モロッコ、ハイチとの打ち合い制す ハキミが逆転への道を切り開いた
モロッコ4-2ハイチ。
スコアだけを見れば、前回大会ベスト4のモロッコが順当に勝った試合に見える。
しかし、ピッチで起きていたのは予定調和ではなかった。
開始10分、先制したのはすでに敗退が決まっていたハイチ。
モロッコが追いついても、わずか4分後に強烈なミドルシュートを突き刺して、もう一度前へ出た。
ハイチは引かなかった。
守るだけでもなかった。
ワールドカップで初めて1試合2得点を記録し、最後までモロッコへ牙をむいた。
それでも、勝ったのはモロッコだった。
アクラフ・ハキミが同点ゴールを奪い、前半終了間際にはイスマエル・サイバリの得点をアシスト。
後半には途中出場のスフィアン・ラヒミとジェシム・ヤシンが試合を決めた。
二度リードされても崩れない。
試合の中で強度を上げ、最後は選手層で押し切る。
モロッコが4得点でラウンド32へ進んだ。
第1章 先に仕掛けたハイチ
試合開始からボールを握ったのはモロッコだった。
ハイチを自陣へ押し込み、サイドから攻撃を組み立てる。
多くの人が、モロッコが早い時間に先制すると考えたはずだ。
しかし10分、試合を動かしたのはハイチだった。
ジャン=ケヴィン・デュヴェルヌが右サイドを駆け上がり、低いクロスを入れる。
中央へ飛び込んだレニー・ジョゼフが、右足のヒールで触った。
ボールはモロッコのGKブヌに当たり、ゴールへ。
記録はオウンゴールとなったが、ハイチが狙ってつくった得点だった。
この攻撃で注目したいのは、スピードだ。
ボールを奪ってから横へつながない。
相手の守備が戻る前に、右サイドを一気に進む。
クロスが入った瞬間には、中央にも選手が入っていた。
モロッコが攻撃のために前へ出た背後を、ハイチが素早く突いた。
守る時間が長くても、前へ出る瞬間には迷わない。
ハイチが最初の一撃で、試合の空気を変えた。
第2章 モロッコを止めたプラシド
先制されたモロッコは、すぐに反撃へ出た。
左右へボールを動かし、ハイチの守備ブロックを揺さぶる。
しかし、なかなか追いつけない。
ゴール前で立ちはだかったのが、ハイチのGKジョニー・プラシドだった。
クロスへ反応する。
シュートコースへ素早く入る。
こぼれ球にも集中を切らさない。
モロッコが押し込んでいても、最後の一線を越えさせなかった。
サッカーでは、ボール保持率が高いだけでは得点にならない。
相手陣内まで運ぶ。
ペナルティーエリアへ入る。
シュートを枠へ飛ばす。
そのすべてを成功させても、最後にはGKがいる。
モロッコは試合を支配していた。
だが、スコアはハイチがリードしている。
時間が進むほど、モロッコには焦りが生まれやすい状況だった。
第3章 ハキミが体ごと押し込む
39分、モロッコがようやく追いつく。
左サイドでビラル・エル・カンヌスが縦へ仕掛けた。
角度のない位置から放ったシュートを、プラシドが止める。
しかし、大きく外へ弾き出すことはできなかった。
ボールはゴールライン手前へ浮く。
そこへ飛び込んだのがハキミだった。
足だけではない。
体ごとゴールへ入る勢いで、ボールを押し込んだ。
1-1。
ハキミは右サイドバックだ。
本来は守備を担当する選手だが、モロッコでは攻撃の中心でもある。
右サイドを走る。
クロスを入れる。
中央へ入り、パス交換へ加わる。
そして、逆サイドから攻撃しているときにはゴール前まで入ってくる。
この得点でも、左からシュートが放たれた瞬間に、右サイドのハキミがゴールへ詰めていた。
シュートがこぼれるかもしれない。
GKが弾くかもしれない。
その「次」を予測して走っていたから、同点ゴールを奪えた。
第4章 ハイチのスーパーゴール
追いつかれたハイチは、ここで沈まなかった。
わずか4分後。
モロッコ陣内でセカンドボールを拾う。
デュヴェルヌから、ペナルティーエリア手前のウィルソン・イジドールへつなぐ。
イジドールは迷わなかった。
右足を一閃。
強烈なミドルシュートがゴール左へ突き刺さった。
1-2。
セカンドボールとは、競り合いやクリアのあとに生まれる、どちらのチームのものでもないボールだ。
このボールを拾えるかどうかで、攻撃が続くか、相手の反撃を受けるかが決まる。
モロッコは最初のボールに対応した。
だが、その次をハイチに拾われた。
ハイチはボールを奪うと、すぐにシュートまで運んだ。
イジドールの決断も速い。
トラップを増やせば、モロッコの守備が寄せてくる。
コースが見えた瞬間に振り抜いたからこそ、ゴールへ届いた。
ハイチがワールドカップで初めて、1試合2得点を記録した瞬間だった。
第5章 前半終了間際の同点弾
モロッコにとって、1点を追うまま前半を終えるのは避けたかった。
ハイチに自信を与えた状態でハーフタイムへ入れば、後半はさらに難しくなる。
前半アディショナルタイム。
再びハキミが試合を動かした。
右サイドを突破し、ゴールライン方向へ進む。
そこから中央へ、低いボールを折り返した。
ゴール前へ走り込んだサイバリが、右足でダイレクトシュート。
低く抑えたボールがゴールへ流れ込んだ。
2-2。
サイバリは、これでグループステージ3試合連続ゴール。
中央で待っていただけではない。
ハキミが右サイドを突破する動きに合わせ、後方からペナルティーエリアへ入った。
クロスが来てから走るのでは遅い。
ハキミが前を向いた瞬間に、ゴール前へ動き始める。
出し手と受け手のタイミングがそろった得点だった。
モロッコは二度リードされながら、前半のうちに二度追いついた。
これが大きかった。
第6章 ハーフタイムで変わった強度
前半のモロッコは、ボールを持っていた。
攻撃もしていた。
それでも、ハイチに2点を許した。
理由の一つが、セカンドボールとデュエルへの反応だ。
デュエルとは、ボールを奪い合う一対一の局面を指す。
足元の技術が高くても、競り合いで後手に回れば、相手に攻撃を続けられる。
ハーフタイム、モロッコの選手たちには、もっとアグレッシブに戦うことが求められた。
セカンドボールを拾う。
相手へ強く寄せる。
攻撃のテンポを上げる。
後半のモロッコは、前半よりもハイチ陣内でプレーする時間を増やした。
ただボールを持つのではない。
失った瞬間に奪い返し、攻撃を終わらせない。
少しずつ、ハイチが自陣から出られなくなっていった。
第7章 ラヒミが交代策に応える
それでも、ハイチの守備は簡単には崩れなかった。
プラシドが好セーブを続け、スコアは2-2のまま終盤へ入る。
そこでモロッコの選手層が力を見せた。
途中出場のスフィアン・ラヒミ。
右コーナーキックから、シャディ・リアドがボールを上げる。
エリア左でラヒミが収め、右足を振り抜く。
強烈なシュートはゴール右隅へ。
3-2。
途中出場の選手には、試合を外から見られる利点がある。
相手の守備がどこで遅れているのか。
どの選手に疲れが見えるのか。
どこへボールがこぼれやすいのか。
ラヒミは試合へ入ると、ペナルティーエリア内で迷わず勝負した。
同点で止まっていた試合を、一振りで動かした。
第8章 交代選手が決めた4点目
89分、モロッコが試合を決定づける。
再びラヒミが左サイドでボールを持った。
ゴールライン際で簡単には失わない。
中央方向へ進み、ゴール前を横切るボールを送る。
待っていたのは、こちらも途中出場のジェシム・ヤシンだった。
無人のゴールへ押し込む。
VARの確認を経て、得点が認められた。
4-2。
3点目を奪ったラヒミが、4点目をアシスト。
最後に決めたのも交代選手だった。
大会を勝ち進むには、先発11人だけでは足りない。
試合展開を変える選手。
疲れた相手へ仕掛ける選手。
限られた時間でゴールへ関わる選手。
モロッコはベンチから出た選手が、勝利を決定づけた。
第9章 敗退してもハイチは歴史を残した
ハイチは3連敗で大会を去る。
それでも、モロッコ戦のハイチを「敗れたチーム」の一言で終わらせることはできない。
今大会初ゴール。
そして、ワールドカップ史上初となる1試合2得点。
すでに敗退が決まっている中でも、守るだけの試合を選ばなかった。
先制した。
追いつかれても、もう一度前へ出た。
最後までゴールを狙った。
プラシドも何度もシュートを止めた。
スコアは2-4。
だが、モロッコを本気にさせたのはハイチだった。
グループステージ最後の試合で、自分たちの攻撃を世界へ残した。
勝点にはつながらなかった。
それでも、歴史に残る2得点だった。
第10章 次は日本代表の可能性も
モロッコは勝点7。
得失点差でブラジルに次ぐ2位通過となった。
ラウンド32では、グループFを首位で突破したチームと対戦する。
オランダ。
日本。
スウェーデン。
そのいずれかだ。
日本代表にとっても、無関係ではない。
もしグループFを首位で突破すれば、待っている可能性があるのはモロッコだ。
前回大会ベスト4。
ハキミの攻撃参加。
サイバリの得点力。
そして、試合終盤に流れを変えられる交代選手たち。
簡単な相手ではない。
一方で、ハイチ戦では2失点した。
前線からの守備が緩んだ場面。
セカンドボールを回収できなかった場面。
攻撃参加した選手の背後を使われた場面。
日本が対戦するなら、狙うべき場所はある。
モロッコは強い。
だが、崩せない相手ではない。
グループステージが終わり、ここからは負ければ大会終了。
ハキミも試合後、回復して次の戦いへ備えなければならないと語った。
モロッコは4得点で勝った。
しかし、課題も残した。
その揺れ幅を抱えたまま、ノックアウトステージへ向かう。
そして日本代表との対戦が実現すれば、前回大会ベスト4と新しい歴史を狙う日本がぶつかる。
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