく縦。
安全な場所ではなく、相手の守備を一気に越える場所へ通しました。
メッシが前を向いてボールを持てば、アルジェリアの守備陣は一瞬で危険な状況になります。
出し手がメッシの位置を見つけ、メッシが前を向ける場所へパスを届けた。
ゴールは、その時点ですでに半分できていました。
なぜメッシにはシュートを打つ時間が生まれたのか
メッシほど警戒されている選手はいません。
左足。
ドリブル。
ミドルシュート。
何をするか分かっている。
それでも止められません。
一つの理由は、ボールを受ける前の動きです。
相手DFの正面で待たない。
中盤と最終ラインの間へ入る。
守備側が誰の担当なのか迷う場所へ立つ。
そして、パスが入る直前に身体の向きを変えます。
メッシがボールを持ってから考えているのではありません。
受ける前に、次のプレーを準備しています。
そのため守備側が寄せる頃には、すでにシュート体勢に入っている。
小さな時間差ですが、世界最高峰の舞台では、その一瞬がゴールになります。
2点目は、こぼれ球への反応
後半、アルゼンチンが追加点を奪います。
アレクシス・マック・アリスターがミドルシュート。
アルジェリアのGKルカ・ジダンが防ぎます。
普通なら、ここで一度攻撃が終わったように見えます。
しかし、メッシは止まっていませんでした。
GKが弾いたボールへ、誰よりも早く反応。
こぼれ球をゴールへ押し込み、2-0とします。
派手なドリブルではありません。
何人も抜いたわけでもない。
それでも、ストライカーに必要なものが詰まったゴールです。
味方がシュートを打った瞬間に、こぼれ球の可能性を考える。
GKがどちらへ弾くかを予測する。
相手DFより先に一歩を踏み出す。
ゴール前では、ほんの少しの反応速度が得点を分けます。
メッシは華麗なプレーだけでなく、こうした泥くさいゴールも奪える。
だから得点を積み重ねられるのでしょう。
途中出場ニコラス・ゴンサレスが3点目を演出
後半76分。
メッシがハットトリックを完成させます。
アシストしたのは、途中出場のニコラス・ゴンサレスでした。
左サイドから攻撃へ入り、メッシへボールを届けます。
メッシは慌てません。
GKと守備陣の位置を見ながら、左足で冷静に流し込みました。
3-0。
ワールドカップ初のハットトリックです。
ここで注目したいのは、交代選手が得点へ関わったことです。
ワールドカップは短期間で試合が続きます。
先発11人だけで勝ち続けることはできません。
途中から入った選手が、疲れた相手のスペースを使う。
新しい動きで攻撃に変化を加える。
アルゼンチンは、メッシだけでなくチーム全体で3点目を作りました。
アルジェリアは決して何もできなかったわけではない
最終スコアは3-0。
数字だけを見れば、アルゼンチンの完勝です。
ただ、アルジェリアにも戦える時間はありました。
序盤にはネットを揺らしています。
リヤド・マフレズをベンチに置きながらも、前線からチャンスを狙いました。
守備でも、メッシへ自由にプレーさせないために人数をかけています。
問題は、決定力の差でした。
アルジェリア代表主将のアイサ・マンディも、試合後にメッシの決定力を認めています。
同じようにチャンスが訪れても、ゴールへ変えられるか。
アルゼンチンには、ほぼすべての機会を得点へ結びつける選手がいました。
ワールドカップでは、その差が最終的なスコアを大きくします。
王者アルゼンチンの強さはメッシだけではない
ハットトリックを達成したメッシが主役なのは間違いありません。
それでも、アルゼンチンの強さをメッシ一人で説明することはできません。
ラウタロが前線でボールを収める。
デ・パウルがメッシへ縦パスを通す。
マック・アリスターがミドルシュートを放つ。
ニコラス・ゴンサレスが途中出場からアシストする。
守備陣はアルジェリアを無失点に抑える。
チーム全体がメッシを支えています。
同時に、メッシが相手の守備を引きつけることで、周囲の選手にもスペースが生まれます。
メッシと仲間が一方的に支え合うのではありません。
互いの能力によって、相手へ複数の問題を突きつけています。
これが、前回王者の完成度です。
20年かけてクローゼに並んだ
2006年。
メッシはドイツ大会でワールドカップデビューを果たしました。
途中出場したセルビア・モンテネグロ戦で、得点も記録しています。
そこから20年。
何度もワールドカップに挑みました。
優勝候補として敗れた大会。
代表引退を表明した時期。
決勝で涙をのんだ2014年。
そして、悲願の優勝を果たした2022年。
そのすべてを越え、2026年大会で初のハットトリック。
通算16得点でクローゼに並びました。
一つの大会だけで築いた記録ではありません。
長い年月、代表に選ばれ続ける。
世界最高峰の状態を保つ。
国の期待を背負いながら、ゴールを積み重ねる。
記録の数字以上に、その時間の長さに圧倒されます。
メッシは記録より、今を楽しんでいる
試合後のメッシは、現在の経験を「ボーナスのようなもの」と語っています。
すでに多くの夢をかなえた。
想像していた以上のものを手にした。
今は仲間とピッチに立つことを楽しんでいる。
そんな心境が伝わってきます。
かつてのメッシには、アルゼンチンを優勝させなければならないという重圧がありました。
今は世界王者です。
ようやく肩の荷を下ろし、純粋にサッカーを楽しめているのかもしれません。
楽しんでいるメッシほど、相手にとって怖い存在はいません。
焦らない。
記録だけを追わない。
チームの流れの中で、自分に訪れた瞬間を仕留める。
その自然体が、ハットトリックにつながったように見えました。
次戦オーストリアは、メッシをどう止めるのか
アルゼンチンの次の相手はオーストリアです。
オーストリアも初戦でヨルダンに3-1で勝利。
両チームが勝点3を持って迎える首位攻防になります。
オーストリアに必要なのは、メッシへボールが入ってから対応することではありません。
デ・パウルやマック・アリスターから、メッシへ縦パスを出させない。
メッシが前を向ける場所を消す。
こぼれ球への反応で負けない。
メッシだけを見るのではなく、アルゼンチンの攻撃全体を制限する必要があります。
一人で止めようとすれば抜かれる。
複数人で囲めば別の選手が空く。
この難題に、オーストリアがどう答えるのか。
次戦も楽しみです。
ゴールの裏側を知るとワールドカップはもっと面白い
今回の試合を、
「メッシが3点決めた」
で終えることもできます。
でも、少し視点を変えると、さらに多くのものが見えてきます。
デ・パウルの縦パス。
メッシがボールを受ける前の立ち位置。
マック・アリスターのシュートへの準備。
途中出場したニコラス・ゴンサレスの動き。
序盤に取り消された二つのオフサイド。
ゴールや判定の裏側には、戦術とテクノロジーがあります。
現代の代表チームは、映像、GPS、走行データ、選手のポジション情報を分析しながら試合へ備えています。
どの場所でメッシへボールを渡せば危険なのか。
相手の守備ラインは、どの瞬間に乱れるのか。
疲労した選手の周囲に、どんなスペースが生まれるのか。
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まだメッシの物語は終わっていない
ワールドカップデビューから20年。
悲願の優勝を果たし、すべてを手にしたように見えたメッシ。
それでも、物語は続いていました。
初戦でハットトリック。
歴代最多16得点に並ぶ。
王者アルゼンチンを勝利へ導く。
もう驚くことはないと思っても、メッシはまた想像を越えてきます。
次の1点で、単独最多記録です。
ただ本人は、記録だけを追っているわけではないでしょう。
仲間とプレーする。
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そして、目の前のチャンスを決める。
その積み重ねの先に、連覇という新しい歴史が待っています。
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