クロアチア、交代策で生き残る 代表200試合のモドリッチに届けた勝点3
パナマ0-1クロアチア。
クロアチアが、崖っぷちで踏みとどまった。
初戦を落とした両チームにとって、負ければグループステージ敗退が決まる一戦。
その重圧の中で、前半に主導権を握ったのはパナマだった。
クロアチアはボールを思うように前へ運べない。
前線は孤立し、パナマの右サイドから何度も背後を狙われた。
23分には、ホセ・ルイス・ロドリゲスの強烈なヘディングがクロスバーを直撃。
もし数センチ下へ飛んでいれば、試合の流れは完全にパナマへ傾いていた。
それでも、クロアチアはハーフタイムに動いた。
アンテ・ブディミルとアンドレイ・クラマリッチを投入。
すると54分、そのブディミルが決勝点を奪う。
苦しみながらも、交代策で勝点3をもぎ取ったクロアチア。
そしてこの日は、ルカ・モドリッチにとって代表通算200試合目だった。
華やかな内容ではない。
それでも、生き残るために必要な勝利だった。
第1章 負ければ終わる90分
試合前から、両チームには大きなプレッシャーがかかっていた。
先に行われたイングランド対ガーナが0-0で終了。
この結果、パナマとクロアチアの一戦で敗れたチームは、その時点でグループステージ敗退が決まる状況になった。
引き分けでも厳しい。
勝点3が欲しい。
だが、失点すればさらに苦しくなる。
こうした試合では、選手の足が重くなりやすい。
前へ出たい気持ちと、守備を崩したくない気持ちがぶつかるからだ。
経験ではクロアチアが上。
ワールドカップで準優勝、3位という結果を残してきた。
一方のパナマは、格上相手に失うものは少ない。
試合開始から、その差がプレーに表れた。
慎重になったクロアチアに対し、パナマは迷わず前へ出た。
第2章 パナマが右から背後へ
前半、パナマは右サイドから積極的にクロアチアの背後を狙った。
ここでいう背後とは、相手の最終ラインの後ろにあるスペースだ。
クロアチアの選手が前へ出た瞬間、その後ろには走り込める場所が生まれる。
パナマはボールを奪うと、そこへ素早く選手を走らせた。
ゆっくりパスを回すのではない。
縦へ進めるなら、一気に前へ運ぶ。
23分には、右サイドからクリスティアン・マルティネスがクロス。
ホセ・ルイス・ロドリゲスが勢いよく飛び込み、強烈なヘディングを放った。
クロアチアのGKドミニク・リヴァコヴィッチが、指先でわずかに触れる。
ボールはクロスバーを直撃した。
この場面は、パナマの狙いがきれいに形になっていた。
右サイドで前を向く。
クロスを入れる。
中央の選手が、相手DFより早く落下地点へ入る。
複雑なパス交換はない。
だが、速く、迷いがなかった。
クロアチアは、経験の少ない相手に押し込まれていた。
第3章 クロアチアの前線が孤立
前半のクロアチアは、ほとんど決定機をつくれなかった。
前線のペタル・ムサへボールを届けても、周囲との距離が遠い。
ムサが相手DFを背負っても、近くにパスを受ける選手がいない。
これが前線の孤立だ。
ストライカーが一人で相手のセンターバックと戦い続けても、攻撃はなかなか続かない。
ボールを収めた瞬間に味方が近づく。
落としたボールを別の選手が拾う。
サイドから追い越す動きが出る。
こうした連係が必要になる。
しかし、前半のクロアチアにはその勢いがなかった。
モドリッチが中盤でボールを受けても、前に明確なパスコースが見つからない。
パナマの守備は中央を締め、クロアチアを外側へ追い出した。
ボールは持てても、ゴールへ近づけない。
経験豊富なクロアチアが、パナマの用意した流れにはまっていた。
第4章 ハーフタイムの2枚替え
クロアチアは、前半の内容を見てすぐに動いた。
ペタル・ムサとヨシュコ・グヴァルディオルを下げ、ブディミルとクラマリッチを投入。
ハーフタイムでの2枚替えだ。
監督からのメッセージは明確だった。
このままでは勝てない。
前線の関係を変え、ゴール前へ入る人数を増やす。
ブディミルは、ゴール前で相手DFと競り合えるストライカーだ。
クロスに対して、中央やファーポストへ飛び込める。
クラマリッチは、前線の幅広い場所へ動きながら攻撃へ関われる。
二人を入れたことで、クロアチアの前線は前半より動きやすくなった。
交代は、疲れた選手を入れ替えるためだけにあるのではない。
試合の構造そのものを変えるためにも使われる。
クロアチアは45分で、自分たちの問題を認めた。
そして、後半開始から修正をかけた。
第5章 ブディミルが一発回答
交代策が結果につながるまで、わずか9分だった。
54分、ヨシプ・スタニシッチがマルコ・パシャリッチとの連係から右サイドへ抜け出す。
パナマの守備がボールへ引き寄せられる。
スタニシッチは、ゴール前を横切るようなクロスを送った。
そこへファーポストから飛び込んだのがブディミルだった。
左足でダイレクト。
ボールはゴールネットへ吸い込まれた。
0-1。
ハーフタイムから入った選手が、最初の大仕事を果たした。
この得点で注目したいのは、ブディミルの入った場所だ。
ファーポストとは、クロスを上げた選手から遠い側のゴールポストを指す。
守備側は、ボールに近いニアサイドや中央へ意識を向けやすい。
その視線の外側から入ると、相手のマークを外せることがある。
ブディミルは、クロスが入ってから動いたのではない。
スタニシッチが前を向いた時点で、遠い側へ入り始めていた。
ボールが届いたときには、シュートを打てる場所にいた。
これがストライカーの準備だ。
交代出場。
最初の大きなチャンス。
そして決勝点。
ブディミルが一発で試合を動かした。
第6章 追加点を奪えなかったクロアチア
先制直後、クロアチアには試合を決めるチャンスがあった。
パシャリッチがカウンターからパナマ陣内を独走。
GKとの勝負に持ち込んだ。
しかし、オルランド・モスケラが見事にセーブ。
クロアチアは追加点を奪えなかった。
1-0と2-0では、試合の難しさが大きく変わる。
2点差なら、多少相手にボールを持たれても余裕がある。
1点差では、一度のクロス、一度のこぼれ球、一度のセットプレーで同点にされる。
クロアチアは、最後まで緊張感のある試合を続けることになった。
パナマも下を向かない。
失点後、再び前へ出た。
右サイドからクロスを入れ、クロアチアの最終ラインを押し下げる。
敗退を避けるためには、最低でも同点ゴールが必要だった。
パナマの攻撃には、時間が進むほど強い気持ちが乗っていった。
第7章 パナマは敗れても崩れなかった
試合は0-1で終了。
パナマは2連敗となり、グループステージ敗退が決まった。
結果だけを見れば、勝点0。
だが、この試合で見せた内容まで消えるわけではない。
パナマは、クロアチアと互角に戦った。
前半には試合の主導権を握り、クロスバーを叩く決定機もつくった。
守備でも、クロアチアに多くのチャンスを与えなかった。
失点は一度。
しかも、ハーフタイムから入ったブディミルに、一つの決定機を仕留められたものだった。
トーマス・クリスチャンセン監督は、選手たちが最後まで自分たちのアイデンティティに忠実だったと語った。
その言葉通り、パナマは格上だからといって自陣へ閉じこもらなかった。
前へ出た。
背後を狙った。
同点を目指し、最後までクロアチアのゴールへ向かった。
敗退は決まった。
それでも、勇敢に戦った記憶は残る。
ワールドカップでは、勝ったチームだけが何かを示すわけではない。
敗れたチームの戦い方が、大会の景色を変えることもある。
第8章 モドリッチの代表200試合
この試合は、ルカ・モドリッチにとって代表通算200試合目だった。
代表で200試合。
簡単に届く数字ではない。
クラブでの試合と違い、代表戦は年間の試合数が限られている。
長い期間、国を代表する実力を保つ。
監督が変わっても選ばれる。
ケガを乗り越える。
若い選手が入ってきても、チームの中心に立ち続ける。
その積み重ねが、200という数字になった。
さらにモドリッチは、クロアチアが戦ったワールドカップの試合に21試合連続で出場している。
始まりは2006年大会の日本戦。
そこから20年。
クロアチアのワールドカップには、いつもモドリッチがいた。
この日は、モドリッチが試合を一人で決めたわけではない。
決勝点を奪ったのはブディミル。
右サイドを崩したのはスタニシッチとパシャリッチだった。
それでも、40歳のモドリッチが中盤に立ち続けること自体が、クロアチアにとって大きな意味を持つ。
苦しい時間でも慌てない。
試合がうまく進まなくても、次のプレーへ向かう。
代表200試合で積み重ねてきた経験が、チームを支えている。
第9章 次はガーナとの決戦
クロアチアは勝点3を獲得し、グループ突破への望みをつないだ。
最終節の相手はガーナ。
イングランドを0-0に抑えた、守備の堅いチームだ。
パナマ戦の前半と同じように、中央を閉じられ、前線が孤立すれば苦しい。
クロアチアには、後半に見せた攻撃を最初から出せるかが問われる。
ブディミルを中央に置くのか。
クラマリッチを近くで動かすのか。
サイドからファーポストを狙うのか。
モドリッチのパスから、どこで攻撃の速度を上げるのか。
パナマ戦では、ハーフタイムの修正が間に合った。
だが、次も同じように45分を使えるとは限らない。
ガーナは2試合無失点。
一度先制を許せば、さらに守備を固めてくる可能性がある。
クロアチアに必要なのは、早い時間から前線の距離を近づけること。
そして、相手の守備が整う前にゴールへ向かうことだ。
パナマ戦は、クロアチアらしい快勝ではなかった。
苦しんだ。
押し込まれた。
交代策で流れを変え、最後は1点を守り切った。
それでも、ワールドカップでは内容だけで次の試合へ進めない。
必要なのは勝点だ。
クロアチアは、最も必要な夜に勝点3をつかんだ。
代表200試合のモドリッチとともに、まだ大会を終わらせなかった。
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